マインドクラッシャー

KEIV

お題『春』

 けっ。教科書重いな……

 やっぱり買ったばかりで全部持って帰れってのはキツいよ。まぁいいや。なんとかリュックサックと学校指定のカバンに収まったし。指定カバンは自転車のトランクに積んで、バイクロープで固定してと。重いけど、リュックは背負うしかないか。前カゴだとハンドリングしづらくなるし……


 で、結局リュックは背負い指定カバンはトランクに固定して走る事にした。校門正面の道を信号3つ分真っ直ぐに走り、そこで右折。そこから真っ直ぐ2分ほど。そこが自宅だから、頑張れば通学時間3分だ。まぁ、車と併走するレベルのスピードを出すことが前提なのはおいておこう。


 校門正面に延びる道には、信号5つ目まで梅が植わっている。どうやら、初代校長が拘ったらしい。しかも、拘りにこだわり抜いて桜の咲く頃に咲くよう品種改良までしたそうだ。どうやったら、咲く時期を半月や1月レベルでずらせるのやら……


 そんな事を考えていると、正門から4つ目の信号の少し手前に同じ制服を着た女の子を見つけた。指定カバンの色からすると1歳下か。同い歳には仲良い人が出来づらい謎の性質があるおかげか、1個下の友人が多いから聞いてみるか。


 それから聞こうと思っては忘れ、いつもその場所で姿を見ては思い出すことの繰り返しだった。ただ、彼女の存在を探る事は忘れても彼女の存在を忘れる事はなかった。たぶんこれが恋ってやつなんだろうな。それに気が付いてから、更に頭から離れなくなった。


 なんとか思い出し、その子と同じ学年の友人に誰なのか聞いてみたが友人も交友関係があまり広くなく結果はわからず終いだった。




 校内で見かけることもあったが、何故か顔を見る事が出来ずもどかしかった。しかも、声をかけようにも常に周りに人が居てかけづらい状況だったり、遠くて声をかけれなかったり。それもそれでもどかしい。


 チャンスが到来したのは、ゴールデンウィークが終わった翌日だった。登録はしたもののルールの緩さがゆえほとんど行っていなかった部活に行く。パソコン室に入るとネットサーフィンを始める。規制が多いものの、自分が使いたいサイトはおよそ使えてるので問題は無い。


 自分が使っているの小説サイトに入り、ユーザー名とパスワードを打ち込み書きかけの小説に手を付ける。隣に座った数少ない同い歳の友人も同じく自分と同じ小説サイトに入り作業を始める。定位置は教室後方ドアから離れた場所。1番集中しやすい場所であり、同時に室内の状況を確認しやすい場所でもある。


 集中力が切れた頃、ふと視線を上げると最右列の最前列に彼女が座っている事に気が付いた。パソコンを開くこと無く、何かを考えているかの様に座っている。視線に気付いたのかこちらを見て笑いかける。やっと顔を見れた。凄い美人だ……

その笑顔を見て以来、授業に集中する事も執筆に集中する事も出来なくなった。彼女の笑顔ばかりが頭に浮かぶ。




 再びパソコン室で会った時、部活の帰り際校内用シューズの踵を見て名前を知る。何処かで聞いた事があるような…………


 気になって調べてみると、4年前同姓同名の女の子が丁度初めてその姿を見たところで通り魔に遭って亡くなった様だった。スマホを持たず散歩していたところで襲われ、なんとか学校から連絡しようとしたところでこと切れてしまったようだ。彼女とは関係ない様だが。


 ある時、部活中友達に

「最近ずっとおかしくないか?」

と聞かれ、

「あそこに座っている彼女を好きになっちゃってさ」

と答えた。

「誰が座ってるんだ?」

「****さん」


 途端彼の顔が青ざめ始め、

「お前には何が見えてるんだ?

彼女ならとっくに死んでるんだぞ。4年前通り魔に遭って」

と言われ、一瞬にして喪失感に襲われた。

彼女はもうこの世界には居ない……

死んでいるのか……

ホンモノに会えないのか……

どうやったら、彼女に会えるのか……


 書きかけの小説を保存すること無くパソコンをシャットダウンすると、荷物も持たず自転車も学校に置いてその場所に向かう。これしか会う方法は無いんだな………………









 その場所を1台の車が通り抜ける瞬間、1人の少年は車道へと飛び出した。


 パソコン室に居たはずのその少女は血塗れの顔で不気味に笑いながらこう呟いた。



































 やッタ!!

アタらシいおトもダちガふえタ!!

そこノキみ。わタシのおとモだチニなっテ?






























































「って小説書いてみたんだけど、どう?」


『ちょっと整理させてもろてええ?』


「もち!!」


『えーっと?

恋愛小説に見せかけて、ホラーに持っていくオチなんだよな?』


「YES」


『これ、お笑いのネタとしてどう使うん?』


「どうにかして使うん。そこは、お前に任せるわ」


『難易度の高いクセに、ウケ悪そうなネタばっかり作りやがって』


「スマソ」


『考えちゃ見るけど、たぶん無理やで』


「無理か……

やっぱ、メリーさんを迷子にしましたみたいなやつの方がいいんかな?」


『そりゃそうやろ。ツッコミ入れる隙あるか?

お前が書いたアレ』


「無い」


『だろ?』


「コイツはボツだな。やっぱし、子泣き爺にバックドロップお見舞いした方が良いかな……」


『まさかとは思うが、もう書けてたりしないよな』


「YES!!」


『早く言えやクソ!!』


「スマソ┏( .-. ┏ ) ┓」

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