第三回 祈年祭、そして酒(連作)
今回は『酒』をテーマに、藤原家・家庭内
の短いお話しを集めた連作になっております。
神社のお話しは、『祈年祭』を描きましたシ
ーン①~⑲(35~41頁)までのみです。シー
ン㉔(42頁)以降は、酔っぱらいの醜態を描
いたものがあります。
酔っぱらいの醜態が苦手な方、酔っぱらい
自体がお嫌いな方は、シーン㊿(54頁)以降、
第四回『さらに、酒』をお楽しみください。
酔いどれを笑い飛ばせる方は、どうぞ、い
らっしゃいませ。藤原家が全力を挙げて、お
届けいたします。
佐久良 燎
──────────────────────
① 四条大橋(深夜)
春の嵐。橋を叩きつけている大雨。
雷光に浮き上がる欄干。雷鳴、近い。
② 藤之宮神社・境内(深夜)
雷光に浮かび上がる常夜灯。叩きつけ
ている雨。
③ 同・斎館の中(深夜)
SE、落雷の大きな音。
寝床から、がばっと起き上がる
同、
同、
同、
④ 同・斎館の前(深夜)
斎館の玄関の中。戸を開けて耳を澄ま
し、様子を伺っている慶之、壽生、仁
之、真之。
ゆづきの声「(大声で)おーい!」
⑤ 同・山本家の前(深夜)
雷光に浮かび上がるゆりなとゆづき。
点いている山本家の門灯と室内照明。
ゆりな、ゆづきに寄り添って傘を差し
かけている。二人、パジャマ姿。ゆづ
き、懐中電灯を回しながら、
ゆづき「(大声で)藤原も、大丈夫だってー
ッ!」
雷鳴。驚くゆりなとゆづき。
⑥ 同・斎館の前(深夜)
見合って斎館の中に戻っていく慶之達
をPUNして、閉まる戸が雷光に浮かび
上がっている。その横、雷光に浮かび
上がる看板『斎館』。雷鳴。
慶之のN「(重く)
⑦ 同・斎館の廊下(深夜)
点いている照明。慶之を先頭に歩いて
──────────────────────
行く壽生、仁之、真之のそれぞれの足
元(白足袋)。
四人の後ろ姿にタイトルが重なって、
T『
『斎館』のTより小さなポイントで。
T『神事潔斎のため、神職などが
する
慶之のN「(重く)斎館とは、
我々神職が
仁之が着ている白衣のUPからT.Bして、
開け放たれた襖の前に仁之と真之。慶
之と壽生に一礼する。
慶之のN「この潔斎は、日々
行なう
慶之を前にして歩いていく壽生(後ろ
姿)にタイトルが重なって。
T『
『斎戒』より小さなポイントで。
T『
を改め、飲食や外出を慎んで身心を
清めること』
慶之のN「
し、衣服を改め、食事や外出を慎んで身心
を清める事で」
開け放たれた襖の前に壽生。慶之に一
礼している。
慶之のN「要するに祭祀に向けて、ここ斎館
の中で、生活全てを『つつしむ』という事
じゃ」
歩いて行く慶之(後ろ姿)。
⑧ 同・斎館の床の間(深夜)
襖を閉める慶之。薄暗い室内。
慶之のN「ん? 先程から誰も何も喋らんと
な。あァ、セリフが抜けとる訳ではないぞ」
真っ白い掛け敷布団の中に慶之。枕元
の行灯照明を消して、
慶之のN「私語厳禁じゃからじゃ」
真っ暗になった室内に大きく白文字で、
T『
──────────────────────
⑨ 藤原家・玄関(深夜)
受話器を置く将之(手)。点いている
照明。
⑪ 同・一階座敷A(深夜)
点いている照明。食卓の傍に座ってい
る潮と
の肩に半纏。信之、しっかりと潮を抱
き締めている。遠くに消防車の鐘。
潮 「(はっとして)どこかしら」
SE、階段を下りて来る音。
襖を開けて入って来る将之。その後ろ
に続く敦之と和之。全員、寝間着浴衣
姿。
将之「お
和之「裏も燃えてねェし、ここらじゃねェみ
たい」
敦之「避雷針に落ちたンならいいな」
SE、大きな雷鳴。叩きつける雨の音。
ヒッと身を竦める潮。潮を抱き締める
腕に力を込める信之。ビクッと驚く将
之、敦之。ちらちらする室内照明。
