その男は、案内人の何か一つを提示しろという命令に従い、答えた。

案内人はそのほかにもたくさんの話をしたが、男の心に届いていたのかは定かではない。ただ耳を傾けてはいたのだ。

男は足からパイプを伸ばし、局部にガラス片を携え、胸から赤黒い剣を伸ばし、身体中に鎖を巻き付け、顔面は何もないかのように虚無で覆われていた、ただ真っ暗で何もない。まるで今から踏み入れようとしている闇そのものだった。

男は案内人の話の途中で芝から闇へと歩を進め、真っ逆さまに奈落へと落ちていった。

鈍い音からしばらくして、奈落から醜い虫が這い上がってくる。

その醜い虫を見た案内人は眉一つ動かすことなく、拾い上げて食った。

その正体に気づきながらも、食った。

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混色の森 @yuuAmagata

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