俺の幸福の時間

加奈がな亡くなった知らせを受けてから約五年の歳月がながれた。

俺と利香は高章寺に来ている。

「ねぇ〜ユウ君、何お祈りしたの?」

「加奈に俺と利香ちゃんが結婚した事の報告。それから・・・」

「それから?」

「利香ちゃんが幸せになります様に。」

利香は微笑んではずかしそうに下を向いた。

「利香ちゃんは?」

「私?私は・・・私は秘密だよ!はずかしいから。」

「エッ?俺だって教えたんだから・・・ 教えてよ!」

「このお寺には“子授かり祈願”があるんだって。」

「結婚したんだし、赤ちゃんほしいな。」

「男の子でも女っ子、どちらでもいいから夏の太陽みたいな子供がほしい!名前は男でも女でも日向❲ヒナタ)でね。こんな事はずかしくて言えないよ。」

俺は利香の事、人目を憚らずギュッとしてしまった。


俺達は加奈との約束を守る為に霊場に向かい、加奈の卒塔婆をおさめた。

空は秋の彼岸晴れで抜けるような青さだった。

此処はあの世に近い場所なんだよな。

いつかは俺も・・・


「痛い!足挫いちゃた!」

利香の叫びにビクッとした。

なんかデジャヴュみたいだけれど・・・


「足が腫れてきてるから・・・ 俺がおぶって石段降りるよ!」


「お姫様だっこがいいな・・・」

やっぱりデジャヴだ。


「ほら、冗談言ってないで・・・」

利香は加奈より軽かった。

あの時は暗かったし、涙で前が見えにくかったのを思い出した。

でも、今日は晴ればれした気分だ。


「ネェ~? 加奈にもおんぶして階段おりたんでしょ?」


「どうだったかな・・・?覚えてないや!でも、こんな“幸せな時間が続けばいいな”と思うよ。」

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