第2堀 怪しい美術部②
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この学園って、スクールリングがあるでしょ?
それ、毎年この美術部が模様を掘ってるのよ。すごいでしょ。
そうなったのは何年か前の……
それまではみんな同じ模様の、機械で掘られたスクールリングを使ってたの。
とにかく、今の美術部は他の学校とは違う活動をしているの。
勿論、希望するならイラストを描いたりやデッサンをしたりしてもいいわ。
2月上旬までには、新1年生のスクールリング約300個を掘らなきゃだから……できれば入ってほしいけど……。
あ、ちなみに模様は自由よ。
あと一応実技テストをするわ。あまりにも仕事を任せられないようだったら手助けをしてもらうわ。
是非、入ってね。あくまでもできれば、だけど。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…………………………………………。
私は無言で心菜と顔を見合わせた。
……いや、まあ思ったほど変な部活じゃなかった、けど……。
うーん。
うーむ。
(心菜、どうする?)
私は心菜に小声でささやいた。
(ん?心菜は入ろうかな)
(へっ?!何で?)
(心菜こういう系好きだよ。みんなで目標を達成するの!まさに小桃ちゃんのしたかった青春だよっ!それに……)
(それに?)
心菜は顔を赤らめて言った。
(先輩もかっこいいし)
(…………へっ?!今なんて?)
(里山先輩かっこいいよね)
(…………うーん……かっこいい、かなぁ)
心菜って結構惚れやすい性格だよね……。
あのぼさぼさ髪のどこが良いのか……
(里山先輩って、心菜のタイプと全然違うじゃん。ほら、小学生の頃片思いしてた元気いっぱい山口君…………)
「わーっ!小桃ちゃんあーあー!」
うっかり大声で私の言葉を遮る心菜。
先輩たちが驚いてこちらを向いた。
「どうかした?それと、入部は決まったのかしら?勿論ゆっくり構わないわ」
「あ、ここ……わたしは入ります!」
「え、本当?!嬉しいわ!念願の新入部員よ!」
じゃあ……と平佐爾先輩がこちらを向いた。
「貴女は?」
「……へっ?!あ、えーっと……」
「あ、ごめんなさい。今決めなくても構わないわ。是非、ね」
――白藤家――
「むーん……っ。どーしよっかなあ……」
私は自分のベッドに横たわった。
(心菜は入ったし……うーんでもなあ……青春…………)
そのとき、ピロンとスマホの着信音がした。
『ココナッツがスタンプを送信しました』……か。
またただの雑談かな……と思いながら、私はスマホを開いた。
ココナッツ:『先輩たちと連絡とっちゃった!』
……ええっ?!
さすが心菜。コミュ力の塊め。
それから「てへっ」とでも言ってそうなスタンプがいらつく!
……何て返そう。
もも:『すごいね。早くない?』
ココナッツ:『えへへー……グループでやりとりしてるんだけど、1年生心菜だけでちょっと気まずいんだよねー』
もも:『ふーん』
ココナッツ:『そっけない。酷いよぉ』
『小桃ちゃんは美術部入らないの?』
もも:『今考えてるとこ』
そう送ってからスマホを閉じると、私はスクールリングを右手の人差し指と親指の腹でくるくると回しながら、やがて眠りについたのだった。
――翌日。休憩時間――
「心菜、部活に入るの紙、出してくるね!」
語彙力。
「いってらっしゃい」
暇。
心菜がいないとものすごく暇だということに今更気づいた私。
本でも読むか。……ってこれお父さんの本…………文字がちっちゃすぎて読めないんですけど。
(んー……これ何て読むんだ?よ…よう…………)
「白藤」
「きゃっ!た……けんちゃん先生!」
「なんだそのかわいい悲鳴。どこかの「ぎゃあああ」とは大違いだぜ」
急に声をかけてきたけんちゃん先生がいきなりよくわからないことを言う。
「はあ……何か用ですか」
「ん……えーと……部活決めたのか」
……なんでまた私に…………って、クラスで今一人なの私だけじゃん!
見かねた先生に声をかけられるなんて……恥ずかしい…………
「えーっと……美術部に入ろうか悩んでるところです……」
「へー。美術部か。絵描くのか」
詳しく言うとスクールリング部なんですけどね……
「絵は趣味程度なんですけど、美術部に入って本格的に絵を描くのも良いな〜なんて」
スクールリング部なんですけどね。
「へー。いいじゃん。描けたらみせてよ」
「……へっ?!」
戸惑う私にけんちゃん先生はいたずらっぽく笑う。
(……かわいい)
けんちゃん先生が去ってからも、私はしばらく心がぽかぽかしていたのだった。
「ただいま帰りましたーーっ!」
「おかえりー」
元気よく帰ってきた心菜に、私はかなりテキトーに返事を返す。
……って、心菜の後ろに誰かいない?
「ご無沙汰してます」
「っきゃああああっ!…………び、びっくりしたっ……」
「すみません」
急に心菜の後ろから女の子が出てくるもんだから、私はまたも驚いてしまう。
女の子は、目にかかった前髪を少しかきあげて言った。
「驚かせて申し訳ございません。僕は1年B組の
「捕まった?」
「捕まっただなんて人聞きの悪いこと……村崎ちゃんって、占いができるんだよっ!面白そうだから、連れてきたのっ!」
……面白そうだから連れてきたってあんた……ショッピングモールじゃあるまいし…………
「ほらほら、小桃ちゃんも占ってもらいなよ〜〜!」
「えぇ………うん……」
私は言われるがままに椅子に座った。
向かい側に座った村崎さんは、前髪をピンで留めて言った。
「白藤……さん……何か悩んでいることはありますか?」
「悩み…、えーっと……美術部に入ろうか悩んでて……」
「美術部……ですか。……………………」
うーん。本当に占えるのかな…………………
「……きええええええええええええええい!おおおおおおおおおおおお!」
「……村崎さん?!」
……占い方が独特!
そしてそれに全く気づかないクラスメートたちが謎!
「……出ました。白藤さんは……………」
ごくっ。
「……私の頭の中に、分かれ道を右に進んだカード……そして、『幸せ』のカードがあります。右は過酷な道と出ているので、美術部に入るという意味でしょう。つまり…………」
「「つまり……?」」
「美術部に入ることで、何らかの『幸せ』が得られるということです」
「私、部活希望届け出してくるね」
「早っ?!小桃ちゃんそれでいいの?!」
村崎さんが行った途端に職員室に行こうとする私。
そういえば小桃ちゃんって、そういうの信じるタイプだよね……と、心菜は呟いたのだった。
美術部…………というか、スクールリング部?! マグロ @maguro_yayoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。美術部…………というか、スクールリング部?!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます