一気に最後まで読了できるリーガルストーリーです。
同人界隈には詳しくなくてもサクッと読み進められます。
こんな事はない事が一番ですが、誰しもに起こりうるリアリティあるお話です。何かの折に一助となるかもしれませんので、念の為、御一読をオススメします。
実際、日本人にはこの主人公のようには行動できない人がほとんどではなかろうかと思います。
主人公の行動が勿論正しいのですが、手間暇や敷居の高い法曹関係の手続き、そして、作中悪役の相手からの知ったかイキリなどで萎縮してしまう人が大半でしょう。
作中の悪役の言動からも、過去そういった事で踏み倒せた成功体験が、悪役の現在たらしめてしまったのではないかと類推できてしまう生きたキャラクター性も素晴らしい筆力です。
ここまではあくまで「作品」としてレビュー致しましたが、作中にある通り、現実に起こった事であるのであれば、作者様、本当にお疲れ様でした。作品昇華できたのであれば喜ばしい事ですが、ホームは絵師畑との事ですのでマンガ作品としても昇華できるようお祈りしております。
日常のすぐ近くにある邪悪な陥穽に鳥肌が立ちました。
作者さんは、その悪意に敢然と立つ向うことを決意し、そのドキュメンタリーがこの作品になります。
屈することなく交渉を続ける姿は、まるで孤高のヒーローのようでした。
難しい法律用語や、訴訟に至る手続きを、ユーモアたっぷりな語り口で、分かりやすく書いている姿は、書き手としてお手本になるなぁと感じた次第です。
とはいえ、無礼千万なメールなどを送りつけられた当時は、怒り心頭だったと思います。
「書く」という作業は、それを追体験するということで、咀嚼して整理をつけないと文章が乱れます。克服までの努力に想いを馳せると、じわっと涙がうかびそうになりました。叶うなら当時の作者さんに心からお見舞い申し上げたく存じます。
クリエーターの命である技術料を踏み倒した挙句「少額訴訟でも起こされたらどうですか?」「今回は勉強代と思って諦めて下さい」と嘯く相手が実在していて、小説家としてデビューを控えていることに驚きを隠せません。
でも、泣き寝入りすることなく、キチンと反撃できたラストまで、読み物として成立させた作者さんの手腕に、拍手を送りたいです。
同様のトラブルに巻き込まれて、泣き寝入りした方もおられるでしょう。悔しくて枕を涙で濡らした方もおられると思います。
この作品は、作者さんが身を削って、こうした被害に遭われた方々に送るエールでもあるのだなぁと思いました。
ぜひ、読んで下さい。本当にオススメです。
(後半は「引き」が上手くなってズルいです。一気読み必至ですので、時間を確保してお読みくださいね)
警察モノ、犯罪モノを書いている作家の端くれとして、嫉妬すら感じます。
いつか取材させてください。
作者さんの、ますますのご健筆を祈りつつ。