和之「(雷鳴に驚いて)おわッ!」
信之の腕の中の潮。恐る恐る顔を(テ
ラス窓に)向けて、
潮 「(不安気に)明日……」
一同、雨戸の閉まっているテラス窓を
見ている。テラス窓にT.Uして、
⑫ 藤之宮神社・境内(深夜→朝)
潮 「(OFF)本当に晴れるかしら……」
雷光に浮かび上がる常夜灯。叩きつけ
ている雨。F.O。
F.Iして雨上がりの朝。T.Bして拝殿下
手側の藤の木(開花前)。雨露が朝日
にキラキラ輝いている。その一葉に滴。
映り込んでいる朝日が眩しい。
⑬ 同・斎館の前(朝)
戸が開く。と、立っている
──────────────────────
之。赤
慶之を先頭に出て来る壽生、仁之、真
之。皆、正服。慶之以外は紺
の冠。皆、手に笏を持ち、足元は
仁之、結い上げた髪を全て冠の中に納
めている。
──やや俯瞰になっていき乍ら、
拝殿上手に向かって石畳を歩いて行く
慶之達(後ろ姿)をゆっくりT.Bして、
拝殿全景。社務所前に数人の観光客。
慶之達を見ている。
タイトル、中央に大きく縦書きで、
T『
慶之のN「(重く)祈年祭」
⑭ 同・拝殿の中(朝)
SE、雅楽の調べ(シーン⑮迄)。
康之を先頭に、拝殿上手より昇殿して
来る壽生、仁之、真之。
慶之から順に、座についていく一同。
康之のN「(重く)祈年祭とは、今年の五穀
豊穣を祈る
拝殿上手と下手、向かい合わせに座っ
ている神社総代、神社役員、婦人会の
面々。洋装は略礼装、和装は正礼装。
起立して、低頭する。と、それに
を静かに左・右・左と振る仁之。
康之のN「(重く)
神社における三
本殿に一拝する慶之。
康之のN「(重く)多くは二月十七日に行な
われているが、我が藤之宮神社では、春の
彼岸──種まきに合わせて」
春日造の本殿(第一~第四殿)を前に
して祝詞を奏上している慶之(後ろ姿)。
それをゆっくりとT.Bしていって、
──────────────────────
⑮ 同・境内(朝)
シーン⑭からのT.B、拝殿全景。
──徐々に俯瞰になって。
本殿に向かって起立、低頭している神
社総代、神社役員、婦人会の面々。
康之のN「毎年三月に行なっておるのじゃ」
雨に洗われて美しい境内。拝殿の前に
数人の拝観者。厳かに神事を見ている。
⑯ 同・拝殿の中
M『神楽 浦安の舞(
境内から(本殿の中を)見ている拝観
者達。その歓声。紅顔して溜息をつく
者、写真を撮る者様々。
× × ×
神前、『神楽 浦安の舞(当曲)』を
奉納しているゆりなとゆづき。共に、
本装束。扇舞。
拝殿下手に信之(神楽笛)、和之(和
之)、将之(楽太鼓)、敦之(楽筝)。
皆、白地の狩衣に浅葱色の差袴、
た髪を全て烏帽子の中に納めている。
詠唱している壽生、仁之、真之。
詠唱し乍ら楽太鼓を叩いている将之を
真ん中にして、将之の左手側に千歳
(鞨鼓)、右手側に雅美(鉦鼓)。二
人、白衣・白袴姿。膝に掌を重ねて、
ぽーっと(浦安の舞を)見ている。
美しい扇舞のゆりなとゆづき。
⑰ 同・座敷C
聞こえている『浦安の舞(当曲)』。
平机にずらっと並んでいる直会の紙袋
(Mサイズ程度・社紋『下り藤』入り)。
その手前にぶすっとした顔のゆいか、
座り乍らFr.in。
ゆいか「(ぶすっと)ここ、つまんない!」
平机の端に正座しているゆいか。白衣
緋袴姿、
──────────────────────
いる。
ゆきえ「
のは、あなたでしょう」
と、去る着物姿のゆきえがFr.OUT。
挿入映像(吹き出し型)C.I。必死の形
相でじゃんけんしているゆりな、ゆづ
き、ゆいか。あいこが続いている。
ゆいかの傍に潮と明日香。明日香、ゆ
いかと同じ巫女装束。潮、白衣に茄子
紺色の
べ乍ら、
潮 「(苦笑してゆいかに)いつもお手伝い
ありがとうね」
