先に地獄で待ってるね
「裕二、くっつかないでよ!ちょっと暑苦しいよ!」
利香の葬儀、そして四十九日が過ぎた頃から私、加奈は裕二の家に居候になりはじめた。
裕二は暑い日でも私の側にくっついてくる。
本当は裕二の温もりが嬉しかった。
でも、はずかしくてそんな事は絶対に言えない。
私がお風呂に入っていたら、
「背中ながそうか?」
なんてきいてきた。
私は心の準備ができていない。
「はずかしくてダメ!」
でも、お風呂あがりにリビングで裕二はくっついてくる。
本当に裕二は子供みたいだ。
でも、こんな裕二が大好き。
裕二と利香の子供達、日向ちゃんと陽太君にはすぐ懐かれた。
二人には利香がずっと私の事を“キューピット”だと言っていたらしい。
少し乱暴なキューピットでビックリされない様にしなきゃね。
一人で暮らしていた時、ラジオでながれた曲
“人は何も持たずに生まれ、
何も持たずに去って行く、
それでも愛と出逢う”
というたった3行の詩に
「私はいつまでたっても愛に出逢えないじゃない?」
とツッコミを入れていた。
でも、今は愛をココに感じる事ができる。
私の周りには大切な家族が居る。
今は一人の寂しい私じゃない。
私は今、幸せだ。
これ以上のモノは何も要らない。
裕二は優しかった。
毎日私の事を気遣ってくれるし、心の支えになってくれている。
でも、私の幸せは手のひらですくった水みたいに、こぼれ落ちていく。
居候生活も3年が過ぎた頃、私の肝臓がパンクした。
長年の投薬で私は肝硬変になってしまった。
身体が鉛の様に重い。
黄疸もでている。
私は入院したが、治るみこみはなかった。
病室で裕二に2度目のお別れを言おう。
「裕二?今まで私を支えてくれてありがとう。あの石段での裕二の背中、とっても温っかかったよ。もう一度と思ったけど、利香が許してくれないかな・・・」
「裕二、愛してる。私は先に地獄に行くけど、絶対迎えに来て!迎えに来てくれなきゃ許さないから!」
「生まれ代わったら・・・ また、利香と裕二を取りあうんだろうな。でも今度は私の方が沢山、裕二と一緒に居るんだから・・・」
「裕二、先に地獄で待ってるね!」
先に地獄で待ってるね アオヤ @aoyashou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます