第9話 読者の星を数えて

 前回明言した通り、カクヨム甲子園にランキングは関係ありません。ソースは2019年にロングストーリー部門で読売新聞社賞を受賞した私の作品です。なんと『残夏』は受賞当時、PV1桁且つ★0個、♡0個の、文字通り「誰にも読まれていない」小説でした。


 中間選考を突破した後、webで最終結果が発表されるまでの間に、私はカクヨム運営様から最終結果についてご連絡を頂きました。

 自分の作品がまんざらでもなかったことに胸をなでおろしながら、私は他の中間突破作品に目を向け、あることに気付きます。


 私と同じように、殆ど読まれもせず、星もついていない作品が沢山ある!


 早速私はその日から、最終選考に残った作品を順に読んでいきました。読後は全ての作品に一律に2個の星をつけ、レビューコメントも必ず添えました。


 星を2個だけに留めたのは、自分の基準が明確ではなかったからです。どれも大賞候補なのですから、素晴らしい作品には違いありませんが、全て読み終えたからでないと、どれが星3つに相応しいのかはまだわからない。候補作全部を読了したら、これぞ! という作品にもう1つ星をプラスすればいい。当時は星の数をそんな風に捉えていました。


 ですが、この「ひとりヨムヨムキャンペーン」は、必ずしも純粋な読書欲から始めたことではありません。実を言うと見返りを求める気持ちがほんの少し……いえ、かなりあったと思います。もしも私が先陣を切って読み始めれば、私の行為に触発された中間突破者のうちの誰かが、同じように全作品を読み始めるかもしれない。そうなったら私の作品にも、いつか星がつくかもしれない。


 振り返って考えてみると、随分浅ましいことを考えていたと思います。

 不純な動機で始めた報いでしょうか、全ての作品を読み終えても、私の『残夏』が読まれることも、お返しの星がつくこともありませんでした。私とほぼ同時期に、同じように中間突破作品にレビューコメントをつけていた大人の作家さんも、「次は『残夏』の番だ!」というタイミングで、レビューするのをやめてしまわれました。


 そして気が付けば、中間を突破した38作品のうち、星がひとつもついていないのは、私の『残夏』唯1つという皮肉な結果になったのです。


 なんと惨めなことでしょう。

 この状況を文芸部の先輩や後輩が見たら、きっと学校の恥さらしだと思うだろう。

 私は激しく落ち込みました。


 更に悪いことは重なるもので、私がレビューコメントを書いたあるFS百合作家さんが、「作品を理解してもない人にレビューを書かれて腹立たしい」と、SNSで呟いていて、これを読んだ時は再びアカウントの消去を検討したくらい落ち込みました。


 ここを読んでらっしゃるあなたも、もしかしたら自分の作品のPVや星の少なさに心が折れそうになってらっしゃるかもしれません。そして、なんとかして読んで貰いたいと、策を練ってらっしゃるかもしれません。


 お気持ちお察しします。

 でも、気をつけてくださいね。

 見返りを求めて他の人の作品を読んで、無批判に星を投げても、行為は見透かされ、蔑まれ、侮られて終わります。一時的にPVや星が増えることもありますが、それはいつまでも続きません。それどころか、不正行為を働いたとしてある日突然アカウントをBANされるリスクだってあるのです。


 え? 他の人の作品を読んで評価したらアカウント削除されちゃうの!?

 いえ、さすがにそれはありません。

 読んだ上での評価なら、某巨大掲示板のカクヨム作家の集いの中で「あいつは相互(※)だぜ」と揶揄されることがあるかもしれませんが、利用規約には触れませんから、垢BANの心配など無用です。というよりも、自分以外の作家さんの作品を読んで評価する行為自体は、寧ろ正しいユーザーのあり方として、運営さんから推奨されています。


 けれども中には見返りの星を稼ぐ為に、読んでもいない作品に星を投げて行く人がいるのです。何の為にそんなことをするのかというと、それは「お返し(の星)」を期待するからです。これはカクヨムコンのような、読者選考ありきのコンテストでよく見られる現象で、より多くの「返礼(星)」を集める為に、より多くの作品に星を投げる必要があり、その結果読もせずに闇雲に星を投げる人が現れる……という、カクヨムの「闇」そのものです。

 でも、これは実に危険な行為ですからご注意を。そのような怪しい行為は通報されますし、運営様の管理システムで検証すれば、アカウントを特定したログの追跡は容易く、読みもせずに評価していたら簡単に見抜かれてしまいます。私自身、実際にBANされたアカウントを何個か知っていますが、その方達の釈明や責任転嫁は、読んでいて胸が痛みます。

 あなたのカクヨム生活はまだ始まったばかりですから、このような不正行為は絶対にやめましょう。


 それでも誰かに自分の作品を読んで欲しい。

 ♡も★も欲しい。

 そんなあなたの為に用意されているのが、「自主企画」というコンテンツです。

 ワークスペースの作品設定から登録できるこのシステムは、読み合い企画や読みます企画や本棚企画などがあり、自作への導線を比較的簡単に確保することが出来る良ツールです。


 但し、これにも落とし穴が。


 例えば、カクコンなどの読者選考突破を狙っている時に、読み合い企画に参加することは却ってマイナスの結果を招くことがあります。その理由は、読者選考のランキングルールでは、同一自主企画の参加者同士が付けた星はポイント換算されないことになっているからです。つまり自主企画への登録は、タイミングによっては自分の首を絞めてしまうこともあるということで、参加する時はこのことに留意する必要があるでしょう。



 念の為に、以下に不正と見做される行為を挙げておきます。


 ①作家同士で互助会のような組織を作って星を投げ合う行為

 ②友人知人に頼んでアカウントを作って星を投げてもらう行為

 ③自分で別のアカウントを複数作り自作自演で星を投げる行為

 ④業者から星を買う行為


 ④に関しては都市伝説の域を出ませんが、①②③と、前述の「読まずに星を投げる行為」は既にカクヨム内でも観測されており、該当者は皆カクヨムを去っています。


 このエッセイを読む方の多くが高校以下で、カクヨム内の活動歴が浅い作家さんだと思いますから、悪気なく、うっかりこれらのことをしてしまう可能性もあるでしょう。けれどもそれらの行為が運営様によって不正と認定されてしまうと、ある朝カクヨムにログインしようとしたら自分の作品がアカウントごと全て消滅していた……なんてことにもなりかねません。


 ですからこのことは是非、肝に銘じておいてください。


 そして、星がつかないことにくじけないで。

 その辛さは私も今、同時進行で体験しているのでよくわかります。

 それでも、カクヨム甲子園では読者の人気は審査の対象ではありません。

 読売新聞社賞を獲った私の作品がそれを証明してくれています。



 だからきっと大丈夫。

 いつか栄冠は、君にも輝く。





 次回の更新(2021/05/03/21:03)では、最終結果発表が出た時のお話をしようと思います。



(2021/05/01/22:59 記)

(2021/05/08/13:52 改稿)

(2022/08/31/09:05 修正)


 


 


 



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