⑱ 同・拝殿の中
神前、『神楽 浦安の舞(当曲)』を
奉納しているゆりなとゆづき。美しい
鈴舞。
掲げられた神楽鈴。清らかな鈴の音、
楽奏と共に透過光最大になって、F.O。
× × ×
F.Iして静かな神前。誰もいない。
康之のN「ではここで、今回の用語解説じゃ」
⑲ 同・拝殿の中(回想・朝)
SE、雅楽の調べ。
神饌を供している壽生、仁之、真之に
タイトルが重なって、
T『
『神饌』のTより小さなポイントで。
T『
酒、餅、魚、鳥、
水など』
T『大辞林第三版(三省堂)より抜粋』
康之のN「
事と思うてよいわ。要するに、神様にお供
えする食べ物の総称で」
壽生、仁之、真之の供している
神饌をそれぞれ映し乍ら、
──────────────────────
慶之のN「今は季節ではないが稲、米、酒、
餅、魚、鳥、
と思うがな、『食べられる植物』の総称で、
キノコも含まれる。ん? キノコは菌類で
あって、野菜ではないぞ。
ん。それと果物、塩、水など。他には『の
しあわび』や米で作ったお菓子の『ぶと』
や『まがり』も含まれる」
拝殿に並んだ神饌。順に映していって、
康之のN「海の恵み、山の恵み。我々が生き
ていくのに必要な、水と塩。そしてコメ。
今ではお金を出せばモノが得られる社会と
なったが、春に植えて、秋には収穫できる
米作りは、
幹産業なのじゃぞ。神饌も、コメに関わる
品が多いのはそれが理由じゃ」
米、餅、酒を映していって、酒の前で
ぴたりと止まる。
康之のN「おォ、そうじゃったな。この
この酒に関わるお話しじゃったな。(F.O
し乍ら聞き返して)なに? これでワシの
出番は仕舞いじゃと? それは納得いかん
! マイクは渡さんぞッ!」
⑳ タイトル画面
T『酒(連作)』
T『その一 父と長男』
㉑ 藤原家・一階座敷A(夜)
畳の本間六畳。
大きな円卓を囲んでいる一家。着座、
第一話シーン②同様。ネクタイを外
したワイシャツ姿の将之、敦之、和
之。他、春らしい私服。潮、エプロ
ン姿。皆、食べ終えてている。一同、
手を合わせて(食後感謝)、
将之「……神のめぐみを思へ世の人」
一同「ごちそうさま(と、頭を下げる)」
食器を重ねて、片づけ始める一同。
──────────────────────
将之の声「敦之」
敦之「(将之に)はい」
将之「つきあえ」
㉒ 同・一階座敷C(夜)
見えている前庭。
敦之「(OFF)はい」
銚子を差し出す将之(手元)。
将之の声「どうだ」
盃に左手を添えて、銚子の酒を受けて
いる敦之、
敦之「はい」
床の間。障子とガラス引き戸が開けら
れた縁側に将之と敦之。共に、座布団
に
晩酌をしている。見えている前庭。
将之、盆に銚子を置いて、
将之「そうか」
敦之「はい」
と、静かに酒を飲む。
将之の盃に酒を注ぐ敦之。二人の間を
T.Uする。と、開け放たれた襖の外
(廊下)に仁之。風呂上がりで寝間着
浴衣姿。
㉓ 同・一階廊下(夜)
座敷Cを見ていた仁之、廊下に向き直
る。と、
仁之のM「(頭を
ンのか解んねェ……『山』っつったら『川』、
ってのと
片手を腰に、反対側で頭を掻いて歩い
て歩いて行く仁之(後ろ姿)。
㉔ タイトル画面
T『その二 三男と五男』
㉕ 藤原家・一階台所(夜)
テーブルに潮。一人でお茶を飲んでい
る。
──────────────────────
㉖ 同・一階廊下(夜)
開け放たれたガラス障子から、お茶を
飲んでいる潮が見えている。風呂上が
りで寝間着浴衣姿の真之、Fr.inして、
潮 「(気づいて)あ、ナオ」
㉗ 同・一階台所(夜)
廊下の真之。立ち止まって、
真之「(潮に明るく)なに?」
潮 「仁之が飲んでるの、下げてきてくれる
?」
息を飲んで、驚愕の顔で固まっている
真之。
