新しいカタチ

@Maple0516

第1話


「美咲、菜奈ちゃんと買い物行ってきてくれない?」

春休みのある日、リビングでお茶を飲んでいた私は母の方を見た。

毎日会社に行っていた母は今、リモートワークをしている。自分のコーヒーを淹れて休憩するところのようだった。




菜奈ちゃんは小学3年生、私の年の離れた妹だ。

「いいよ、何買うの」



「誕生日プレゼント。悩んでるの」

菜奈ちゃんは私の座っているソファに乗ってきた。


「文房具はどう?」

高校生の私が小学生のプレゼントを考えるのは難しい。普通のアドバイスになってしまった。


「文房具はね〜かぶりそう」

確かに。


「500円くらいまでで何かないかな」

ソファのクッションに顔を埋める妹に的確なアドバイスができない。

ちなみに私のほしいものはiTunesカードです。



「500円か〜」

私のやってるソシャゲのガチャ、10連1回3000円だからな。足りんな。

そして金額指定のある誕生日プレゼントってあるんだな。最近の小学生はこうなのか。


「プレゼントはね、公園でみんなで交換するの」


「交換??」


「学校休みだったとき誕生日だった子

は、誕生日パーティーできなかったから

全員で全員を祝うの」



だから交換しておめでとうなのか。

「いいね、そういうの最高」




新型コロナウイルスで休校になったり

人と関わるイベントが中止になったりしたこの1年は、

この1年は自宅にいる時間が多かった。

戻ってこない1年。

マスクで顔を覆い、顔を覚えていないクラスメイト。

私が小学生のころって何も考えずに遊んだりしてた気がする。

私のときよりも今できることを考えている。



「自分のほしいものにしたら?」


「そうだなぁ〜」


ここ数日は、良い天気が続いていて気持ちがいい。

家を出て店に向かった。


菜奈ちゃんはボードゲームを購入した。


おそらくまだ続くであろうこの状況を考えてだろうか、当たった人が家族でできるようにと笑った。



私は菜奈ちゃんの優しい笑顔が渡った人に続くようにと願った。









 

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