第57話わたし、魔法少女になりました そのじゅうよん(何より優先すべきはわたし自身の意志でした)

 思えばわたしは、ただただ訊いてばっかりだった。

 振り返ればそこにいる、この緑の目に向かって。 

 わたしが魔法少女になったときから、

 この緑の目には、たくさんのことを訊いてきた。

 わたしが魔法少女になってからも。

 この緑の目から、たくさんのことを聞いてきた。

 そんな緑の目に、わたしは聞きたいことだけを訊いてきた。

 わたしにわからないことだけを。

 わたしの知りたいことだけを。

 わたしがほしい答えだけを求めてきた。

 それでも緑の目は答えてくれた。

 訊かれたことには必ず答えると言ってくれて。

 わたしの訊いたことに答えてくれた。

 わたしに嘘はいわないと言ってくれて。

 わたしの聞きたい答えをくれた。

 ホントのことを言わないこともあるって言ったけど。

 その言葉のなかにあるのは、ホントに言わなくてもいいと思ったことじゃなくって。

 ホントは言えないことがその言葉のなかにはあるんじゃないかと、そう思える。

 いまならそうだと、思うことができる。

 それを緑の目が言いたいのかどうかは別にして。

 そんなふうになんだかたと言いながらも、緑の目は応えてくれた。

 わたしにちゃんと、応えてくれた。

 その緑の目が答えをくれかったのはひとつだけ。

 だって緑の目はその答えをもってなかったから。

 わたしに応えてくれたけど、わたしに答えをくれなかった。

 だけどそれは当たり前のことだった。

 だってそれは、わたしのことだから。

 自分自身のことだから。

 わたしはどうしたらいいのか、どうすべきなのか。

 わたしは何を信じたらいいのか、何を信じるべきなのか。

 そんなことをひとに聴いたって、答えられるわけがない。

 どこの誰に訊いたって、答えをもってるわけがない。

 それはこの緑の目でも、変わらず同じことだった。

 そのことで、裏切られたとは思ってない。

 そのことを、裏切りだとは思えない。

 ただちょっとだけ、イラッとしてカチンときてムカッとはしたけれど。

 結局口ではなんだかんだと言ってても、わたしは信じていなかった。

 そのときわたしは緑の目のことを、ホントに信じちゃいなかったから。

 わたしはただ、甘えてるだけだった。

 ただ寄りかかってるだけだった。

 頼んで頼れば応えて答えをくれると、好きに使っていただけだった。

 自分が何もしなくても相手は何かしてくれると、勝手に重宝していただけだった。

 緑の目がわたしを、ホントに信じてくれるから、

 わたしは緑の目のことを、便利に信じていただけだった。

 ホントに信じてないから、裏切られたとは思えない。

 ホントは信じてないのに、裏切られたなんて思えるわけない。

 信頼してるから信用する。

 信用されてるから信頼できる。

 ひとを信じるっていうことは、そういうことじゃないっていまならわかる。

 わたしに答えはくれなかったけど、ちゃんと

 ひとを信じるには、初めに何をどうするのか。

 ひとに信じてもらうためには、初めは何をどうしていくのか。

 わたしに思い出させてくれたから。

 まずは何をするにも、自分自身でどうにかする必要があるということを。

 ひとをどうにかするためには、

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