真之「(思いっきり不満気に)えぇぇええぇ
え~ッ!?」
潮、大迫力で、
潮 「(睨みつけて)あたしだって、台所片
づけてお風呂入りたいのよ。毎日、あなた
達よりも早く起きてるのよ。(人が変わっ
てきて)一分一秒でも、早く寝たいのよ。
男五人の子育てが、どんだけ気狂いの毎日
だったか解ってンの? (完全に人が変わ
って)それが大人になったっつー事は、こ
ちとらだって歳とったつー事なンだよ。い
つまでも若かねーンだよ」
㉘ 同・一階廊下(夜)
真之「(青褪めて踵を返して)……はい」
潮 「(機嫌良く可愛らしく)ありがとね
(と、お茶を飲む)」
㉙ 同・一階座敷C(夜)
開け放たれている襖。その陰から慎重
に顔を覗かせる真之。
㉚ 同・一階廊下(夜)
襖の陰に真之(後ろ姿)。中を覗いて
いる。見えている座敷C。消えている
室内照明。寝間着浴衣姿の仁之。座敷
と縁側の境に座って、足を延ばし柱を
──────────────────────
背にして眠っている。尻に座布団。月
光に照らされて、大変色っぽい。見え
ている前庭。
真之のM「(ほっとして)あ、寝てる」
㉛ 同・一階座敷C(夜)
膝をついている真之、静かに晩酌の盆
を下げようとする。と、
ふと気づく真之。
柱に背を預けている仁之。薄っすらと
目を開けて、(真之を)見下ろしてい
る。酔っぱらって艶のある瞳。
真之のM「(絶叫して)ヤバいッ!」
両手で優しく真之の頬を包んでいる仁
之。目を閉じて、真之に口づけしてい
る。驚愕の顔の真之。
仁之、口を少し開き乍ら、ゆっくりと
顎を押し上げる。
瞠って息を飲む真之。
㉜ 同・表(夜→朝)
温かな門灯に照らされている表札『藤
原』。簡素な生垣の中に見えている座
敷Aの灯り。
SE、『ばきッ』と殴りつける音。
明けて、翌朝。
SE、朝拝の太鼓の音。
将之・敦之・和之の声「(口々に)いってき
ます」
潮の声「いってらっしゃーい」
スーツ姿の将之、敦之、和之。三人、
気づいて、
敦之「仁之?」
和之「どうしたよ、その顔」
境内から歩いて来た仁之、真之、信之。
T『神職は、朝拝のあとに朝食です』
三人、神職姿。将之達の前で立ち止ま
る。仁之、腫れた左頬に掌を当てて、
仁之「(頭を捻って)解ンね。朝起きたら腫
れてた」
──────────────────────
真之「(不機嫌に)いってらっしゃい」
と、ぷいっと玄関に入って行く。信之、
続いて、
信之「(笑顔で将之達に)お気をつけて」
㉝ 同・玄関(朝)
表に将之、敦之、和之、仁之。
敦之「(玄関に)おう……」
和之「(仁之に)なに、お前ら、朝っぱらか
ら喧嘩かよ」
と、四人の手前、玄関の戸が閉まって
行く。
仁之「してねーよ」
将之「仁之」
仁之「はい」
将之「暇をみて、病院に行かせて貰え」
仁之「はい」
玄関の戸、完全に閉まる。
仁之の声「いってらっしゃい」
将之・敦之・和之の声「(口々に)いってき
ます」
㉞ 同・表(朝)
将之達を見送っている仁之。左手の頬
に掌を当てたまま、溜息をつく。
仁之、玄関を向く。と、
玄関の戸を少し開けて、その隙間から
じっと(仁之を)睨んでいる真之。
真之、仁之の鼻先でぴしゃッと戸を閉
める。
仁之「なッ!」
仁之、戸に両手をかけて開けようとし
乍ら、
仁之「てめェッ! 朝っぱらからどーゆーつ
もりだッ! さてはほっぺた腫れてンのも
お
郎ッ!」
㉟ 同・玄関(朝)
真之、戸をしっかりと押さえて、
──────────────────────
真之「説明なんか必要ないねッ! 思い出し
たくもないし、思い出して欲しくもないし
ッ!」
仁之の声「なンだとォッ!」
㊱ 同・表(朝)
片袖を捲り上げて、玄関の戸をガンガ
ン蹴りつけている仁之。徐々に俯瞰に
なっていって、
仁之「開けやがれッ! こンちくしょうッ!」
