第拾壱話 加熱した鍋の中で


 終わらない。

 とっくにGWは終わっているというに、第六話『決戦、令和3年大型連休前』にて連休消失ホリデーインパクトを回避した後、延々と連休編が続いている。エンドレスエイトか、あと4回も続けるの無理、どっちかというとうる星の終わらない文化祭の方が親しみ深い、ひぐらしもうみねこももちろん好きです──己の嗜好はさておき。


 まき・・でいきます。


 飽きてきた、面倒臭くなった、そもそもズボラ。理由は数多あれど、一番は記憶がおぼろになってきたため。ぼんやりスマホの写真フォルダを眺めていたら、あんなことこんなこと作ったでしょう状態であり、五月も末が見えてきて、ぞっとする。

 そんなこんなで連休中に鍋で錬成したあれやこれやを忘却せぬうちに紹介してゆく、いざ参らん! 遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ、ネット越しにはどうぞ読んでやってくださいませ(平伏)、我こそはホットクック初心者、出前迅速落書き無用、ひあ・うぃー・ごう~!



〔その1、パスタ〕

 ナポリタン、クリーム、スープ、ペペロンチーノなどなど、ホットクックでも錬成できる。私が挑戦したのはペペロンチーノとトマトパスタ(ちなみにトマトリゾットのトマト缶の残りを使用)。基本的にパスタを半分に折って内鍋に入れ、オリーブオイルを絡め、残る材料を入れてスタートぴ。ナポリタン、クリーム、スープは初期メニューにあるが、他は流用・調整する。

 ペロンチーノはネットを参考に手動設定、トマトパスタは自動調理メニュー【ナポリタン】を流用。パスタを茹でるためであろう、どのメニューも結構水を入れるのだけれど、その水分が消えるマジック。パスタに表示されている時間通りの調理時間だともちゃっと茹で過ぎになる印象。また麺の太さによってゆで時間が違うため、某ファミレスだとライトミールに区分されていながら高難度。不味くはないけれど、実家を出たばかりの大学一年生風味。


〔その2、きんぴら〕

 自動調理メニュー【きんぴら】を活用。〈まぜ技ユニット〉装着、ごぼう、にんじんを細切りにして、調味料を入れてスタートぴ。非常に簡単である──のだが、出来上がりはやや柔い印象。これは【きんぴら】が【煮物】のカテゴリに入っているからだろう。我が家のきんぴらは〝煮る〟ではなく〝炒める〟の手法をとるため、やや好みからずれた。でも、煮るにしても、調理時間35分は長過ぎやしないか(実際はイイ感じの温度になってからの35分だと推測され、もうちょっと長い)。あと産地直売所のごぼう(百円)が部分的に硬く、柔らかいのにごりっごりっという脳の処理が追いつかない食感を味わう。〝炒める〟時間設定短く、何より安物買いの銭失いではないゴボウでの再戦を誓う。


〔その3、クラムチャウダー〕

 自動調理メニュー【クラムチャウダー】を活用。財布のオアシス大好き業務スーパーで購入した冷凍あさりを使用。角切りにしたベーコン、玉ねぎ、じゃがいも、にんじんと、薄力粉大さじ3をビニル袋に入れて振ってシャウト、まんべんなくまぶす。そして残りの材料(あさり、バター、コンソメ、牛乳、塩こしょう)も一緒に内鍋に入れてスタートぴ、であとはホットくクック。今回は調理時間が20分と短いお陰か牛乳の後入れもない。上記の野菜以外に、残っていたキャベツも刻んで芯まで入れたがよく煮えていて美味しかった。作り方も味も処理能力も★★★三つ星、えらい。


〔その4、炒飯〕

 自動調理メニューは無くGoogleにて検索、一番上に出てきたレシピを参考にした。みじん切りした葱、しょうが、椎茸を先に内鍋に入れてからご飯を投入。そして油、鶏ガラスープの素、調味料、溶き卵をかける。〈まぜ技ユニット〉装着、蓋を閉じて【手動で作る】→【炒める】5分設定。この時点では、単なる具入り玉子かけご飯であり、少々不安が募る。しばらくして葱とショウガを炒めた、中華料理っぽい香りが漂ってくる(本当はごま油も入れたところだけれど、アレルギーにより断念)。

