第18話 解析⑦
だが、カイルに関して、地上の初代達と
『カイルに関して、信頼していいんだな?』
「もちろん」
「息子は
ぼそりとアードゥルが言った。その意見にエルネストまでもが賛同した。
「そういえばそうだな。私もやや不思議に思っていたんだ」
『カイルの思考が読めると?』
「読めるというより、自然に拾うという状態の方が近い。私はロニオスの
「その
「そうか?」
「私は、
「そうならばジェニやエレンも影響を受けたはずだ」
『
「彼がマメに世話をした、と言っただろう?保父の才能があると」
『あやすとは?』
「――」
「――」
「そこからか」
「いや、一般的な反応だ。私も500年前に同じ質問をした。
アードゥルはディム・トゥーラの反応に理解を示した。アードゥルはウールヴェを見た。
「恐ろしいことに、地上には
『――』
その言葉に、ややディム・トゥーラは呆然とした。意味が理解できなかった。育成ポットなしにどうやって生育するんだ。
『……
「あるわけなかろう。学術調査の場に、
『……それは?』
「
『――』
「
ディム・トゥーラはリルが泣きやまなかった大混乱を思い出した。対話が成立しない
『……地獄だ……』
「よくわかったな」
「母親は病床、世話する女性陣は睡眠不足で
「泣き止めば、なかなか素直だった」
「君は女性陣に感謝されていたな」
「君は逃げただろう」
「簡単に
「わからないでもない」
アードゥルは顔をしかめた。
「多分、ロニオスは、その時点で息子の潜在能力に気づいていたんだろう。
「敵を
エルネストは肩をすくめた。
ディム・トゥーラは別のことを考えていた。アードゥルやロニオスが、制御できていない
『……地上の拠点にロニオスのデータはないだろうか?』
アードゥルとエルネストは視線をかわした。
「何を知りたい?」
『ロニオスの能力値を知りたい』
「観測ステーションにあるだろう」
『ロニオスにバレるじゃないか』
「つまり、ロニオスに内緒で知りたいと」
「別にいいが、問題は
『なんだって?!』
「当たり前の防御だろう。貴族のスパイにもなるウールヴェが拠点に
「我々はウールヴェから
『
だが、なぜウールヴェの姿をしたロニオスが地上の
それを
『もしや、ロニオス自身の肉体は――』
「動けない状態か、すでに失われていると我々は
エルネストの言葉はディム・トゥーラの考えと一致している。アードゥルが言葉を継いだ。
「ただ、ウールヴェの姿になるというその選択が肉体状態によるものかは不明だ。上空で私に語ったことは、ウールヴェの特性が必要だったらしい。人の身体と意識ではいろいろ制限がでて、無意識に定着した常識が、邪魔になるとも。エド・アシュルやカイルに接触するために空間移動に制限のないウールヴェになる必要があったとも言っていた」
『――』
「
『…………通う……』
「ついでにロニオスにバレたくなければ、我々に呼び出されていると言えばよい」
意外にも協力を申し出て口実を与えてくれたのは、アードゥルだった。ディムは思わずアードゥルを見た。
「あの
ディム・トゥーラは迷った。どこまで語っていいのだろうか。
ディムは
『カイルには、あまり言わないでほしい。彼も気に
「わかった」
『……ロニオスが言っていた。カイルは周囲に影響を与えると。その中に、潜在能力の
二人は驚いたようだった。
「カイル・リードの特性か?」
『ロニオスにその特性がないなら、おそらく母親の特性、もしくは混血による突然変異的な特性じゃないかと思う』
「なるほど、可能性はあるな。面白い意見だ」
「いくつか
『俺?』
「ウールヴェと簡単に同調している」
『簡単ではない』
「でも、できているだろう。カイル・リードの一番の影響を受けているじゃないか。普通は無理だ」
『無理だ、と思うことが最大の
「ロニオスらしい言葉だ。だが、我々の中で一番影響を受けているのは、四六時中カイル・リードと行動を共にしていたはずの
『それは否定しない。俺の能力は伸びている。単なるカイルの様々な騒動に巻き込まれた副産物だと思っていた。その頃はカイルの
「面白い。論文が二十本くらいかけそうだ」
ウールヴェはエルネストを
『カイルをネタにすることは許さない』
「おお、怖い怖い」
「彼は本気だ。エレンを
「そうかね?」
「間違いなく。ディム・トゥーラ、カイル・リードに不利になることはしない。こんな論文を発表すれば、
『俺?』
「ほら、これだ」
アードゥルは呆れた視線を投げた。
「カイル・リードがダメなら、次に美味しいサンプルは君だ。影響を大きく受けたまさに実験体になる」
『――』
「私やロニオスは、元から周囲も認める規格外で、この能力が肥大化していても、ロニオスの息子が原因とは言い切れない。地上滞在やウールヴェや四つ目など様々な要因がある。だが、君は違う。明らかにカイル・リードの接触の産物だと判断される可能性が濃厚だ」
アードゥルはディム・トゥーラが見落としている点を指摘した。
「カイル・リードも我々も、大災厄を生き残ったとしても
『つまり、
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