ばっと座敷Bのテラス窓(縁側)を開
ける潮。厳しい顔。
──俯瞰で。
潮 「仁之! 玄関壊さないでッ! ナオも
玄関開けなさいッ!」
真之の声「
潮 「二人共! さっさと朝ご飯、食べちゃ
って!」
㊲ タイトル画面
T『その三 父と四男』
㊳ 藤原家・一階座敷A(夜)
夕食の後。食卓の食器を重ねて片づけ
ている一同。
将之の声「
信之「はい」
ネクタイを外したワイシャツ姿の将之。
立ち上がって、
将之「つきあえ」
㊴ 同・一階座敷C(夜)
見えている前庭。
信之「(OFF)はい」
床の間。寝間着浴衣姿の二人。盃に
左手を添えている信之。銚子(将之)
からの酒を受けている。並んで庭を
向いている将之と信之(後ろ姿)。
将之、座布団に
に正座。見えている前庭。
──────────────────────
信之「(平静に)いただきます」
信之、かるく一礼して、静かに酒
を飲む。
将之「ん」
と、銚子を盆に置く。
信之、銚子に左手を添えて、
信之「どうぞ(と、銚子を差し出す)」
将之「ん(と、盃を差し出す)」
将之の盃に酒を注いでいる信之。
二人の間をT.Uする。と、開け放たれ
た襖の外(廊下)に敦之と和之。共に
風呂上がりで、寝間着浴衣姿。じっと
(中を)を見ている。
㊵ 同・一階廊下(夜)
見えている座敷C。並んで庭を向いて、
静かに差し合っている将之と信之(後
ろ姿)。T.Bして、手前に敦之と和之。
座敷Cを見ている。
敦之「……まるで、会話の続かない接待を見
ている様だ」
和之「つまんねー酒」
と、廊下に向き直る。
㊶ タイトル画面
T『その四 長男と四男と五男』
㊷ 藤原家・一階台所(夜)
テーブルに潮と真之。潮はエプロン姿。
真之、風呂上がりで寝間着浴衣姿。潮
はお茶、真之はコップ酒を飲んでいる。
L字に座っている二人。テーブル上に
一升瓶。
敦之の声「(酔って)ただいま」
潮・真之「お帰りなさい」
潮、ふと(廊下を)見る。
開け放たれたガラス障子の先に廊下。
点いている廊下の照明。人の気配は無
い。
潮の声「敦之……?」
──────────────────────
潮、真之を見る。と、目が合ってギク
ッとする真之。間髪入れずに、
真之「
潮 「まだ
真之「僕に行けって言うつもりだったでしょ
ッ!」
潮 「そんな
優しく微笑む潮。フレームに艶やかに
糸菊が咲き誇って、
潮 「(優しくにっこりと)真之。敦之お兄
ちゃんの様子、見てきてくれる?」
画面、元に戻って、
真之「(顔を背けて)
『真之』って呼ぶ時は、叱る時か嫌な用事
の時って決まってるしッ!」
潮 「(人が変わって)あァ、そうかい」
と、立ち上がる。
真之の眼前に潮。潮、人差し指で真之
の顎をギリギリと押し上げて、
潮 「(凄んで)何かい。この
年長者の、しかも女のあたしに、32の男を
担げってか? ん?」
真之「(
らいの相手は
ガラス障子の外(廊下)に信之。風呂
上がりで寝間着浴衣姿。
信之「(潮に)私がやります」
潮、真之に凄んだ姿勢のまま、
潮 「(信之に)あ! 信之」
真之「(ほっとして小声で)助かった」
潮 「(優しくにっこりと)真之(と、真之
の鼻にちょんッと人差し指を置いて)。信
之お兄ちゃんを」
㊸ 同・玄関(夜)
潮 「(OFF)手伝ってあげてね」
上り口に座っている真之と敦之。敦之、
スーツ姿。真之、酔っぱらって目を瞑
っている敦之の背中を支えている。
真之「(不満気に)……」
──────────────────────
上り口に屈んている信之。敦之の靴を
脱がし終える。と、
信之「敦之兄さん、起きて下さい。歩いて貰
います」
と、思いっきり敦之の頬を打つ。パン
ッといい音。敦之、打たれた勢いで右
手側を向く。
真之「(信之の所業に驚いて)!?」
