第23話 講義①
「この『かめら』なるものは、本当に
セオディア・メレ・エトゥールはしみじみと語る。
映像はカイルの知らない国の王宮だった。
モニターに
『これも、報告がなかったな……』
「僕じゃないっ!!これを企画計画したのは、僕じゃないっ!!」
『報告を
「うっ……」
「企画計画実行ともに私です」
シルビアが片手をあげ自主的に申告した。
『……シルビア……』
「セオディア・メレ・エトゥールのウールヴェの使役数限界実験です」
『……カメラは不要だよな?』
「あ、僕がウールヴェの現在位置と情報収集のため、つけました」
『……クトリ……』
「ウールヴェの
クトリ・ロダスが褒めてほしそうなキラキラした目でウールヴェ姿のディム・トゥーラを見つめてきた。それをカイルが見守っている。
ここでクトリを
『なぜ俺のため?』
ディム・トゥーラは
「ウールヴェという
クトリは自信に満ちて胸を張る。
『その
「セオディア・メレ・エトゥールです」
虎の問いかける視線に、セオディア・メレ・エトゥールは外交上の微笑で応じた。
『――』
『セオディア・メレ・エトゥール』
「なんだろうか、天上の偉大なる
『そんな
「だが今回の
『
「ディム殿、貴方は天上の
『代表ではないが、伝言役ではある』
「そして初代の
『……まあ、そうだ』
「私は初代がディム殿を指名した意味がよくわかる。英断だし、絶対にカイル殿、シルビア殿、クトリ殿には学習できない分野だ」
『……イーレやサイラスは?』
「ある程度、才はあるが、おそらく本能で動く性格ではないだろうか?それほど先まで読まないだろう」
『それで?』
「何度か話題に上っているが、大災厄の問題点は何だと思う?『氷河期』による文明の滅亡、気候の変動、津波による人的被害、大量の難民の発生、穀物の発育不良、食糧不足、治安の悪化――まあ、いろいろありすぎてキリがないが」
『――』
「人的被害と難民の発生は、移住、
『なんだろうか?』
「混乱中に乗じた外国の
『――』
「賢者達は外国事情とその力関係に
メレ・エトゥールは静かに語った。
「私は世界の滅亡を救うという大義名分で、
『どんな?』
「一つは、西の民のように友好関係を結ぶ」
『順当だな』
「もう一つは貿易分野で関係を築く。
さらりと物騒なことを言われた。
だが
『……これは戦争学や軍事戦略学の一種だな……』
「その通り」
『理解はできる。それで?』
「あからさまに敵対している国とどちらに転ぶかわからない国が残る」
『そうだな』
「これをどうするか――以外に話は簡単だ」
『なんだって?』
「似たような国内の状況に追い込めばいい」
『――』
「国が混乱すれば、内政に集中せざる得ない。戦争なんてやっている場合じゃない。その国が
『……
「お
あっさりとセオディア・メレ・エトゥールは認めた。
「同じように星が落ちればいいんだ」
一人と一匹の間にしばらく沈黙が流れた。まさかの恒星間天体の破片が、利用されているとは、さすがのディム・トゥーラは思わなかった。
『……実際に星の破片は落ちる』
「そう、私にとっては、
メレ・エトゥールは
「無論、他国の被害を全く無視をしてもいいが、カイル殿はそれを嫌うだろう。なのでこちらは
どこかディム・トゥーラは、ほっとした。他国の被害予想を沈黙するほど、情がないわけでは、なさそうだ。
「とりあえず1回目は」
『
「エトゥールは
『――』
「警告された方は、混乱するだろう。これはエトゥールの
ふっ、とエトゥール王は虎に笑って見せた。
ディム・トゥーラは、返す言葉が見つからなかった。
「以上が、エトゥール流
『入門編だって?!』
「もちろんだとも。
『やめてくれ。二人が対話したら化学反応を起こして、変な方向に走りそうだ』
「変な方向とは?」
『
「初代がその気になれば、世界はとっくの昔に彼らのものだ」
『それは、そうだが……』
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