加奈の夢日記

私が膵臓の摘出手術をしてからもう二十年になる。

幸いな事にガンの再発は今まで無く、命を永らえている。

食べていくために仕事は選ばずに何でもやった。

飲み屋で働いたりもした。

でも、薬を大量に飲んでる私は酒を飲む事ができない。

飲み屋でお酒を勧められて、結局すぐに辞めてしまった。

その後掃除、レジ打ち、配送等なんでもやった。

そんな仕事の合間に夢だった絵本を書いて過ごしていた。

二十五歳の時、書いた作品が大賞を取る事が出来た事で私の名前を知ってもらえ、細々と仕事としてやっていける様になった。

一度は死んだも同然の私だが、絵本が子供達の夢に繋がってると思うと嬉しくなる。

私は動物の子育てモノが好きでカッコウやペンギンが好きだ。

読者からの感想が届くとその日は眠れない程

嬉しい。


数人に結婚の話しを持ちかけられた事もある。

でも私のお腹のキズを見せたり、投薬の事、子供がつくれない事を話すとすぅっと居なくなった。

「あ〜あ!私には白馬に乗った王子様は居ないの?」

なんて思っていたけど・・・

虚しくなるので考える事を止めた。


今日は月一の通院日だ。

身体はだるいけど・・・

仕方ない、行くか!


病院では診察よりも待つ時間がほとんど・・・

ようやく診察を終えて、薬を貰いに待合室でうたた寝する程待っていた。

順番が来て立ち上がると、見たことの有る男の顔が・・

その男と私は目があってしまった。


「加奈?加奈なのか?」

「生きていたんだ・・・」

男からは大粒の涙が流れ落ちた。


「えっ?もしかして裕二?」

「なんでこんな所に居るの?」


裕二は私を見て

「加奈、お願いだから一緒についてきて!」

「今ついてきてくれないと加奈はたぶん後悔する事になると思うから!」

私は裕二に手を引かれ病室に入って行った。

そこには痩せてガリガリになった女の人がベッドに横たわってチューブ類を繋がれていた。

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