敦之「(
信之、敦之を前のめりにして、
信之「(真之に)酔っぱらって脱力してるか
ら重たいよ。気をつけてね」
真之「うん……」
真之、敦之の右腕を首に回す。と、ふ
と気づく真之。
薄っすらと目を開けて、(真之を)見
ている敦之。酔っぱらって艶のある瞳。
真之のM「(絶叫して)ちょっと! なんで
そんな目で見てるわけェッ!?」
SE、床にドタッと倒れる重たい音。
床倒れている真之の上に敦之。敦之、
真之に覆い被さっている。その足元に
絶句の信之。四つん這いで二人を見て
いる。
真之の首筋に吸いついている敦之と、
驚愕の顔の真之。
敦之、唇を離す。と、そのまま舌先で
真之の首筋を這い上がっていく。
真之「(瞠って息を飲んで)ひィッ!」
敦之、真之の
㊹ 藤之宮神社・境内(夜→朝)
──やや仰角で。
本殿前。点いている常夜灯。
遠くに「ひぃいぃいいぃぃいいーッ!」
と、か細く長い真之の叫び声。
明けて、明朝。
SE、朝拝の太鼓の音。暫くして、
慶之「(OFF)さて今日は土曜日、良いお天
気じゃ」
──────────────────────
㊺ 同・座敷B(朝)
慶之「桜も咲き始めて、観光客の皆さんも、
ここ藤之宮神社まで足を延ばして下さるで
あろう。今日一日、宜しく頼むぞ」
上座にひとり慶之。その慶之と向かい
合って座っている仁之、真之、信之。
その後ろに将之、敦之、和之(六人、
後ろ姿)。慶之の右手側、壁を背にし
て座っている壽生。皆、神職姿。慶之
以外の一同、
一同「はい」
慶之「では他に、申し送りのある者はおるか」
真之「(真剣に)はい(と、手を上げる)」
上座に座り直す真之。真剣な顔。
真之(横顔)の右手側、壁を背にして
座っている慶之(上座側)と壽生。真
之、向かい合っている他一同に、
真之「(真剣に)今後、僕にちゅうするのは
止めて下さい」
敦之・仁之「はァ?」
きょとん顔の慶之と壽生。和之、顔を
出す。黙って座っている将之と信之。
真之「(真剣に)僕、ちゃんと言ったからね。
ここにいる
和之、掌を口にあて、肩を震わせて笑
いを堪えている。
㊻ 同・境内
――やや仰角で。
本殿下手側。立派な藤の木(開花前)。
真之の声「二度と、僕に、ちゅう、しないで
ッ!」
慶之の声「あー。心当たりのある者は、以後、
改める様に」
和之の大爆笑。
㊼ タイトル画面
T『その五 母と次男』
──────────────────────
㊽ 藤原家・一階台所(夜)
シンクに向かって湯呑みを洗っている
潮。
和之の声「何、この酒」
潮 「(シンクに向いたまま)ナオがね、お
風呂上がったら飲むんだって」
和之の声「(笑って)あいつ笊だよな。うち
じゃァ、父さんとあいつだけ笊」
SE、一升瓶の栓が開く音。
潮 「(笑って)それはね、潰れたトコ見て
ないからよ」
と、水道を止めて、
潮 「(笑顔で振り返って)あ」
テーブルについている和之。寝間着浴
衣姿。コップ酒を飲んでいる。テーブ
ル上に一升瓶。
和之「(不機嫌に)あ?」
潮のM「しまったッ!」
画面に『ドラゴンクエスト』のコマン
ド。
T『かずゆきが あらわれた!』
T『たたかう にげる ぼうぎょ ど
うぐ』
和之「(不機嫌に)あ? 何? その『あ』
は、もしや敦之の『あ』? 何? 俺と敦
之、間違えた?」
▶印が『たたかう』から『どうぐ』に
動いて、『ぼうぎょ』に戻って止まる。
潮 「(語尾上ずって)あァ~ァ? (ごま
かして)あ、和之、お風呂入ってると思っ
て」
和之「今、入ってンのはナオ。しかも自分で
(と、一升瓶の首を持って)ナオが風呂上
がりに飲むって言ったよな」
潮 「(語尾下がって)あァ~」
和之の上に、T『次男 和之』。
T『かずゆきの こうげき! うしお
