第67話わたし、魔法少女になりました そのにじゅうよん(わたしの意志にあなたの居場所はありません)

 お母さんに愛されてたかどうかなんて、いまになって思ってもいてもしょうがない。

 もう死んじゃったひとが何を思ってたかなんて、どうしたってわからないだから。

 調べることもできないし、確かめることもできない。

 それは現実的にどうすればいいのか、ということが問題なわけじゃない。

 問題は、主に、ほとんど、大部分、わたし自身のやる気にある。

 というか全部、わたしのやる気のなさにある。

 ほんの一瞬前とは真逆の気持ち。

 わざわざそこまでしてそんなこと知らなくいいかなーと、いまはそう思ってる。

 そんなことわざわざ知る必要ないよなーと、いまならそう思えてしまう。

 それは、そんなことを知ったからっていまさら何にもならないよなーなんて、思っちゃったから。

 だってお母さんにわたしはどう思われてたとしても。

 わたしをここまで育ててくれたのはお母さんで。

 わたしをいままでいかしてくれたのもお母さんなんだから。

 親はなくとも子は育つなんていうけれど。

 少なくともわたしがこうして生きていられるのは、全部がお母さんのお陰だから。

 その結果と成果にだけ感謝しとけばそれでもういいかなーっていうふうに、思うことにしちゃった。

 これがいまの、わたしのホントの気持ちだった。

 それにわからないことを思うってことはあらゆるものを無駄にすることだって、たしか誰かも言ってたし。

 そうだ、たしかその死んじゃった本人が言ってたんだっけ。

 本人がそう言うんだから、無駄なことはしないほうがいいよね。

 そして無駄なものは、いいんだよね。

 要らないものはあってても仕方がないけれど、捨てるのは

 なので適当な箱に詰めこんで、こころの棚にあげておくことにする。

 これでまた、棚の荷物が増えちゃった。

 あとで棚の補強をしておこう。

 何をのせても。崩れることがないように。

 どれだけ積んでも、壊れることがないように。

 よし、これでこんなどうでもいいことを思うのは、これでお終い。

 だけどお母さんのことがこころに浮かぶたび、どうしても気持ちが震えて、沈んで、ぐらぐらする。

 もうこの気持の対処の方法も、取り扱い方も、処理の仕方もわかってるはずなのに。

 それはきっと、

 でもやり方がわかってるなら、何度でも同じことをすればいいだけだ。

 それは正直、辛くてしんどいことだけど。

 そのたびに、こんな砂を噛むような思いしなくちゃいけないけど。

 それでも歯を食いしばって、一回一回乗り越えていく。

 そうしていってお母さんを、

 あなたが教えてくれたことは、わたしが全部使ってあげる。

 無駄なものに、縛られることがないように。

 あたなが伝えてくれたことは、わたしがみんな活かしてあげる。

 どうでもいいことに、囚われることがないように。

 わたしは前だけを見ていきて、前に向かってだけ進んでく。

 要らないものに、潰されることがないように。

 だから、

 必ず、まとめて全部捨ててやる。

 あなたはただ、わたしの思い出のなかにだけいればいい。

 あなたが何の価値もないと言っていた、思い出のなかだけに。

 そのために、わたしはこころを削って研いでいく。

 そうすることが、わたしを強くしていくんだから。

 そうしないと、わたしは弱いままなんだから。

 前向きにいきることが、他の全部を見ないでいきることだったとしても。

 前向きに進むことが、他の全部を置きざりにして進むことだったとしても。

 他のどこにもいくことができず、行きつくさきが決まってたとしても。

 わたしはそれを、間違ってるとは思わないから。

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