再挑戦か、勝ち逃げか
第11話 『音楽の力』の落とし穴
カクヨム甲子園2019の受賞を一区切りに、私はカクヨムサイトを一旦離れ、再び文芸部の活動に専念することになりました。
次の部誌に載せる作品が、文芸部長としての最後の執筆です。私はその作品が高校生活の集大成となるように、兼部していた軽音楽部を舞台に群像劇を書こうと考えました。
この作品のクライマックスは、新入生歓迎LIVE。主人公達が『君の知らない物語』を演奏するシーンです。私には、リードギタリストに対する主人公の仄かな想いと音楽への情熱を、『君の知らない物語』の歌詞の持つエモーショナルな詩の力──つまり「音楽の力」を借りて描こうという
小説は1月中に完成し、部員同士の読み合せ(校正)を済ませ、次は顧問の先生の校閲です。そしてその時初めて先生から、小説内に歌詞を引用する時は、引用部分を明示して、引用元である歌のタイトルと作詞者名を作品内に明記しなければならないというルールを教えていただきました。
私は慌てました。
何故なら、歌詞にも著作権があるということを、すっかり失念していたからです。この作品を書くにあたって参考にしたバンド漫画やノベライズには、既存の楽曲の歌詞がそのまま引用されているものが多かったので、いつの間にか、広く知られている歌詞なら小説に使っても構わないという認識を持ってしまっていたのでしょう。
取り敢えず、高校の文芸部の部誌程度なら、配布する部数も数十部程度なので、引用部分と作者を明らかにすれば、慣例的にお目溢しとなるようなのですが、同じ作品をカクヨムで公開したらどうなるのか? 不安になった私は、ネットで小説に歌詞を引用する場合のルールについて調べました。そこで判ったことは、歌詞の引用は文字数の多寡に関わらず、一発アウト、だと言うことでした。
念の為にカクヨムの利用規約を確認しましたが、当然のことながら第14条(禁止事項)第9項に「当社または第三者の知的財産権、肖像権、パブリシティ権、名誉権、所有権その他一切の権利を侵害する行為」とあり、「当社が指定、許諾した歌詞なら引用可」とか「報酬を得ずに趣味でやる範囲なら引用可」などと言う抜け道は用意されてはいませんでした。
え? なんで?
カクヨムには歌詞を引用した小説なんてゴマンとあるじゃん。あの人もあの人もあの子だってやってるじゃん。
あの子なんて、あの作品をカクヨムのコンテスト/コンクールに出してるよ? もう審査は終わってるけど、あの作品は非公開にはなってないよね? ってことは、実質的には歌詞を引用しても問題ないってことじゃないの? つまりこのルールは、実質無罪ってことじゃないの?
私はその疑問をカクヨム運営部様に問い合わせてみました。
が、残念ながら答えは「引用不可」。
やはり作品内に歌詞を引用することはご法度だということです。
どうやら歌詞を引用している作品がカクヨム内でそのままにされているのは、著作権が権利の所有者から請求されて初めて適用される法律だからということのようです。簡単に言うと作詞家本人かJASRACが「これはケシカラン。著作料を払え」と申し立てて来ない限り、運営様は動かないということなのでしょう。
だとしても、歌詞の引用は立派な利用規約違反です。そのままにしてにコンテストに応募しても、選考を突破するのは困難でしょうね。だってもしも選出後にJASRACから著作料を請求されたら、運営様にとっては大打撃ですから、「危ない橋を渡らない=選ばない」ということになるのだろうと思います。
但し。
カクヨム運営様が「JASRACに使用料を払ってでもこの作品を書籍化したい!」と思う程の傑作だったらこの限りではない……筈?
私は責任は取れませんが、あなたに、どうしても! という強い気持ちがあるのなら……トライするなとは言いません。
次回の更新(2021/05/04/22:04)では、「短編の楽しさ」について、お話したいと思います。
(2021/05/02/23:35 記)
(2021/05/08/17:46 改稿)
(2022/08/31/09:29 修正)
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