歯磨きしようかと思ったけど、眠いんだもん。

エリー.ファー

歯磨きしようかと思ったけど、眠いんだもん。

 眠い。

 とにかく眠い。

 歯磨きをしようと思って歯ブラシを取り、歯磨き粉をチューブからひねり出したところで睡魔に襲われた。

 なんで、このタイミング。まだ布団にも入っていないし、寝る前のストレッチもしていないのに、なんで眠くなってくるの。

 ねぇ。ねぇ、睡魔さん。

 なんでこんな感じになっちゃうの。

 だって、あとは眠るだけだよ。

 確かに、歯を磨くなんていう面倒くさいことはあるし、今回はストレッチだって抜きにしたっていいですよ。だって、ちょっと汗かいて臭くなるかもしれないし。ただ、痩せたいだけなんだけれども、今回はいいや、そこが本質じゃないから。

 睡魔さんよ、なぁ、睡魔さんよ。

 あんまりじゃあ、ないですか。

 だってね、会社で経理の仕事をしてる時だって何度も何度も襲って来たじゃないですか。

 ねぇ、その度に、こっちはうつらうつらしながらやるわけですよ。寝ちゃあいけない。寝ちゃあいけないと自分に言い聞かせてね。

 で、家に帰ってきてもこうやって襲うわけですか。

 はぁ、そうですかそうですか。そういう感じでくるわけですね。そうやって、何度も何度も私の意識を飛ばしてやろうとやってくるわけですか。なるほどね。


 睡魔ってなんなの。ねぇ、なんなの。

 何が目的なの、睡魔って。

 邪魔なんだけど。

 眠くなければできたことってたくさんあるんだよね。

 分かるよね、それくらいのことは。

 ねぇ、分かるよね。

 お前に言ってるんだよ、なぁ睡魔よ。なぁ。

 気持ちは分かるよ。人間に休みというものの大切さを訴えているんでしょ。その心意気や良しですよ。そこはね。実際に現代人というのは睡眠というものをおろそかにしがちですよ。体をリセットして、脳をリセットして、さあ、明日も頑張るぞ。

 そのための睡眠ですから。それは分かりますよ。

 でも、寝すぎた次の日も睡魔に襲われることがあるんですよ。

 あれは、なんなの。睡眠は絶対に足りてるし、体力も回復してる。

 なのに、眠い。

 どういうことよ。

 ていうか、睡魔って何。ねぇ、お前、何者。


 睡魔のおかげです。

 本当に。

 あの時、眠るっていう判断をしたことでかなりその後の業務が楽になったんですよ。感謝してもしきれないとはまさにこのことです。本当に有難う御座います。

 人間に睡眠の大切さを伝える役目というのは、中々に難しいもので忌み嫌われることもあると思います。でも、その役目をしっかりと全うする姿勢には感服してしまいます。

 私も、最初こそ睡魔というものを恨んでいました。まるで親の仇のように。

 今は違います。自分の命を助けてくれた、睡魔に、いえ、睡魔さんにお礼を言いたい気分です。


 歯磨きしている途中で睡魔に襲われて、お気に入りのシャツを歯磨き粉で汚してしまったんです。完璧に染みついちゃってて、洗うと色も落ちちゃうし、何もできないんです。

 これ、どうすればいいんですか。

 確かに睡魔に助けられたこともありましたけど、これじゃあ、感謝する気も起きませんよ。

 このシャツ限定品なんですよ。めっちゃ高かったんですよ。もう買えないんですよ。思い出の品だったんですよ。

 睡魔ってどこにいるんですかね。家族とかいるんですかね。

 ちょっともう怒りが収まらないというか。

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