第8話 交錯⑧
「イーレの
「サイラスの見立て通りに型が古いなら、そうだと思う」
「やっかいだな」
サイラスは考え込んだ。
「イーレの
「大災厄かな」
「じゃあ、あとの二つは保留で」
「でも、あとの二つも大災厄に関係しているかもしれない。少なくとも
カイルはつぶやいた。
「世界の番人は、ここでイーレの
「どういう意味だ?」
「世界の番人の領域で、
「
「あとはイーレの
「イーレに原体の記憶があればわかったかもしれないなぁ。だが、彼女にその話は絶対にやめてくれ」
「わかってる」
カイルは頷いた。傷をこじ開けるようなものだった。
「
「
「あと初期メンバーは文明に深く関わっているよね?西の民の伝承に残るぐらいなら」
「確かに」
「文明と直接接触禁止の大原則は、どこに行ったんだろう」
サイラスはあきれたようにカイルを見つめた。
「何?」
「直接接触をガンガンになさっていらっしゃる方のセリフとは思えませんなぁ」
サイラスの皮肉な響きのある言葉にカイルは真っ赤になった。
「僕の場合は不可抗力だろ!?」
「和議への協力までは干渉しすぎだろ?それも不可抗力だと?おっと、びっくりだ」
「うっ……」
「まあ、メレ・エトゥールが狡猾で利用されたのは、わかるけどさ? よく地上にここまで肩入れするよな」
「ううっ……」
「舞踏会で姫様と踊って鼻の下のばしてるし順応しすぎだろ」
「鼻の下なんか伸ばして――ん?」
襲撃時に飛びだしてきたサイラスは、そういえばどこにいたのだろうか?
「まさか……あの時、ずっと見てたの?」
「当たり前だ。最初から騒動が起きるまで、
「〜〜〜っ!!!」
カイルは頭を抱えて、膝をついた。復讐材料をさらに得たディム・トゥーラの高笑いが聞こえたような気がした。
「いや、今更でしょ?」
サイラスは見下ろして追い討ちをかけた。
「姫様を口説くなら、ちゃんとアフター・ケアまで考えておかないと」
「口説いてないっ!」
「ほー」
サイラスは意地悪く笑った。
「じゃあ、俺が口説いてもいいのかなぁ?」
とんでもない話だった。来るものは拒まず、去る者は追わず主義のサイラスの女性遍歴の酷さは、研究都市では有名だった。カイルは慌てた。
「駄目だっ!」
その反応にプッとサイラスが吹き出す。
「面白い……シルビアの言った通りだ」
「……シルビアは何を言ったの?」
「内緒」
サイラスはゲラゲラ笑い出し、カイルはシルビアが何を言ったのか気になって仕方がなかったが、サイラスは口を割らなかった。
遺構の周辺を二人で探索したが、入口らしきものは見当たらなかった。
「完全に埋没した遺構か?それらしい痕跡もないな」
「う〜ん、なんか納得がいかない」
カイルは考え込んだ。
「何かを見落としている」
「――カイル、同調能力は使えるか?」
サイラスは不意に尋ねた。
「使えるけど?」
「空から見てみろ。埋没している遺構の影響で植生が変わる。古典的な調査方法だ」
「そんなのあるの?」
「あるある。作物痕や土壌痕で遺構の規模や分布を判断できるな」
「ああ、鳥と同調すれば上から――」
言いかけて、カイルは凍り付いた。
この惑星での鳥の同調といえば、
――ヤバい。来る。
羽音がして、肩に赤い精霊鷹がとまったとき、カイルは声にならない悲鳴をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます