18枚目 超能力=魔法?

 「バレなきゃ犯罪じゃない」とは誰が言ったものか。バレなければ万引をしても殺人をしても無罪なのだ。もちろん普通の人間にはそのようなことは不可能だ。ただし私だけは例外だ。『超能力』。いつからか授けられたこの力を使えば証拠の残らない殺人ができる。パイロキネシス、というのだろうか。熱を自由自在に操る超能力、これを使って気に入らない人間はすべて殺してしまえばいい。どうせ証拠はないのだ、派手に殺そう。


 さて、一体誰を殺してやろうか。まあ時間も余裕もある。ゆっくり探せばいい。と、すれ違った子供達が、

「超能力とか、馬鹿じゃない?」

「いやほんと。わかってないねぇ」

などとふざけたことを言っている。まずはこいつらだ。超能力の存在を身をもって教えてやる。その子供達の周辺だけを熱くする。さらに、もっと。一人が気を失った。二人。一人を残してすべてが倒れ込む。話しかけはせずにその場を離れる。記憶に残さないため。なに、ただの体調不良として片付けられるだろう。


 翌日も同じようなことをした。きっかけはただ肩がぶつかったというだけ。それだけならまだいい。問題はそいつがぶつかってきたにも関わらず暴言を吐き散らしたことだ。こういう馬鹿はいくら死んでも誰も文句は言わない。燃えてしまえ。そいつの服の温度を極限まで上げ、着火する。

「……あ?、、、!?」

 慌てて火を消そうとするが簡単には消えない。火だるまになって転がる。野次馬が取り巻く。いいざまだ。と、なぜか一人子供が寄ってきて、こんなことを言った。

「やけにつまらないことをしますね」

 冷や汗が出そうだった。露見した?なぜ?いや、ありえない。とにかくしらを切る。

「一体何のことだい?まさか今の騒ぎが私のせいだと?」

「私にはあなたがお得意の『超能力』とやらであれを燃やしたように見えましたが?」

 冗談じゃない。なぜこいつが私の『超能力』のことを知っている?なぜ私が火を付けたことに気づいた?焦りが止まらない。

「私はマジシャンじゃないんだ、遠くのものを燃やすことなんてできないよ」

「そう。ならいいです。嘘つきには興味がないので」

 そう言ってその子供は離れていく。冗談じゃない。こいつだけは殺さなければ。私の罪が告発されてしまう。その子供の周りの温度を上げる。……上がらない?

「嘘つきは興味がない。そう言ったはずですが?」

 何故?原因は?確実にあの子供だ。ならどうする?対策は?思考が追いつかない。その子供が再び一歩一歩近づいてくる。近づかれたら確実に何もできなくなる。別の手段。自分の周りの温度を上げ、それを丸ごとその子供にぶつける。

「退屈ですね」無意味。

 他の手段は?……無い。


「被害は4人、死人は0。上等。お疲れ、紗雪さゆき

「相手が馬鹿だったので。まさか同類の存在を考えないとは」

「そんなもんよ」

「それで?長雨ながめは今まで何をしていたんですか?」

「秘密」

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Pro:暴走少女風音さんあなざー! 秋雨 @akisame-autumnrain-

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