二建目(ふたたてめ)

➀ タイトル画面

   暗転から歌舞伎の『チョンパ』で、

   『江戸名所図会』(長谷川雪旦)が現

   れる。その上に大きくタイトル。縦書

   き、筆文字で、

   T『かぶきて さうらへ』


② 両国橋

   初夏。両国橋の上。賑やかな行き交い。

   橋の両側には涼んでいる人々。

   欄干から乗り出して駄弁だべっている父A

   ・B。足元に子供達。その下を流れる

   隅田川。川面に幾つもの屋形船。と、

   柳橋の袂から猪牙舟ちょきぶねが現れて、隅田川

   をのぼって行く。T.Bして、父Aを見上

   げている男児B(三歳)。父Aの裾を

   引っ張って、猪牙舟ちょきぶねを指している。男

   児Bの頭を撫でる父Aの掌。

   ──やや俯瞰で。

   両国橋の風景をPUNして両国広小路。

   立ち並ぶよし小屋(軽業や芝居の見世

   物、土弓どきゅうの遊技場、茶屋、髪結床、舟

   宿、料理屋など)と屋台(飴、そうめ

   ん、甘酒、冷や水、麦茶、稲荷鮨など)。

   大勢の人々で賑わっている。


③ 両国広小路

   橋番所をT.Bする。と、下手手前に現

   れる寄席看板、『二代目正蔵』『蒟蒻

   問答』の文字。賑わっている木戸をPUN

   して広小路中央の広場。立ち並ぶ葦簀

   小屋と屋台。賑やかな笛、太鼓、三味

   線の音。


④ 蝶之助の小屋・中

   ──やや仰角で。

   傘を持っている蝶之助。反対側の手を

   真っ直ぐ横へ伸ばして、水平を保って

   いる。蝶之助の「はっ」と掛け声と共

   に、さっとT.Bして小屋の中全景。小

──────────────────────

   屋の屋根付近で傘を片手に綱渡りをし

   ている蝶之助。満座。舞台下手に笛、

   太鼓、三味線かた


⑤ 同・表

   立ち並んでいる華やかな『花形蝶之助

   丈江』の幟をPUNしていく。と、蝶之

   助の小屋の木戸。二人の呼び込みが木

   戸口で軽快なタンカ(呼び込み口上)

   を切っている。その上の屋根看板、綱

   渡りを描いた軽業かるわざの大きな絵。


⑥ 土弓どきゅう小屋・中

   ズバッと的の中央に矢があたる。

   「あたーりー」の声と共に太鼓を叩く

   矢取り女A。矢取り女達に囲まれて、

   ちやほやされている三次。得意気な顔

   で手に弓矢。三次、再び狙いを定めて

   弓を引く。と、「パォーン」と象の声。


⑦ 観物かんぶつ問屋・裏

   ふんどし姿で象を洗っている観物かんぶつ問屋の男達。

   象が鼻で水を噴き上げる。と、「あッ

   ! こンちくしょう!」「やられたー

   ッ」「仕方ェなァ」と口々に言い合

   って笑う。


⑧ 七面鏡ななおもてのかがみ小屋・中

   『長命国之鏡ほそながくうつるかがみ』に映っている客、男A

   の顔。細長くて滑稽。男A、笑って横

   を向く。と、

   小屋の中。七つの大きな鏡が一列に並

   んでいる。順に『大人国之鏡おおきくうつるかがみ』(大き

   く映る鏡)、『小人国之鏡ちいさくうつるかがみ』(小さく

   映る鏡)、『逆見国之鏡さかさまにうつるかがみ』(天地逆さ

   まに映る鏡)、『平面国之鏡ひらたくみせるかがみ』(平べ

   ったく映る鏡)。どの鏡の前も男同士

   や娘達、子供連れで賑わっている。僧

   侶の姿も。

   普通の鏡に映っている平蔵、ふいと横

──────────────────────

   を向いて去る。と、続いて鏡を覗き込

   む辰。P.Dして、その鏡の下札さげふだ『おら

   んだの洗鏡あらいかがみ』。


⑨ 同・表

   ──徐々に俯瞰になって。

   木戸から出て来る平蔵と辰。全て障子

   仕立ての小屋の壁面。その障子に大き

   く『七面鏡』の文字。

   平蔵と辰、そのまま広小路中央の広場

   に歩いて行く。


⑩ 両国広小路

   シーン⑨からの俯瞰→大俯瞰になって。

   (参考/『江戸名所図会』 長谷川雪旦)



              『二建目』終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かぶきて さうらへ 佐久良 燎 @Kagari-Sakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