第4話 第二の処女作

 前回、私は処女作の完成を諦めて新しい物語に取り掛かりました。

 この時の——私にとっての第二の処女作――『AI』は、お金で売られたうら若き処女おとめと、彼女に仕えるアンドロイドが織りなす近未来のお伽噺です。


 この作品を書いた時に私の頭の中にあったのは、イチにもニにも「早く仕上げる」の一点のみでした。締め切りまで残された時間は2日間しかありません。その短時間で書けるお話があるとしたら、それは何? 童話ならいけるかも? 苦し紛れにそう考えてPCに向かい、絵本の地の文を意識した三人称神視点で、言葉のリズムに拘りながら一気呵成に書き上げたのです。


 今になって振り返ってみれば、誤字脱字衍字だらけのお粗末な短編でした。だとしても『AI』は、私に物語を書き終えた達成感を味合わせてくれた特別な作品です。そして私はこの時の体験で、以下の2つを教訓として心に刻みつけることになりました。


 ① 自分がよく知らないことは書きにくい

 ② 誰も知らないことは書きやすい


 当初『残夏』で書こうとしていた告別式のシーンは、私にとって「知らないこと」そのものでした。ネットで仕入れた知識でエピソードを成立させようとしましたが、執筆しながらも「こんな書き方では、子どもはともかく大人は誤魔化せないだろう」と、モチベーションが萎んでいきました。


 一方『AI』の舞台は近未来のデストピアです。

 私はSFに造詣が深いわけではありませんが、何もかもが私の空想の世界ですから、どう書こうと誰かに「そこは現実と違う」と言われる心配はありません。他人から間違いを指摘される不安から解放された私は、のびのびと物語を書き上げました。それは、とても楽しい時間でした。




 そんなわけで、もしも小説を書いてみたいという人がいるとして、その人が上手く書けないと嘆いていたら、私は言ってあげたい気がするのです。


 知らないことを書くのはめたら?

 もしくは、誰も知らないことを書いたら?

 ――と。


 エタリがちな長編はともかくとして、短編というものは、ひとまず完成させないことには、他人ひとの目に触れさせることは出来ません。そして他人の目に触れて喜ばれなければ、それはただの戯言ざれごとで終わってしまいます。

 だとしたら、まずは何を置いても完成させることを目指しましょう。

 そして完成させる為には「自分にとってラクな方法を取る」という割り切りも大切です。



 「ラク」は「楽」。「楽」は、「楽しい」。

 カクヨム甲子園の為の創作を楽しんでくださいね。



 次回の更新(2021/04/30/17:02)では、執筆を楽しむ方法のひとつとして、音楽の効用についてお話します。



(2021/04/28/18:02 記)

(2021/05/08/08:26 改稿)

(2021/07/14/13:06 改稿)

(2023/09/07/08:03 修正)





 

 

 

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