インコの呟き

イノナかノかワズ

呟き:その1

 私はインコです。

 パッとしない地味顔の男性のご主人様に飼われています。ご主人様の年齢が30代だということはわかっています。


 そんなご主人様がここ一年間くらい、ずっと家にいます。

 いえ、言葉が足りませんでした。

 日中から家にいます。


 最初は仕事を辞めたのかと思ったりしました。偶に、私に会社を辞めたいと愚痴っていましたから。

 でも、違っていたようです。

 人との接触を減らすためだとか。

 難しいことは鳥の私にはわかりませんが、何でも病気が流行っているそうなのです。私、気になります。

 でも、鳥の私には知ることに限界があるので無理ですが。


 そんなこんなでご主人様は日中家にいます。

 仕事はしているようです。

 PCというものをご主人様がカチカチ鳴らしているます。偶に、PCと話しています。色々な声がPCから出てきます。不思議です。そしてびっくりもします。


 半年くらいはご主人様が家にいることが嬉しかったです。とても嬉しかったです。具体的には夜中でも歌を囀るくらいには。

 いろいろ遊んでくれて、普段できないこともしてくれて、よくかまってくれます。

 今も嬉しいのは確かです。


 でも、一人の時間も欲しくなりました。

 普段、ご主人様が仕事で家を空けているときに自力で鳥かごを開け、家の中を飛び回ったりするのが楽しかったのも嘘ではありません。

 ご主人様に内緒で飛び回る。

 何とも言えない楽しさがそこにはあるのです。


 鳥かごを器用にあけるのはとても得意です。そういう種族でしたから、とても得意です。


 それはおいといて、私はもどかしくてたまりません。

 ご主人様と遊ぶのも一人で秘密の遊びをするのも楽しいのです。

 両方ともとても楽しいのです。


 両方は現実的に取れないのです。

 

 ままなりません。

 ちっぽけな頭で悩んでいました。足りない頭で悩んでいました。


 しかし、鳥頭である私にはとてもその難題を解決することはできませんでした。


 けれど、その必要がなくなりました。時間という私には絶対に捻じ曲げられない偉大な生物が解決してくれました。


 最近、ご主人様が日中、家を空ける日が出来ました。

 週に3日です。


 家でする仕事と会社という鳥かごでする仕事の両方を振られたからだそうです。


 問題が解決しました。

 両方の楽しさを両立できたのです。


 最高です。

 最高なのです。


 こんな楽しさの良いとこ取りが続けばいいと思います。

 

 まぁ、じんせ――、いや鳥生はそんなにうまくいきませんけど。

 がっかり微調整が必ず入るのです。

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