おそろい
「綾ちゃん帰った?」
隣の部屋から出てきた姉はニヤニヤと笑っていた。
あ、これからかわれるやつだ。
「うん」
「話丸聞こえだったよー? 特に最後の。まさかうちの苗字をあげるなんてねぇ」
「うっせ」
自室に入るなり扉を勢いよく閉めた。バタンッ! と大きな音が鳴る。
「…………」
こたつの上にはチョコレートの箱。
市販の食べ慣れたやつだけど、今日はバレンタインだから少し特別だ。
「はぁ……」
別に、いつか自分の苗字を綾が名乗るような日が来ればいいのになぁ、なんて叶うかどうかも分からない夢物語が早まっただけだ。
「……しかもペンネームだし」
こたつに足を入れ、チョコをひとつ口に入れた。
頬杖をついて触れた頬は少し熱い気がした。
数年後、無事に小説家としてデビューした彼女が、結婚によって本名とペンネームが同じになってしまった部分があるから、という理由でペンネームを変えたのは、また別の話。
NAME 陰陽由実 @tukisizukusakura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます