「呪い実況中継…」

低迷アクション

第1話


“お前、今、何処にいる?”


LINEを見て“Y”は“それ所ではない”と思った。数日前から

モノの紛失、食べ物が腐る事などが続き、今夜は…誰かに見られている視線を感じていた。それに耐え切れなくなり、外に飛び出したが、固い地面を裸足、それも4つ足で歩く

何かが、追いかけてきている現状だ。


人気のある所に出たかったが、緊急事態宣言の最中、辺りを見渡す限り、人と開いてる店は何処にもない…


友人からの連絡は、そんな時に来た。走りながら、返す返事に間髪入れず、スマホが振動する。


“撮られてるぞ?何かの冗談…?それともアホチューバーにでもなったか?

気になったので、連絡した次第(^^ゞ”


一体、何の事だ?


続けて送られてきた文面にはURLが載っている。画面をタップした。

スマホに映し出された内容にYは、我が目を疑う。


そこには、彼の家、大学での映像が動画として載せられていた。

画面の日付も間違いない。自身が可笑しな事に悩まされてきた時期と重なる。


番号が一番若いモノをタップする。彼が冷蔵庫の中を確認し、オエッと口元を抑える映像と


“呪いレベル10 まずは身の回りから、腐った性根ん(しょうねん)の食べモノは

腐り飯(笑)”


とのコメントが添えられていた。それ以降の映像も、全てここ数日間のYの姿が映され、

その都度、表記された呪いのレベルが上がっている。


そして一番新しい動画は…


「今かよ…」


スマホを見て、立ち竦む彼の映像だ。コメントには


“呪いレベル90 いよいよ大詰め、パニくるアホに鉄槌を!決めるのは依頼主”


と言う文面と、Yの後ろ姿を見上げるように撮った追跡視点、荒い息使いの何かが

ゆっくりと、こちらに迫る映像が配信され、その下部のコメントも


“殺せ”


“やっちゃえ(笑)”


“毎週楽しみにしています。レベル100に期待”


“人の陰口、嘘吐き、女に媚び諂う馬鹿は死んでヨシ

(このコメントに対しては、Yは全く覚えがないと、答えている)”


と言った内容が何百、何千と寄せられ、閲覧数もどんどん上がっていく。

画面に映る自身の死を願う人の数に、彼は寒気を覚えた。


動画には、恐怖に歪んだYの顔がハッキリと映るまでに迫っている。

悲鳴を上げそうになる自身の目は、更新映像に表示された文字を捉えた。


“配信終了。依頼者満足、満足!今日はここまで!また、次回、お楽しみに~♪”


その言葉と同時に、足音と視線が消えた。

呆然と立ち竦む彼の目は、動画に対する視聴者の反応に釘付けになる。


“おっつ~、依頼主、最後でヘタっちゃいましたね”


“でも、最後のアホ面?マジで腹筋崩壊”


“まぁ、すぐに殺しちゃ惜しす。次回ノロイに期待”


“超面白かった。明日から仕事がんばっぞ~”


“今夜は徹夜で視聴!気分はサイコー、サンクスっす(^^ゞ”


何処の配信サイトにでも、ありそうな、無邪気かつ能天気な内容に恐怖を覚えた訳ではない。

コメントの中に見慣れたモノがあった。どこにでもある、ありふれた絵文字だ。


だが、自身の行動や大学での様子、下宿先を知っている奴に繫がるモノだ。


そいつはLINEなどの文面に“(^^ゞ”を付けるのが癖だった…(終)

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