第100話わたし、ホントの魔法少女になるんです(ふたりの意志で、その一歩を踏み出すんです)

 ひとの好き嫌いなんて知るもんか。

 ひとにどう思われたって構うもんか。

 大切なのはわたしの好みかどうかだけ。

 わたしの好きな大事なひとに、わたしがなにをどうしたいのかだけ。

 ただ、それだけだ。

 だから、ミドリにあやまるっていうことは。

 

 それじゃあミドリはわたしにとって、パートナー相棒なんてものじゃなかった。

 ただのツール道具だったってことになるじゃない。

 わたしが魔法少女になるための、ただのアイテム装置だったってじゃない。

「別に、それでいいじゃない? どこも問題ないじゃない? なにも不満はないじゃない? わたしが『わたしの魔法少女』になれるなら、そんなのどうでもいいでしょう? もともとあっちのほうがわたしをツール道具だと思ってたんだから。こっちがアイテム装置扱いしたって誰も文句は言わないでしょ? と言うよりも、きっとわたしになにも言わないはずだよ、あのときみたいに。おぼえてる? わたしが自分で言ったこと? あっちがわたしを遣い潰すなら、わたしは自分を使い尽くすだけなんだって言ったじゃない。そのときはなにも言わなかったでしょ。だからこれでいいんだよ。。だってこれでお違い想いは。ツーカーの仲。パートナーふたつの他人としてね。それでまたお仕事をして、しっかり結果をだして、きっちり成果をあげればいいんだよ。ね、そうしよう? そうすれば終わりにできるんだから。そうしちゃえば。なのにどうしてそうしないのかなぁ?」

 

「うん? いまあんまりが聞こえた気がするけど気のせいだよね?」

 自分でわかってることをわたしに訊かないでよ。

 それは言われたでしょ。

 

 でも、いいよ。

 いまだけは特別に、何度だって言ってあげる。

 あんたの売ってきた安い言葉を、わたしが一番高く買ってあげる。

 ひとを黙らせたかったらげんこつで。

 ひとに言うことをきかせたかったら札束で。

 そしてわたしの想いを貫きたかったら自分の言葉で。

 だからわたしは、

 あんたの言ったことなんて、全部兆倍にして叩き返してやる。

 答えはたったひとつだけ。

 たったひと言だけなんだから。

 いい? よっく聞いておきなさい。

 

 そんなことであやまって、わたしのやったことをにするなんて。

 そうやって、新しくにするなんて。

 そんなこと、できるわけないじゃない。

 わたしが欲しいのは、そんなものじゃないんだから。

 わたしが失いたくないものは、そんなものにはかえられないんだから。

 だから、そんなことだけはわたしは絶対にやりたくない。

 だからわたしは、そんなことじゃ決してミドリに

「……ふーん、そう。それがわたしが考えてだした答えってわけ?」

 考える? わたしのことをなにもわかってないんだね。

 わたしはなにかを考えるようになんてできてないんだ。

 たしかにわたしはひとのことを、どうでもいいと思ってる。

 それでもたしかに言う通り、ひとに愛してほしいとも思ってる。

 けどそのために、ひとのことを考えたりなんかしない。

 ただわたしの感じたように、わたしが思ったことを、わたしにできる限りやりたいようにやるだけだ。

 わたしの想いを言葉にして、ぶつけるだけだ。

「そんなことをしておいて、?」

 関係ないよ。

 わたしはひとに愛してほしいけど、

 わたしが自分で選んで決めたわたしの大事なひとにだけ、愛してもらえればそれでいい。

「そんなことを言って、その大事なひとに愛されなかったときはどうするの?」

 そんなの決まってるじゃない。

 そのときはわたしだけのやり方で、

 そんなの、当たり前のことじゃない。

「ひとにわたしのことを決めつけられるのが死ぬほど嫌いなくせしておいて、それをひとには平気でするなんて。?」

 だから、なにも考えてなんかないってば。

 わたしはただ、ひとのことを想うだけだよ。

「そんなこと言ってるから、そんなことを、いまを失いそうになってるんじゃない。全部わたしが悪いんじゃない。全部わたしのせいじゃない。そんなのわかりきってることじゃない。それなのに、ホントにわたしはなに言ってるの?」

 なにを言ってるもなにも、

 ただあんたはひとつ、忘れてることがあるだけだよ。

 わたしがホントは、とっても強欲だっていうことを。

 わたしはわたし自身をなにひとつ手放さない。

 わたしはわたしの手で掴んだものを、ひとつも離したくない。

 そのためなら、わたしはどんなことでもやるっていうことを。

「じゃあわたしは、自分の想いをなにも棄てないっていうの?」

 そうだよ。

「だから、言われたでしょ。それはダメだって。欲しいものはひとつにしなさいって」

 違うよ、って言いたいところだけど、それだけはそうかな。

「だったら、どうするのさ?」

 、ひとつもこのちいさな手のひらからこぼさない。

 そのためなら、わたしはなんだってやってみせる。

「だったら、なんで……」

 なんでって、答えは簡単だよ。

 単純な、答えだったから。

 そして単純だったから、応えるのは難しいことだった。

 でもやっと気づくことができたんだ。

 泥に埋まったこころの底で、ようやく見つけることができたんだ。

 あの時言われた言葉の意味を、いまになってホントの意味でわかることができたんだ。

 答えは最初から、

 切り札はいつでもどんなときでも、

 その答えを言うために。

 わたしはきっちり、笑顔でいないとダメなんだ。

 その切り札をきるために。

 わたしは真っ直ぐ、ミドリの目をみないとダメなんだ。

 そうしてちゃんと、

 こんなわたしでも、笑顔でいればいつかはしあわせになれると信じて。

 こんなわたしの笑顔でも、ちょっとはミドリがしあわせになれることを願って。

、さっきはあやまらないって……」

 それはあんたのあやまらないってことだよ。

 さっきも言ったでしょ。わたしはわたしのやり方で、わたしの想いを言葉にするんだ。

 そうやって、わたしの気持ちを伝えるんだ。

「それは、そう教わったから?」

 たしかにお母さんから、って教わった。

 でも、だからそうするわけじゃない。

 お母さんの教えに、ただ引っ張られてそうするわけじゃない。

 教えられたことはもう全部、わたしの血肉になっている。

 だから、

 ミドリをこころを傷つけたことを。

 本当に、悪いことだと思うから。

 ミドリのこころを痛めたことに。

 わたしのこころで、ごめんなさいを言いたいたから。

 そして悪いことをしたらちゃんとごめんなさいと謝れるひとになりたいから。

 だから、わたしはわたしの意志でそうするんだ。

「でも、? そこにあのひとの想いは混じってないの? あのひとの言葉の糸に操られてるだけなんじゃないの?」

 それでも、だよ。

 わたしの全部はわたしだけのものだよ。

 わたしのくちからでた言葉も。

 わたしの手でやったことも。

 その全部が、

 だから誰のせいにもできないし、そして誰のものにもなりはしない。

 どれだけ黒くて、汚くて、歪んでて、どんなに見栄えが悪くても。

 ひとから踏まれて蹴飛ばされるだけの、ちっぽけな石ころだったとしても。

 この胸のなかにある

 それはどんなものより固くって、なにがあっても決して砕けることはない。

 そんなわたしだけにしかもてないものが、たしかにわたしのかたちをしてるんだから。

 そのわたしの意志が、いっている。

 ずっとミドリと一緒にいたいと。

「それが本当にそうだとしても、どうしてあんたの全部があんたのものだとそこまで言うことができるのさ?」

 だってわたしはわたしの全部に、

 そのためにも、わたしはミドリに謝らくちゃいけないんだ。

 打算も計算もなにもなく。

 ただ純粋に、傷つけたことを謝りたいんだ。

「そう。そこまで言うならもうなにも言わないよ」

 そっか。でもわたしはまだ言いたいことが残ってるよ。

「なに、これでもまだ?」

 そうじゃないよ。言いたいことはひとつだけ。

 

「うん?」

 わたしがいてくれたから、わたしは大切なことに気づくことができたんだ。

 わたしがいてくれたから、わたしは大事なひとにやるべきことをわかることができたんだ。

 だから、ありがとう、だよ。

「……それはまた、。でもそうことなら、速くしたほうがいいんじゃない?」

 うん?

「そういうところはどこまでいってもやっぱりわたしなんだよね」

 それはもういいから。で、速くしたらってどういうこと?

「なにかを言いたがってるのは。この世には何ごとにもタイミングってものがあって、そのタイミングこそが一番肝心なのものでしょ。そしてそれをつかめるは一番になったひとだけ。

 しまった! そうだった!

 

 言っちゃったんだから、ミドリだって

 だって、ミドリはわたしの訊いたことには必ずこたえてくれるんだから。

 そのこたえがわたしの想像どおりなら、待ってるのは最悪の結果だ。

 わたしが一番怖くて、一番恐れていることだ。

 だからわたしはミドリより速く謝らないと。

 じゃないと、ミドリと仲直りするチャンスを永遠に失くしてしまう。

 ミドリを、永遠に失ってしまう。

 せっかくちゃんと謝る覚悟が完了したのに、全部無駄になってしまう。

 それはあまりにもったいない。

 いやいやいや。そんなことはどうでもよくって。

 とにかく、速くミドリに謝らないと。

「ボクは……」

 て、はやっ!

 いや、いままでウジウジしてたわたしが遅いのか。

「キミがそれを望むいうのなら……」

 待って。待って。待って。

「それがキミの願いだというのならボクは……」

 お願いだから

 せめてひと言だけでも

「ボクには、

 ……あれ? いまなんて言ったの?

「ねえミドリ、いまなんて……」

「なんだ、聞いてなかったのかい。仕方ないなあ。じゃあもう一回だけ、今度はキミでもわかるようにはっきり言うよ。ボクがキミのもとからいなくなるなんてことは、一切全く一分の隙もなく金輪際ありえない。これは他の誰でもない、。だからこれだけは例えキミでもかえられない。もしキミの方がボクから離れていったとしても、どこまでも追いかけるからそのときは諦めてね。言ったはずだよ、ボクは何があってもずっとキミのそばにいると」

 わたしは、ずっと自分が冷たいモノだと思ってた。

 だっていままでわたしが撒いてきた血も吐きだした反吐も、全部冷えたものばっかりだったから。

 だからわたしのカラッポの殻は全部冷たいものでできているんだと思ってた。

 だけどそのミドリの言葉を聞いたとき、こぼれたには熱があった。

 言葉として伝えるはずだった想いと気持ちは、涙となって両目からあふれてとまらなかった。

 そのときわたしは産まれて初めて知ったんだ。

 自分のなかにもこんなあったかいものが流れていたということを。

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