その後の話

 「文章教室」に通い通して一年。

 すっかり開眼できたと思った私は、あらためて小説を投稿。

 以前に書きかけで置いていたものを、教室で身につけた技術を使い、その時できる限りの力で書き直して完成させた、230枚の作品。


 文章教室のおかげで、「誰かに読んでもらって感想を聞くこと」の大切さがわかり、遠慮なく感想を言ってくれそうな、友達6人に読んでもらうことに。

 直に会えない友達4人には、原稿のコピー・感想を書くための紙・返信用封筒を同封して送り、原稿に直接、赤ペンを入れて送り返してもらった。


 会って感想を聞けた友達2人には、どこでどう思ったかを、詳しく聞いた。

 特に「わからなかったのはどこか」「違和感はあったか」を、しつこいくらい聞いた。


 貴重な感想を元に書き直して送った作品は、初めて一次審査をクリア!


 嬉しかった。

 今までやってきたことは、無駄じゃなかった。

 やっとスタートラインに立てた。


 長年の夢がかない、目の前に広がるのはバラ色の妄想。

 シリーズ化できるかな。映画化もいいなぁ。


 けれど、二次審査は通らなかった。


 おかしい。

 物語は完璧。文章力も平均点をクリアしたはず。

 それで、どうして大賞じゃないんだろう???


 一次が通って嬉しかっただけに、ヘコみ具合もすごかった。


 「小説以前の問題」は解決したけど、「小説以降の問題」がある?


 そういえば、友達からの感想。

 私が「こう読んで欲しい」という思惑通りの感想をくれたのは、1人だけだった。

 6人中1人では、内容を正確に伝えられたとは言えない。


 まだ、文章力が足りない?


 結果がわかった後、さらに読書家の三人に読んでもらったところ、「キャラに矛盾がある」「文章が淡々としすぎ」「最初と最後で文章のイメージが違う」など、指摘された。


 文章教室の先生は「理解できない」とおっしゃっていたし、「面白かった」と言ってくださった生徒さんにすら、私が伝えたかったテーマは伝わっていなかった。


 本を読みなれている人の方が、テーマを読み取ってもらえない感じ。

 私の文章には、一般的な小説にある「根本的な何か」が足りない?


 実は私、小説を読むのが好きじゃない。

 もちろん、それなりには読むけれど。

 めちゃめちゃ読むわけじゃない。


 名作も授業の範囲内でしか読んだことがない。

 ライトノベルでもなく、ファンタジーでもSFでもない、大人が読むような「小説」というものを数えるほどしか読んでいない。


 小説を書く人なら誰もが持っている「背景」「バックグラウンド」「アーカイヴ」を作る、「あれば読む」いわゆる「乱読(濫読)期間」がない。


 今のままでは、どれだけ上手く書いても先が見えている。

 自分1人だけでの力の限界。

 なにか読もう。そうだ、名作を読まなくては。

 有名な作家の作品を一作品ずつだけでも読もう。


 「月一冊名作を読もう」を目標に読み始めたものの、キツい。

 今まで名作を読まなかった理由が「面白くないから」なんだけど、本当に面白くない。

 だらだら他人の人生を語られて、オチもなく終わる。

 これのどこが名作? 

 曲がりなりにも名作なんだから、名作たる「なにか」が必ずあるはずなのに。


 この時はまだ「話の筋」のみを重視していたので、なにを読んでも、どこかで読んだ話に思えてしまっていた。


 このまま読み続けるのは苦痛。でも、自分以外の力がどうしても必要。


 たまたま当時はケーブルテレビを引いていて、映画とアニメは見放題。

 アニメなら小説よりわかりやすいかも。

 小説を読むのは諦めて、アニメを見るように。


 だいたいアニメも好きじゃなかった。

 意味もなく長い間があるし、話し方が遅いしでイライラ。

 1.3倍再生(音声が聞き取れる早送り)を活用して、流行りと聞けば見る、オススメと聞けば見る、時間が合えば見る、とにかく見た。


 これほどアニメを見たことはないというくらい見て、今は、アニメが子供向けでつまらないモノとは思わない。


 アニメと一口に言っても、それぞれ全然違う。

 面白いと感じるもの、面白くないと感じるもの。

 どうしてそう思うのか考えながら、ある一定量を越えた頃、なにかが見えてきた。

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