 できましたの呼び声に開けてみれば、内鍋に米粒がへばりつき、同心円ドーナツ状に広がっていた。さながらヤムチャが倒されたシーンのように(「ヤムチャ 死亡」で画像検索するとわさわさ出てくるのでぜひ照覧あれ)。

 おそるおそるしゃもじで掻き混ぜてみれば、ご飯はぱらついており、なるほど、味も見掛けもちゃんと炒飯ぼい。まあまあまあ、成功なのだろう。

 なれど、というか、やはり、というべきか。ステンレス内鍋に米粒は貼り付き、重曹の力を借りることとなった。



〔その5、手羽先と大根の煮物〕

 猫が骨をかっさらう恐れがあったので手羽先は敬遠していたが、安かったのでつい購入。古い大根が残っていたので合わせて煮物を錬成する。

 自動調理メニュー【鶏と大根の煮物】があったが、【チキンと野菜のカレー】を選択した方が美味しいとのブログを発見、追従する。〈まぜ技ユニット〉装着、肉を底にして全部の材料を投入、ホットくクックで65分。長いけれどホットけるのならば、苦はなし。

 大根の煮物は炊飯器でよく調理していたが、手羽先を入れるのは初めてだった。実のところ、手羽先には期待していなかった、前に炊飯器調理神に言われてもスルーしていた。子供の頃は〝骨付き肉〟というだけでテンション上がって手をべったべたにして喜んでいたけれど私はもう大人。『はじめ人間』たちの骨付きマンガ肉に憧れていたのはもう遠い過去。骨なぞ、猫に獲られて大捕物が始まるだけ・・・・・・と思っていた頃が私にもありました。

 箸で簡単に骨から外れる身はしっとりほろほろ甘辛味がしみしみ、大根は透き通るべっこう色。鶏肉が驚くほど柔らかく、臭み無く、ごはんがすすむ。無水キーマカレーを抜いて私的ホットクック錬成暫定一位へ躍り出た。


〔その6、スコーン〕

 ホットケーキミックス200グラムに、バター20~30グラム(本当は50グラム入れたいがいつも臆病風に吹かれる)、牛乳orヨーグルト50グラム、ティーバックの茶葉や冷凍ブルーベリー、ジャムを練り込むこともしばしば。全部をひとまとめにして6~8等分、キッチンペーパーを敷いた内鍋に並べる。自動調理メニュー【野菜ジュースケーキ】を選び、スタートぴで45分。これで出来上がりでも良いけれど、増殖したクリーチャーじみているので、キッチンペーパーごとトースターへGO。焦げ目をつけて完成。片手で食べれる炭水化物は半日も経たず消えるのだった。


 

 『・・・・・・すべては坂水のシナリオ通り。』


 『第六話 決戦、令和3年大型連休前』の締め括りの一文である。そして第七話の冒頭では、『4話連続連休編、開幕──』とか書いている。今回で5話目だし。今までは慣らし期間、ホットクックをオチなしで使い倒すとかも書いているが・・・・・・うん、オチてるな、結構。

 さもありなん。私は十万字越えでもプロットは書かない派(書けない派)である。元からシナリオは、ない。ないものの通り・・にはできない。

 そも、果たして人生という物語にシナリオなどありえるだろうか。加熱した鍋の中で、食材に何が起きてるかは開けてみなければわからない。誰もが知り得ぬ未来を切り拓く冒険者。もちろん、今夜の夕飯も白紙、ノープランだ。

 ホットクックを迎えて一か月、便利だし楽しいし探究心が湧き出でる。何より書けない私を書く気にさせてくれたのだから、感謝の念は尽きない。

 それはそれとして、今晩は誰かピザでも買ってきてくれないかな〜と、堕落した心の中で願っている。

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