第6話「子猫の反省」

ファレル・フェーレース。

彼の傷は未だに塞がらない。そのため体を引きずって彼は森の中を

進んでいた。


「ここが、死ぬ場所…ざまぁ無いな」


ファレルは笑みを浮かべた。そして生きることを諦めた。

黒い猫は村の子どもに拾われた。

その子どもたちはベディヴィアに興味津々で話しかけ続けていた子ども。

フェリスという名前の少女はそーっと猫を抱き抱えようと手を伸ばした。

すると猫は警戒しているのかシャーッと威嚇した。


「フェリス、どうしたの?」

「お母さん。この猫ちゃん、怪我してる」


フェリスの母だという女は気性の荒い猫の襟首を掴んだ。


「もう、怪我をしてるのに暴れちゃいけません!」


猫は成す術もなく、連れていかれ包帯を巻かれた。暫くはフェリスの家で

世話をされた。その間に猫は段々と警戒を弱め始めた。


「でも珍しいですよね。こんな場所に猫がいるなんて」


たまたま村を訪れていたミーニャは猫を撫でようと手を伸ばすも猫は

逃げた。


「あ、ごめんね?驚かせちゃったのかな…」

「猫ちゃん、このお姉さんは大丈夫だよ」

「名前は付けてないの?」


ミーニャはフェリスのほうを見た。彼女は名前の事をすっかり忘れていたようだ。

だが名前はすぐに分かった。


「ファレル・フェーレース、だ」

「わっ!アスランさん!?でもファレルって…」


猫はいつの間にか姿を消していた。何処かに逃げ出してしまった。


「アスランさんは、もう怒ってません…よね?」

「あぁ」

「だったら、ほら!仲直りしましょうよ!」


ミーニャに押されてアスランは渋々外に出て行った。



「大丈夫だよ?今のこの傷ならすぐに死ぬさ」

「死ねとは言っていない」


ファレルは飄々とした顔をしていた。


「で、俺にどうして欲しいんだ」

「別に…お前が生きたいのなら生きればいい。フェリスには

しっかり教えておけよ」

「分かったよ。あ、そうだアスラン。お前の主人に伝えておいてくれないか。

反省は行動で示す、何かあったときには何時でも頼ってくれってな」





「仲直りできたのなら良かった。ファレルも村にいることにしたんだ」

「えぇ。何かあったら何時でも頼って欲しいと言っていました」


アスランも何処か今までと違う。柔らかい印象に少しだけ変化したように感じる。

今日、ようやく全回復したエリオは屋敷を出て仕事に戻るという。


「お世話になりました。僕でも何か力になれるようなことがあれば、何時でも

協力しますね」

「うん。その時は頼らせてもらうね」


そう言って彼を見送った。

アスランがカラスに変身したり、カラスたちとコンタクトを取れるように

ファレルも猫に変身し、猫たちとコンタクトが取れる。二人で情報収集なんかが

出来そうだ。

王都の大会議室には老人たちに加えてリアナ・スカーレットとベディヴィアも

呼ばれていた。更に剣聖であるレオンハートも来ている。


「今日も長くなりそうだね」

「聞こえてしまいますよ。リアナ様」


自分の保身だけを考える老人たちの話を聞くのは最も無駄な時間を過ごしていると

までリアナは言っている。否定はしないがあまり声に出すことは出来ない。

会議は結局退屈のままで終わった。

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アナザーアース~地球が異世界だったとしたら…~ 花道優曇華 @snow1comer

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