第8話 狂飆④
カイル達はトゥーラを
樹木の
世界の番人が補助してくれた気配があった。
そして着地したカイル達を迎えたのは、いきなりの暴風雨だった。
「?!」
強すぎる風に顔が痛かった。
目をまともに開けれず、カイルは慌てて金属球を取り出し、
嵐の中、雨は凶器とみなされ、弾かれた。ほんのわずかな時間に二人と一匹は、ずぶ濡れになった。
「まさか、
「カイル・リード。あそこだっ!!」
エルネストが空を指差した。
遥か上空が怪しく光り、輝いていた。間違いなく嵐の中心が存在しており、そこにアードゥルの気配があった。
「どういう芸当?!!」
カイルはアードゥルの能力に
空中に肉体を浮遊させて維持することは、膨大なエネルギーを必要とする。その行為をアードゥルは平然とやってのけている。
「
「と、いうことは、ロニオスはまだ生きてる?」
「当たり前だ。アードゥルを殺人鬼扱いするな」
「
エルネストはカイルを
「四つ目がやったことだろう?」
「その四つ目を操ったのは、アードゥルじゃないか。貴方達の地上の人間に対する
「おかしくない。我々は地上の人間の価値を認めない。ただ、それだけだ。だが、ロニオスは違う。ロニオスに対してアードゥルが手を出すとは思えない。地上の民とは違うんだ」
「でも、アードゥルだって、自信はないんだ。自分の
「――」
カイルの指摘の言葉にエルネストの返事はなかった。
「…………
「やめた方がいい。
「じゃあ、どうしたら?!!」
「
「
カイルは思念の細い糸を繰り出し、遥か上空の
「………………………」
「どうした?顔が青いぞ」
「…………いや、気のせいだと思う」
カイルはもう一度、上空の
カイルは自分が冷や汗をダラダラとかいていることを自覚した。緊張とショックと混乱の発汗が止まらない。
なんで、ディム・トゥーラの気配がするんだ?!?!!
『来た。バレた』
『驚いた。君の予想通りだが、ずいぶん早いな?よく場所を特定できたものだ。しかもアードゥルの力場の中で、私の中にいる君がなぜバレる?言わば二重の
『規格外を舐めちゃいけない。昔、物理障壁の中にいる俺に気づくようなヤツだ』
『今度、規格外の定義を再考しよう』
『なんだって?』
『超規格外という等級が必要だ』
『なるほどアードゥルとカイルの等級だな?』
『いや、君も含まれる』
『…………俺がエントリーされるなら貴方もだろう』
『そうか?』
『だいたいエントリーメンバーが変わらないのに、新たな等級を作成する意味はあるのか?』
『………………………』
『………………………』
『………………ないな』
『だと思った』
「は?」
エルネストは意味がわからず、カイルを見た。
「意味がわからない」
「僕だって、訳がわからないよ」
「私には、アードゥルとロニオスの二人の存在しか、感じとれないが……」
「いる。間違いなくいる。僕を信じて。いや、僕も信じられないけど――」
「どっちなんだ」
「僕の規格外の
カイルは断言した。
「何のために?」
「間違いなくリードを守るために」
「だがあそこにはアードゥルとウールヴェの姿をしたロニオスしかいない」
カイルは目を細めた。
「多分リード――ロニオスの中だ」
「中とは?」
「以前、ディム・トゥーラはウールヴェのリードの身体を使って、セオディア・メレ・エトゥールと対話したことがある。多分、同じ手法だ。ディムは肉体はシャトルの中で、意識だけウールヴェに同調させた」
「それは君の固有の能力ではなかったのか?」
「わかんないよっ!僕の影響を受けたのか、リードの指導なのか、僕だってディム・トゥーラが同調をマスターした経緯がわからない!どの程度の同調率かわからないけど、リードが死ねば僕の
エルネストはもう一度、上空に広がる嵐の中心を見つめた。
「……君の
「頭がいい、プライドが高い、努力家、やられたらやりかえす、規格外」
「仮定だが……君の
カイルは考え込んだ。ディム・トゥーラがアードゥルと対決してやりそうなこと――
「イライラして、アードゥルを殴るか蹴とばすぐらいしていそうだ」
「……………………おい」
「ごめん、冗談じゃなく、そういう情景しか浮かばない」
エルネストはため息をついた。
「君がここにいることはわかっているかね?」
「……多分?」
「なんとも頼りない返事だな……だが、仕方あるまい。カイル・リード、君のウールヴェを大きくしたまえ。乗り込んで待機だ。いつでも飛び出せるように」
「え?」
「状況を打開するのに、ありとあらゆるものを利用する――それがロニオスの主義だ。君の
「はい?」
「下手をすると、私も駆けつける
意味がよくわからない
ディム・トゥーラは初代達の能力に舌を巻いていた。
多少動揺しているとはいえ、アードゥルの制御は完璧だった。通常の能力者など、こんな状況を維持できるわけがなかった。多分1分で墜落しているだろう。
だがさらに規格外なのはウールヴェのリードだった。
自分を捉えて離さないアードゥルの
ディム・トゥーラと思念で会話をしながら、アードゥルとも同時並行で会話をしている。
なんだ、その世界規格外代表のような能力値は?!!!!
『エルネストもきているな。よしよし』
さらに、はるか下にいるカイル以外の存在を認知していた。
『どうするんだ?話を長引かせて、アードゥルの脳神経が焼き切れるのを待つのか?』
『あのねぇ、何のために私がこの面談を成立させていると思っているんだね?さっきの私とアードゥルの会話を聞いていただろう?私は何としてでも、エルネストとアードゥルの協力が欲しい』
『アードゥルの協力など不要だし、彼は拒否したじゃないか』
『やれやれ、やはり君がアードゥルに同情したくなる状況を作るべきか。――ところで、ディム・トゥーラ、ギャンブルの
『は?』
唐突な話題転換にディム・トゥーラは、困惑した。何を言い出すんだ、この人は……。
『相手の行動の先読み、切り札の保持、相手に勝てないと思わせること、それから――』
『それから?』
『もちろん、親の総取りだ』
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