第33話 閑話:宝物その後
「ディム・トゥーラ、お客様よ」
存在に気づいたジェニ・ロウが思わず微笑んで、ディム・トゥーラに声をかける。
ディムは作業を中断した。
ここは入場人員を限定している旧エリアの管理室で、「お客様」などありえない。自分のウールヴェはいつものように脇に控えている。
可能性のある訪問者は一匹しかいない。
ウールヴェのトゥーラが入口付近に転移してきていたが、中身は明らかに違った。
いつもと違い、不機嫌なオーラと
バレたか……。
1週間と予想より期間は早かったが、
ディム・トゥーラは立ち上がった。
「
「なんだったら半日
にこやかにジェニ・ロウは、
「……俺の切り上げるための口実を奪わないでください」
「中途半端になだめるより、全力でむかった方が、後日の作業効率をトータル換算したときのメリットがあるって判断しているの。理由はわからないけど、ちょっと
「よく、わかりますね?」
ジェニ・ロウは顔を近づけて、ディム・トゥーラに
「
なるほど、ジェニ・ロウは
ディム・トゥーラは
「わざわざくるとは、どういうことだ?」
『ちょっと説明してよ』
「何を?主語がなければわからん」
カイルの
『わかっているくせに』
「いや、わからん。どの件だ?」
『……そんなに僕に説明の必要がある案件があるの?』
ウールヴェはショックを受けたようだ。
「そりゃあ、山ほど」
ディム・トゥーラはファーレンシアの先見から内容の検討はついていたが、わざと
「
『うっ……そ、そうじゃなくてね……』
「地上の
『ううっ……そ、それでもなくてね……』
「他に重要事項があったか?」
大災厄をネタにカイルの後ろめたさをチクチクとつつく。ここまでは想定内で、物事は進んでいる。
『ぼ、僕の
「
『…………ファーレンシアが僕の写真が入ったロケットペンダントを持っていた』
なるほど。バレたのは、ロケットペンダントだけで、他の写真やアルバムはバレていない――ディム・トゥーラは、そう会話解析をした。
「それで?」
『ディム・トゥーラから、もらったと』
「事実だ」
『なんで――』
「お前、姫からお前の肖像画を
『うっ――』
ウールヴェの顔に赤味がました。
「姫からの訴えに応じただけだ。お前に言えば、嫌がるだろうし、
カイルは、ファーレンシアに関して、日頃から意外に
『………………い』
「何?」
『…………ズルい』
「は?」
『ズルいっ!僕も欲しいっ!僕にも、ファーレンシアとお
え?抗議内容って、そっち?
予想していた
エトゥールの姫巫女の先見、恐るべし。
ディム・トゥーラは、完全に白旗をあげた。
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