は 100ポイントのダメージを う
けた!』
和之「何? 俺と敦之、間違う? どうして
──────────────────────
? やっぱ一番最初の子供だから、長男は
特別? 長男とその
和之、背もたれに腕をかけて、
和之「うち『
のはナオだもンなァ(と、乾いた笑い)」
T『
相続すること)』
シンクを背にした潮。青褪めて、
潮のM「めんどくさくなってきた!」
画面に『ドラゴンクエスト』のコマン
ド。
T『たたかう にげる ぼうぎょ ど
うぐ』
▶印、『にげる』。
和之「(はたと)いや、待てよ」
シンクを背にしたまま、ガラス障子
(廊下)の方向へ一歩踏み出している
潮。ビクッと止まる。
──やや俯瞰で。
和之の持っているコップ。中に酒。
和之の声「父さんとナオは笊。相続の条件が
笊? いや、じーちゃんは笊じゃねえ」
× × ×
コップ酒を空ける和之(横顔)。その奥、
慎重に横歩きしている潮。牛の歩み。
和之、コップに一升瓶から酒を注ぎ乍
ら、
和之「そりゃ結婚してるから、避妊しなくて
いいんだぜ。別に。でもよ」
──やや仰角で。
和之、ぐーっとコップ酒を飲んで、
和之「『家族計画』って言葉、ガン無視かッ
!」
と、勢いよくテーブルにコップを置く。
ギラッと光る眼鏡のレンズ。
潮のM「お前はそれ以上、飲むな!」
× × ×
和之「(潮に)俺の事、めんどくさいと思っ
てる?」
ドキッとして立ち止まる潮。フルフル
──────────────────────
と首を振る。貼りついた笑顔。
画面に『ドラゴンクエスト』のコマン
ド。
T『たたかう にげる ぼうぎょ ど
うぐ』
▶印、『にげる』。
和之「そう(と、コップ酒を飲む)」
和之、コップに一升瓶から酒を注ぎ乍
ら、
和之「第一よォ、自分、コ◯ド◯ムの会社に
勤めてるくせに、避妊しないってのはどー
ゆー
だらけだろーがよ」
セリフの◯印に自主規制音。
和之「(潮に)あ、俺、ちゃんと避妊してる
から」
ビクッと立ち止まる潮。コクコクと頷
き返す。貼りついた笑顔。
画面に『ドラゴンクエスト』のコマン
ド。
T『たたかう にげる ぼうぎょ ど
うぐ』
▶印、『にげる』。
コップ酒を飲んでいる和之。
和之「なかなかいいよな。父さんの会社の製
品」
和之、更に勢いよくテーブルにコップ
を置いて、
和之「だ! か! ら! 自分でも使えっつ
ーのッ!」
和之の後ろに潮。そのすぐ傍にガラス
障子。潮、青褪めて、
潮のM「避妊したから敦之とアンタと仁之は
三年あいて、避妊しなかったから、仁之と
信之は
なかったら、それこそ全員
潮の手前、コップ酒を飲んでいる和之。
そっと一歩を踏み出す潮の足元。
和之(手)、ぐっと潮の手首を掴む。
潮と和之、互いを見ないで、
──────────────────────
画面に『ドラゴンクエスト』のコマン
ド。大きく『にげる』だけ。
▶印、T『にげる』。
和之「(真顔で)どこへ行く」
潮 「(真顔で)仁之が飲んでるのを下げに」
和之「(真顔で)俺が行く」
潮 「(ほっとして)そう! ありがと!」
和之「その前に」
と、テーブルに眼鏡を置く和之の手。
ぐいっと潮を引っ張る和之(腕)。
潮(後ろ姿)の眼前に和之。酔っぱら
って艶のある瞳。
和之「珍しく邪魔者が二人もいない。今はゆ
っくり、二人だけの時間を楽しもう」
将之と信之の挿入映像(吹き出し型)
がC.I。二人に矢印、
T『邪魔者』、更に、
T『只今、境内の夜回り中』
和之の膝の上に潮。和之、潮に覆い被
さって抱き締めている。酔っぱらって
色っぽい。その鼻先に潮の顔。
和之「なぜ俺で打ち止めなかったのか。その
子細、
潮 「その件につきましては、お父さんと男
同士の話という事でよろしくッ!」
T『まわりこまれてしまった!』
