第3章 下野国府の合戦 8 


 ……ここで話は本章冒頭に戻り、翌承平六(九三六)年晩秋に豊田を旅立った一行は京にてどのような運命に見舞われたか。



 護によって都の検非違使庁へ訴えられた「息子殺害」に対する告発、その取り調べについてであるが、結論としては罪自体は軽微なものとされた上に、朱雀帝元服の特赦により将門・真樹両名共に無罪放免とされたのであった。その背景には、法的なことにはからっきしに疎い将門に代わって白氏らが上手く弁護を行ったこと、また、将門の都時代の主でありこの年太政大臣に昇った藤原忠平が仲裁を図ったことがあろう。また、白氏がこっそり持参した貢物が功を奏したことも大きい。

 いずれ、晴れて潔白の身となった将門一行は揚々と豊田へ凱旋することが出来たのである。

 そればかりか、洛中ではこの一件が評判を呼び「坂東に勇猛なる虎あり」とその評判でもちきりになったという。


 将門がようやく故郷の地を踏むことが出来たのは、翌年承平七(九三七)年卯月。間もなく田植えを控えた頃であった。

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