私はあなたの味方よ

 世界に降り立った先にいた一人の女性。

透き通るような白い肌に、黒真珠のような輝きと色の髪を持つ女性。

短い布を腰に巻き、そこからほんのりと、ピンクがかった太ももをのぞかせている。

胸元に下がる青いリボンが可憐で美しい。

女性の体をじとりと見ては失礼なので、その目をすぐさま逸らした。

 それにしても、此処はどこなのだろうか。

彼女は召喚術の使い手なのだろうか。

彼女の出す不思議なオーラの正体は一体…?

数分の間に沢山のことが起こりすぎて

俺の脳は

『オーバーヒート』

してしまった。

「私はあなたの味方よ」

今日初めて会った神秘的な女性が発したその一言が俺の心に安らぎと安堵を与えた。

初めて会ったはずの彼女を見ているとどこか懐かしい気持ちを呼び起こすのだった。 

 

 変わらぬ日常、そんな日常は私に心を揺れ動かすほどのときめきを与えてくれはしない。

好きだった小説も最後を迎えてしまったし…。

今現在の唯一の楽しみといえば、寝ることくらいしかないのかもしれない。

昼寝でもすれば、3回に一回は壮大な楽しい夢を見れるのはまあまあ楽しい。

日常が怠惰の極みというのは悲しい人間なのかもしれないが、良しとしよう。

それにしても本当に暇なのだ。


学校も特に楽しいことは起こらない。

少女漫画みたいに、パンを加えて登校もしないし、六つ子の秀才イケメン男子たちに家庭教師をしてもらうということもない。

六つ子もそう簡単には生まれるはずがないだろう。

 だがしかし、調子がよくない。

見ず知らずの世界の情景が浮かぶのだ。

妄想癖が重症化したのかとも思ったが、違うようだ。

胸糞が悪い場面もしばしばと送られてくるのだ。

『「ライラック様の横に立っている野郎は何なんだ???」

「ルイス様よ」

「なんであんな平凡野郎が勇者様の隣を歩いているんだ?と聞いているんだ。」』


ルイス様って、この人のこと??

本人を目の前にそんなことを言うなんて根性腐っているんじゃないかしら!!

ルイス様って人にも聞こえかねないじゃない!!

『「よく来てくれた、ルイス君」』

なんだか偉そうな人に呼ばれているわ。

日々国のために尽くして戦っているルイス様にねぎらいの言葉でもかけるのかしら?

『「この国には英雄がライラック君と君の二人いる。しかし、この国もそう裕福な国ではない。」』

何か始まったけれど、労いの言葉というよりは少々むかつく言い草だ。

この世界の人たちは何を見て何を評価して生きているのか甚だ理解できそうにない。

仕舞いには、

『「君にはこの国から出て行ってもらいたい。正直目障りなんだよね君」

「もし出ていかないなら、ここで死んでもらう」』

ですって?

信じられないわ!

そんなのんきに、脳内に送られてくる彼らの動向を観察するのは一瞬にしてやめざるを得なくなったのだ。

いきなりルイス様に振りかざされる剣。

白銀の鋭い剣先が彼の息の根を止めようとしていた。

「は!?」

私には情報処理すらできない出来事に、頭が真っ白になってしまった。

ここ数日間一方的に彼を観察していただけなのに、私の中ではどうも放っておけない存在になっていた。

こんな風に、死んでいい人間じゃない!

どうしても生きてほしい!

あんな人間たちに彼を亡き人間にさせるなんて許せない!

そうやって、全力で彼の死を阻止したいと願った。

ただただ願うしかできなかった私はたちまち真っ白な光に包まれた。

そして、私のもとへ舞い降りたのがルイスだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女は○○を召喚した。 ひるねま @choppy321

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