第18話
地元ギルドに移動した零は、楽しそうに話をしている。一気に50人近くも増えて活気に満ちており、幸運のオーラを全開にしたまま、ガチャを引きまくっている。
「またまた大当たりー」
「何だ、これ確率おかしくない? 俺の時は外ればっかりだったんだが」
「私もよ。なんだろう。何かがおかしい。もしかして不正?」
「それも考えられるけど、スマホからどうやって不正するんだ?」
「まずはPCで侵入して自分のアカウントの確率を操作?」
「その確率は無いですね。運営も零さんのガチャ運を驚いて見てますよ。今まさにリアルタイムでね」
「ちょ、ルンルン太郎さん、まさか運営側の人間!?」
「いえ、私はただの友達ですよ。そして気楽な傍観者です。人を観察するのは実に面白い」
「運営の人が近くにいるんですか?」
「はい。居ますよ。今後とも宜しくとの事です」
「こちらこそとお伝え下さい」
ガチャで大盛り上がりする中、運営も零のガチャ運に驚いている事がわかった。零は安心した。運営に不正だと思われたらどうしようかと思っていたからだ。
「零さん、私わかったよ。零さん超能力者でしょ。オーラが他の人と違うもの」
「マキちゃんもオーラが見えるの!?」
「うん。少しだけね。強烈なオーラの時だけ見えるの」
「マキちゃんもって事は、やっぱりそうなんだ。零さんと私は仲間だね」
「うんうん。仲間だね」
「ちょ、待ってくれよ。この大当たりは超能力のせいかよ」
「あ、それは違いますよ」
「いや、絶対そうだね」
「いやいや、運がいいだけですよ」
マキに超能力の事がバレてしまって大勢に広がってしまう。楽しかった時間が一転してピンチになった。
「超能力様は運もいいのか。何となく理解した。勘がいいんだな。やっぱり、ガチャはタイミングか? 1秒ずれたら大当たりとかあんの?」
「そうそう。今だって時に引くんですよ」
「やってみる。今だ! お! 4枚抜きしたよ。零くんの言うとおりだったぜ。やったぜ!」
なんだかんだで上手に誤魔化せたようだ。危なかった。それから少ししてマキから個人メッセージが届いた。
「さっきは、ごめんね。皆がいる前で話すべきじゃなかったね。私ってその場の雰囲気で突っ走る事があるん。反省してる。許してね」
零はマキに超能力者である事がバレたついでに告白する事にした。
「マキちゃん聞いてくれ。大切な話なんだ。実は俺さ、運気が見える超能力があって、その能力を神様が欲しがってさ、異世界に招待されたんだ。今は3日に1回。つまり1週間に2回は異世界に行っているんだ」
零はドキドキしながらマキからの返信を待っていた。どうだろう。どんな反応をするのか予測できない。
「いいなー異世界。私も行きたい」
「マキちゃんなら、少しオーラ見えるし才能あるかも!?」
「じゃあ、私も行くね。今からじゃちょっとシフトの都合がつかないけど、週末なら。あ、大丈夫そう。2日後は夜勤明けだわ」
「よかった。ちょうどよく、その日に異世界行くんだ。しかもさ、国中を旅行するんだ。瞬間移動の転移魔法で。異世界で町の名物料理をいっぱい食べよう」
「なにそれ。楽しそう。私、ちまちまちょっとずつ食べるの好きだから少しだけもらうね。零さんは痩せてるからいっぱい食べるといいよ。何軒回れるかな?」
「そうだね。マキちゃんいるし、凄く楽しそう。転移魔法を使う女の子はいい子だからすぐに仲良くなれると思う。その女の子の魔力が無くなるか、俺のお腹にもう入らなくなるまでだから何軒回れるかな。地球に帰る都合もあるし、泊は無理だから早く終わるといいね」
「うーん楽しすぎて帰りたくなくなっちゃきそう」
「え、俺はいつでも地球に帰りたいけどな」
「それは私がいるからでしょ?」
「それもあるけどゲームがしたくて」
「これからは帰りたくなくなるかもね。ずっと一緒だよ」
「いや、俺は毎回地球に戻るよ」
「じゃ、私も戻る。ずっと一緒」
「うん。ずっと一緒だね」
まあ、マキちゃんは地元ギルドにいるし、サブアカウントには雪子もいるし。ずっと一緒と言えばそうか。異世界にまで一緒に行く事になったし。
さあ、雪子を狙ってガチャ再開だ。鈴原零は運気のオーラを限界まで使いきった。ギルドのメンバーも大当たりが出すぎて麻痺したようにただ、おお、とか、またとか言うだけになっていた。というか、喜び疲れていた。
「雪子レベル10000万達成。残り40万円でレベル上げします。と、その前にいらないキャラを皆に配ります。雪子ひとりでも勝てますので」
「えー!? ほしい! 欲しい!」
「マジか! やるねー!」
「太っ腹ー! このギルドに参加してよかった」
ギルドの全員にキャラを配り終えて、零のレベル上げが終わると深夜になっていた。今日入ったばかりのメンバーも、零から貰ったキャラのレベル上げを頑張っているようだ。多い人は10枚以上も同じキャラをもらっている。
金額にしていくらになるのだろう。天井が30回なので最低で1万8000円。単純に計算して18万で300連。しかも同じカードを10枚という事は、更に10倍は必要なので180万円。つまり、10枚同じカードを貰った人はそれくらいの金額を得した事になる。まあ、キャラ指定ガチャという救済措置もあるが、10回までしかできない。もちろん、零はそれも全部使いきった。それと、ガチャのオマケはキャラを貰った人達は貰えない。
ガチャのオマケとは、専用武器や経験値、ゴールド、神装備などの便利アイテムだが、零にはそれも無数にある。数えきれないオマケがある。しかも、何を貰えるかは決まっているが、その個数は運なので、大量に当たっている。
「レベル上げをする時間が取れない人は後で相談して下さいね。それでは、そろそろ寝ましょうか。皆さん」
「零さんイザミリアありがとう。しかも18枚も」
「マキちゃんいいんだよ。気にしないで。本当に雪子だけで勝てるんだ。ほら、ギルド戦の結果見てごらん」
「え、雪子だけで100戦全勝」
「な、本当だろう? 俺の雪子最強だからさ」
「うん。最強。でも、最高は私」
「うん。マキちゃんは最高」
「えへへ」
「じゃ、おやすみ」
こうして、長い夜は終わった。異世界で生きるか死ぬかの戦いをした後だと言うのに、なんという平和な世界。しかも、マキを異世界に連れていくという約束までしてしまった。わし、知らないっと。
鈴原零は本当に困った男だ。すっかりマキを勘違いさせてしまって。これで本人はゲームの友達だと思っているのだから本当に困ったものだ。
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