おまけ 設定集②

ギフト解説 - 2

 今回は宿業ギフトそのものの設定についてです。

 前回のおまけと同様、読まなくても本文を楽しむのに支障はありません。

(なので飛ばしても問題ないです)


 こういうのがお好きな方はどうぞ。



宿業ギフトとは

『魂の形質に応じたその人固有の特殊技能』。

 先代文明末期、迷宮ダンジョンが世に現れて以降、人々に発現し始めた……と、言われている。


 現在ではすべての人間が例外なく、なんらかの宿業ギフトを持って生まれてくる。

 名称と使い方は魂に刻まれており、誰に教わらずとも本人にはわかる。


 ただし、人間の数だけ違う能力があるという訳ではない。

 能力によって多寡が存在し、ありふれた宿業ギフトもあれば珍しい宿業ギフトも。

 故に、稀少度レアリティによってある程度の区分けがされている。


 ちなみに国の管理する戸籍には宿業ギフトを記す欄があり、物心ついて自分の宿業ギフトが理解できた段階で改めて届出をするのが(ほとんどの国において)決まりとなっている。

 これは個人情報管理のためであるが、「希少度レアリティの統計を取る」というのも大きな理由のひとつ。



宿業ギフトの存在が社会に及ぼす影響について

 基本的には「宿業ギフトありきの社会」にはなっていない。

 あらゆる人間に職業選択の自由があり、人々は自分のやりたいこととできることを秤にかけて職業を選ぶ。

 ただ、その「できること」の中に宿業ギフトという要素がある。


 宿業ギフトを活用できる職業に就いた方が実入りはいいため、大半の人はその道を選ぶ。

 が、たとえば『火炎魔術』の宿業ギフトを持っているが火を見るのは嫌い——といったような人が宿業ギフトのせいで不幸にならないよう、最大限に配慮はされている。ほとんどの業務は「適した宿業ギフトを持っていない人間が働くこと」を前提に組まれていたりなど。


 幾つかの例外は、専門職、研究職、自由業(冒険者もこれに含まれる)、など。

(たとえば通貨偽造防止の術式を組むには特定の宿業ギフトを必要とする)

 そういう意味では「社会システムを作る根幹の部分では宿業ギフトありきとなっている」、とは言えるかもしれない。


 また社会通念として「その人がどんな宿業ギフトを持っているか」を無闇に詮索するのはよくないこととされている。

 自分から明かす分にはともかく、明かしていない人に対して尋くのはマナー違反。

 ただし冒険者などは宿業ギフトの種類が生死に直結するため、このタブーが多少ゆるくはある。


 ちなみにこの社会通念は、宿業ギフトによる犯罪を抑止してもいる。隣人がマシンガンを持ってるかもしれない状況では安易に喧嘩は売れなくなる、というような理屈。



宿業ギフト希少度レアリティについて

十人位コモン

 無作為に十人くらい人を集めたら一人は持っている……といった程度の頻度で見られるもの。

 ありふれているからといって使えない訳ではない。むしろ多くの人間が持っているというのは社会において強みでもある。

『収納』『筋力増強』など。


百人位アンコモン

 無作為に百人くらい人を集めたら一人は持っている。

(現代日本でたとえると)学校で三〜四クラスにひとりしかいない、と考えると珍しい感じもするが、人口千人の村にも十人はいる、と言い換えるとそんなに珍しくはない。

『治癒』『霊的感知』など。


千人位レア

 この辺りから、一般社会的には「珍しい宿業ギフト」という認識となる。

 ただ、冒険者の中ではけっこうあり触れているためそんなに珍しがられない。

(冒険者は希少度の高い宿業ギフト持ちが集まりやすい職種のひとつである)

『鷹の目』『纏絲勁てんしけい』など。


万人位ハイレア

 ここから先は「知人にひとりいると話の種になる」レベル。

「あそこの息子さん、万人位ハイレアなんですって」などとマナーのなっていない噂をされたりする。

 そのせいか、自分が選ばれた人間だと勘違いしてしまう人もちらほら。

『隠蔽結界』『魔力増幅』など。


百万位エクスレア

 単位が「1万人にひとり」から一気に「100万人にひとり」に飛んでいることからもわかるように、ここから上は珍しさのレベルが違う。

「100万人にひとり」となってはいるが、実際は100万人集めてもいるかどうか……という感じ。

 ヘヴンデリートのように「迷宮攻略のために希少な宿業ギフト持ちがガンガン集ってくる」ような都市にはちょいちょいいるが、それでも「ちょいちょい」しかいない。

 万人位ハイレアが「自分と同じ宿業ギフトを持っている人間」と出会うことは生きていれば何度かあるかもしれないが、これが百万位エクスレアだと、出会うことはおそらくない。あったら奇跡レベル。

尸童よりまし』『白羽しらは巫女』など。


伝承位レジェンド

『歴史に「かつていた」と記されている』

『存在は確認されている』

『国のあらゆる資料を漁っても見当たらない』

『同時代において世界でひとりしかいない』——。

 そういったレベルの宿業ギフト

朱雪あけゆき』『咒堤賤壊陀羅尼じゅていせんかいだらに』など。


 

◎その他Tips

宿業ギフト希少度レアリティと強さって関係ある?

 あるにはあるが決してイコールではない。

 そもそも「宿業ギフトが戦闘向きかどうか」は希少度に依存しない。戦闘にまったく向かない百万位エクスレア伝承位レジェンドも存在する。また強さといってもいろいろなベクトルがあり、戦い方の相性もあるため、一概に言えない。

(たとえば十人位コモンのレリックと伝承位レジェンドのツバキが戦うと、まずレリックが勝つ)

 ただ、希少な宿業ギフトほど「努力せずともすごいことができる」「できることが多い」のは確かであり、その「すごいこと」「できること」を戦闘に応用するのは比較的容易ではある。


宿業ギフトが遺伝とかはするの?

 しない——と、されている。

 少なくとも作中の歴史上においては確認されたことがない。

 また「類似の宿業ギフトばかりが発現する家系」などもなく、とにかくランダムであるというのが研究者と世間の共通認識である。

 ちなみにグレミアム王国(ヘヴンデリートの所属する国家)の国王が持つ宿業ギフトはありふれた十人位コモンだが、それで王を揶揄する者はいない。


・犯罪に使えそうな宿業ギフトが蔑まれていたりとかはしないの?

 表向きには「そういう差別はあってはならない」という社会認識。

 社会を上手く回すには「犯罪に使えるような宿業ギフトを持っている人間は犯罪をおかす」ではなく「悪いのは宿業ギフトで犯罪行為をするような奴」という価値観の方が都合がよく、これを徹底しておくことで犯罪が未然に防げるという側面もある。

 もちろん、宿業ギフトで故意に人を傷付ける、物品を損壊させるなどの行為は法で固く禁じられている。


 ただやはり「表向きには」であり、そうならないように社会は配慮しているが、とりこぼしはどこにでもあるし、人の感情までは束縛できない。

 地方の田舎に生まれた『隠密』持ちが「盗人の宿業ギフトだ」と蔑まれて都会に出ていき一旗揚げるが、故郷で差別され続けてきたせいでひねくれており結局は犯罪に手を染めてしまう……そんな事例もある。1話に出てきた人の裏話。






————————————————

 明日の更新から第4話が始まります!

 引き続きよろしくお願いいたします。

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