第17話 「やっぱり、わたしのことが忘れられないのね。有起哉は」

 放課後。

 ホームルームが終わり、クラスメイトらが次々と教室を出ていく中、僕はスマホを見た。SNSの新着が届いていたからだ。

「駅前のミックで待ってますね」

 琴葉のメッセージは三十分前くらい。どうも、中学校は早く終わったらしく、ずっと待っているようだ。ちなみにミックとは、ハンバーガーやフライドポテトを出すファーストフード店だ。

「まさか、来ないなんてことはないですよね?」

「こっちは先輩の居所、ちゃんとわかってるんですよ」

「変なところに行ったら、すぐに電話します」

 続くメッセージは完全に警告みたいなものだ。追跡アプリは入れられているし。

 僕はため息をつくと、スマホをしまう。まあ、今は学校にいるのだし、怪しまれることはないだろう。まあ、長くいれば、電話が鳴りそうだが。

「とりあえず、ミックに行くか」

「有起哉はこの後、琴葉と会うのかしら?」

 不意に声をかけられたので、振り返れば、琴海が学校の鞄を提げて、目の前に立っていた。

「琴海は、今日は生徒会とかは?」

「今日は特にないから、真っすぐ帰ろうと思うのだけれど」

「そうなんだ」

「その、有起哉がよければ、途中まで一緒に帰ろうと思うのだけれど」

「僕と?」

「ええ」

 琴海の返事に、僕は戸惑ってしまう。振られた幼馴染と帰るなんて、何だか奇妙に感じてしまう。まあ、学校では二人で話すことはあるのだけれど。

「まあ、琴海がそう言うなら」

「あまり、嬉しそうじゃないわね」

「まあ、ほらさ」

 僕は言葉を漏らした後、声を潜ませる。

「未だにその、好きとはいえ、一度は振られてるから、何かね」

「気にしてるのね」

「いや、それは」

 僕は強く言おうとして、今いる場所が教室でクラスメイトらがまだ残っている状況に気づく。周りにバレたくない思いは未だに残っていた。

「その、何でもない」

「逆に思うのだけれど」

「何?」

「有起哉はどうして、こういうわたしのことを未だに好きなのか、疑問に思うのだけれど」

 問いかけてきた琴海に対して。

 僕は答えに窮してしまい、ただ、頬を指で掻き、目を逸らすしかなかった。

 琴海はすぐに返事をもらえないとわかったのか、手を一回叩いた。話は終わりという合図みたいに。

「とりあえず、帰りましょう。琴葉も遅くなれば、有起哉のことを怪しむかもしれないわね」

「いや、けど、今思ったんだけど、もし、琴葉が僕と琴海がいるところを見たりしたら」

「そうね。その時はたまたま一緒に帰ってるだけと言えばいい話だと思うから」

「いや、それだけだと、琴葉が納得できるように思えないし」

「それなら、今日はわたし、ひとりで帰った方がいいということね」

 琴海は声をこぼすと、僕を置いて、教室を立ち去ろうとする。

 で、僕は慌てて学校の鞄を肩に提げ、座っていた席を離れた。

「琴海。や、やっぱり、その、途中まで帰ろう」

「やっぱり、わたしのことが忘れられないのね。有起哉は」

「まあ、それは……」

 僕は言いつつ、琴海の隣につく。

 結局、僕は琴海とともに教室を出ると、途中まで一緒に帰ることとなった。

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