第116話あんた、さては私から逃げようなんて考えてるな(そんなことわたしは考えていませんよ)

 ひと目みて思ったことは「なにもここまでおんなじにしなくても」、という呆れまじりの単純なものだった。

 特に説明もなかったけど隠す気も全然なかったミドリの話から、他にもいるんだろうなと予想はしてた。

 だからホントにいたのを実際みても、「あ、やっぱり」くらいの感想しかでてこない。

 その見た目がミドリにそっくりだったことにも、別に驚きはしはなかった。

 むしろこれには「ああ、そうだよね」とすぐに納得できた。

 だって、理由なんて簡単に想像できるから。

 どうせ彼女のことだ、理由はひとつに決まってる。

 ただ単に、

 面倒だけど、それは必要なだったから。

 だからどれだけ面倒だったしても、つくるしかなかったんだろう。

 必要なものを。

 必要なところに。

 必要なぶんだけ。

 それが彼女のお仕事で。

 それが彼女のやりかただったから。

 そのために必要な、適当につくったに違いない。

 ミドリたちみていると、そう思わずにはいられない。

 どことなく子どもの落書きのようでいて。

 どこまでも手を抜いているようで。

 まるで失敗しようがどうしようが関係なく、その見た目をみていると。

 そしてそこからさきは全部おんなじ。

 おんなじことの繰りかえし。

 なんとなくだけど、ひとりひとり自分の手でつくってそう。

 コピー機みたいに便利な装置や魔法があるのかどうかは知らないけれど。

 でもなんだか彼女って、

 そうやって何度も何度も数え切れないくらいたくさんの数を、つくり続けてきたんじゃないだろうか。

 だって、ひとの願いは青天井で底なしだから。

 その素材と機会と材料に、事欠くことはないだろうから。

 魔法少女なんて

 そんな魔法少女に必要な数を揃えるには、いくらあっても足りないだろうから。 

 それが、数える気なんてないんだろうけど。

 それがどれだけ多くても、たとえどんなに少なくても、そんなことは彼女にとってはどうでもいいこと。

 彼女の判断はいるかいないか、あるかないか、零か一か、それだけだ。

 いくらでもうみだせる魔法少女が。

 いまでもうまれ続けてて。

 

 何よりも彼女を証明し、彼女が何であるかを保証している。

 彼女にとって必要な数が足りてれば、それで十分。

 

 その中身が濁ってようと、底に穴が空いてようと頓着しない。

 足りないぶんは、必要なだけ足せばいいんだから。 

 なのにそんな彼女がつくったミドリたちには、こまかいところで違いがある。

 目の色や印が違ったりするのはそれぞれを見分けるためなんだろうけど、

 もしかしたら、それはミドリたちが

 自分と誰かをわけるために。

 自分が誰かを、わかってもらうために。

 今度、ミドリに訊いてみよう。

 もしそんな時間があったなら。

 そのときまで、わたしが覚えていたならば。

 そのときまだ、わたしがいきていたならば。

 いまこのときをいきのびて。

 この怪物から、

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