起源 ※
静岡県駿東郡清水町 柿田川公園
高知県の四万十川、岐阜県の長良川と並び、日本を代表する三大清流として知られる柿田川。柿田川は一目見れば、その透明感に圧倒される美しい川だ。富士山周辺に降った雨や雪が、数千年前の富士山噴火で流失した溶岩の中を通り、その溶岩の南端である清水町にて地上に湧き出た地下水が、柿田川のもととなっている。
「柿田川の湧き水になって地上に現れるまでに、26から28年の年月がかかるそうだよ」
「そうなんだ、じゃあ今流れている川の水に、私の生まれた頃に、富士山に降った雨水や雪解け水が含まれているってことかしら、なんか不思議」
チュチチ、チチッ
「あっ、鳥の鳴き声ね、向こうの階段の方から聞こえるわ。行ってみましょ、貴船神社だって、小さなお
「へぇ、そうなんだ。京都貴船神社本宮の分社なんだって、あっ……」
「えぇなに、その先も読んでよ」
「あっ、いやっ」
「ん、見せて、なになに……水の神様で……恋を祈る神社、縁結びだって。フフッ、石碑上の紅白の丸い石、『おむすび』に触れると恋愛運がアップします……、だってよぉ」
チュチチ、チチュチチ……
「あ、やっぱりさっきの鳥が鳴いてるわ、なんて鳥かしら」
「セキレイじゃないかなぁ、お腹が黄色いから、キセキレイかな」
「これがセキレイなのね、可愛い!近くで見るのは初めて……あっそうだ、フフッ、セキレイの伝説ってご存知?」
「えっ、うーん、知らないが」
「じゃあ、お
「ふむふむ……」
「すると、セキレイがひょいとやってきて、二人の前で尾を上下に振り、見せてあげました。その動きを見て、純真無垢な二人は夫婦和合の方法を知り、次々と子ども、ええと……国や神のことね、を産んだとさ」
「えっ、どういうこと?」
「んーもう、尾を、腰を上下にふったのよ……」
「あっ、そういうことか。ハッハーなるほど! で、この神様の子どもたちが日本人をつくったとされ、つまりはセキレイがいなかったら、日本人は存在しなかったことに……」
「ほんとは知ってたんでしょ……」
「ふふっ、知らなかったさ」
「もうっ、ほんとかなぁ」
「あっそうだ、紅白の丸い石『おむすび』を、一緒に触って行こうか」
「……はいっ」
かつては泉川、周辺地域は泉郷と呼ばれたが、高度経済成長期に豊富な湧水を求めて工場が進出。排水のたれ流しにより水質が悪化し、一時は魚も住めない状態になった。1975年、枯渇した川を元に戻すべく、地元住民が立ち上がり始まった保護活動は、ナショナルトラスト運動(柿田川みどりのトラスト)へと発展。自然環境を保全するための努力は現在も継続されている。
長さ約1200m、川幅30~50m。小さな川にも関わらず、貴重な生態系を維持する流水はほぼ全量が湧水から成り、日量約110万トンの湧水は、静岡県東部地域約40万人の飲料水となる。
・・・
参考音源
カッチーニ「アヴェマリア」
https://youtu.be/MkZE77MuFa4
静寂の刻 麻生 凪 @2951
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