案内人
取り憑いた歯車は、体を勝手に動かしてくれるわけではないようだ。
強制されているのは歩行ではなく思考のようで、走ったり、スキップをしたり愉快に進もうとすると体の動きが一瞬止まり、歩かなくては。と考えさせる。
最初に感じていた。なぜ歩いているのか。今になって考えてみてもそれはわからない。歩いていることで得られるものは明らかに何もない
もういいのではないか。
開放してくれないか。
突き刺さるガラス片よ。残りの破片は今どこへあるのだろうか。
足から伸びるパイプよ。どれだけ搾取すれば気が済むのだ。
胸に刺さる赤黒い剣よ。いい加減穴を広げるのはやめてくれないか。
体を支配する鎖と歯車よ。自由に進めたらどれだけ楽だったろうか。
虚な思考でそんなことを思っていると、隣の森からざわざわと音がした。
そちらへ目をやると、森が形を変えて小さな小道を作っていた。
この小道を行けば開放される気がして、方向を変えて小道を歩くことにした。
長く続くかと思っていた小道はほんの数歩で終わった。
抜けた先は、15歩分ほどの地面があり、その先は地面が突然なくなって、真っ暗な闇が広がっていた。その芝と闇の狭間、片足を芝に、片足を闇に浮かせた女が頭だけをこちらに向けていた。
「私は案内人です。この先へ進むことは悪いことです。もしあなたが自らの意思で闇に飛び込もうというのなら私の話を聞いてください。そうでないとしても私の話を聞いてください。」
「俺は自らの意思でここにきた。」
「そうですか。あなたをそうさせた一番の原因はなんですか?」
「俺の全てだ。」
「何か一つを。」
「そうか、それは・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます