第3話 闇が広がるPANORAMA
あの事件から一週間、JGSOの壊滅は大きく報道されてもおかしくないような大事のはずだが…
「今日もそれについての記事はなかったよね。なんで?」
「火事が起こった以外よく分かってないらしいしな…職員の皆さん殆ど亡くなられたらしいし。生き残った人にも…」
生き残った職員には見舞金という名目で口止め料が支払われていた。うちのような組織は日本には本部一つしかない。海外には自警団に似た何かはあるらしいが、公営組織としては存在しないと公には言われている。
そんなよく分からない状況なのだが、今は近くのデパートに来ている。灯里に「何時までも引きこもりで居たくないし、服ももっと欲しい」と駄々をこねられてしまいこうなった。懐も暖かいし、こいつの出処も壊滅してしまったので外に出さない理由もないかと思い承諾した。
「あ、服屋さんあった!」
「あ、おいちょ待てよ!」
当の彼女はとてもテンションが高い。曰く高校程度までの教育はうけていたのだが、俺は次の職場をどうするか等で気が気じゃなかったりする。
いっそこのまま戦いから身を引けないかな、とも思う。灯里との日常も悪くないし、むしろ1人の時よりずっと幸せだ。このままフェードアウト出来たら、そんな俺の願いはあらかた回り終わった後のランチタイムに砕かれる事になる。
ぼーっとしながら外を天井を見ていた時、ガシャーン!という轟音と共にファストフード店のガラスが砕かれ、蟻を思わせる全身装甲を纏った2人の男が入って来た。
「我らはNOA、この地球を浄化する者だ!愚かな人間共よ、救いの船の血肉となれ!オーバーインストール!」
男はライオンをインストールし、客が逃げ出していく。嫌な事に巻き込まれたなと思いつつ身構えると灯里が口を開いた。
「なんか…聞いてるこっちが恥ずかしいレベルの厨二病?」
「こらこらそういうこと言わないの。あっちだって恥ずかしいかもでしょ?」
『あのテロ組織に恥ずかしいとかあるのかなぁ…?』
光も呆れた声で続ける。この2人図太すぎやしないか。
「貴様ら、随分と愚か者の様だな。逃げれば少しは生き延びれるというものを」
「愚か者はお前でしょうがこのテロリストが!」
そーだそーだ!と光も便乗してくる。聞こえてないから良いが、本当に困った奴でる。
灯里を隠れさせ、向かってくる敵に拳を放つ。
右腕をリアクターにかざし短剣を取り出す。
「お前は少し、大人しくしてろ!」
「ぐっ?!」
片方に短剣を突き刺し怯んでいる隙に相手のリアクタを破壊する。
リアクタを破壊すれば表層の書き換えられた遺伝子が元に戻り武装が解除される。
『後ろ後ろ!』
「わかっとうよ!」
剣を逆手に持ち替え振り向きざまに一閃。
そして溝尾にキックを入れ、距離を詰めてリアクタ破壊。
「くっ…あの組織の生き残りだったか。分が悪い!撤退だ!」
「あ、おい待て!うわっ?!」
警察に突き出さないといけないのだから拘束しなければ、と追いかけようとしたがスモークグレネードを投げられ見えなくなってしまい、煙が晴れる頃にはもう姿が無かった。
また面倒な奴だ…とため息をつき装甲を解除する。
どうせ警察が事情聴取に来るだろう。少し待つか。と周りを見回すと、倒れたテーブルからこちらをみる女性がいた。
「ね、君JGSOの人でしょ」
「え、えぇそうですが…」
その返事がなにか嬉しかったのか、俺に駆け寄り腕を掴んできた。
「やっと見つけた!私についてきて!」
『え、この人誰?!』
「いや知らん!俺が聞きたい。あ、おーい灯里~出てこーい!この人が着いてきてって!」
「え、えぇ?!ちょっと待って~!」
少し走らされた俺らが連れてこられたのは街の郊外にあるコンクリートの建物の地下だった。
「さ!いきなり連れてきちゃってごめんね!ようこそ私の研究所へ!」
そう謝りながら彼女は白衣を纏い眼鏡を付ける。この人、何処かで見た事が…
「あ、なんか新聞で見た事あるよ!」
「おっ、知ってた?私は聖奈萌光。主に生物学と電子工学について研究してる。」
「博士~!NOAの犯行声明があるようですよ!」
若い男の声がタブレットを持って奥の部屋から出てきた。犯行声明、と言うとさっきの事件の事だろうか。
「あ、こいつは助手の鎌野徠斗。クソ真面目な奴だよ」
いつもの事なのか鎌野という男ははぁ、とため息をついた。
「すみません巻き込んじゃったみたいで。さ、始まりますよ」
アジトだろうか、大きく少し廃れた森の中の建物に報道陣が詰めかけている。
その建物の大窓にホログラムの男が現れ、詰めかけるマスコミに向かい話し始めた。
『貴様らが気になっていることから話してやろう!先程の某ショッピングモールでの事件は私達が犯人だ!だがこれは開戦の鐘に過ぎない。これからこの地球全土に戦闘員を配置する!この星の癌である人間を浄化するのだ。さぁ、人類滅亡の始まりだ!』
Re:acters @CROUS
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