ガラス障子の外(廊下)に真之。風呂
上がりで寝間着浴衣姿。中(台所)を
見ている。
㊾ 同・一階廊下(夜)
ガラス障子の外から台所を見ている真
之(後ろ姿)。見えている台所。和之
の膝の上に潮。
真之「え……と。間に合った? それとも和
之兄さん、投げ飛ばした方がいいのかな」
T『なおゆきが あらわれた! こち
らを じっとみている!』
真之に矢印、T『柔道有段者(黒帯)』。
潮 「(必死に真之に)正に、地獄で仏!」
──────────────────────
真之「いや、うち、神社だけど」
起き上がっている和之。小さく舌打ち
して、眼鏡をかける。
SE、カラカラと玄関の戸が開く音。
将之の声「ただいま」
信之の声「ただいま戻りました」
T『まさゆきが あらわれた! ただ
ゆきが あらわれた!』
画面、真っ黒になって、
T『かずゆきは にげだした!』
SE、『ドラゴンクエスト』の『にげる』
効果音。
50)タイトル画面
T『その六 三男と四男』
51)同・一階廊下(夜)
開け放たれた襖に手を添えて、中(座
敷C)を見ている信之。私服姿。
52)同・一階座敷C(夜)
消えている室内照明。右肩を下にして、
座布団を枕に眠っている仁之。寝間着
浴衣姿。前庭側に頭。傍に晩酌の盆。
月光に照らされて、大変色っぽい。
仁之の枕元に膝をつく信之。
信之、晩酌の盆を下げようとする。と、
ふと気づく信之。
仁之、薄っすらと目を開けて、(信之
を)見上げている。酔っぱらって艶の
ある瞳。が、ゆっくりと見開いていく。
徐々に正気を取り戻し乍ら、驚愕して
いく目。
53)同・一階脱衣所(夜)
浴室から出る真之。風呂上がりで気持
ちよさそうな笑顔。
洗面台で顔を洗っている仁之。真之
(後ろ姿)、仁之に驚いて、
真之「(バスタオルを胸に抱いて)わァッ!」
──────────────────────
仁之「あ?」
と、真之を見る。正気の目。
真之「あれ?
ったっけ?」
仁之、真之のバスタオルを奪って、
仁之「飲んでたよ」
真之「ちょっと!」
仁之、バスタオルで顔を拭き乍ら、
仁之「何か、こう、スッゲー恐ろしいモン見
た」
真之、仁之からバスタオルを引っ張っ
て、
真之「ソレ、ただの飲み過ぎでしょ。もー、
僕が使う前にびしょびしょにしないで!」
二人の後ろにイメージBG、仰角で。晩
酌の盆を手に見下ろしている信之。影
になっている片方の目元、瞳のある場
所から鋭い光を放っている。一方の見
えている目は、恐ろしく冷たい視線。
信之の後ろに大きな般若の面のイメー
ジとタイトル、T『寝るなら自分の部
屋で寝てくださいね』。
54)タイトル画面
T『その七 藤原家』
55)円山公園(夜)
ライトアップされた見事なしだれ桜
(満開)。手前に篝火。夜空に月。
聞こえてくる上方
歌声は潮。
♪春は花
56)高台寺・波心庭(夜)
方丈前庭。ライトアップされた美しい
しだれ桜(満開)。その奥に見えてい
る勅使門。
♪いざ見にごんせ
57)清水寺・境内(夜)
──────────────────────
満開の桜に囲まれた『清水の舞台』。
ライトアップされた桜の上に本堂が建
っている様に見える。
♪東山
58)藤之宮神社・境内(夜)
──やや仰角で。
本殿前。点いている常夜灯。
♪色香あらそう
59)藤原家・一階座敷A(夜)
♪夜桜や
消えている室内照明。下を向いて歌っ
ている潮。月光に照らされた優しい顔。
寝間着浴衣姿、肩に男物(信之)の半
纏。『京の四季』を歌っている。
60)同・二階和之と仁之部屋(夜)
♪うかれ うかれて
消えている室内照明。窓辺に座ってい
る敦之と肘をかけている和之。共に、
寝間着浴衣姿。月を見て、静かに差し
合っている。
♪
61)同・一階座敷A(夜)
消えている室内照明。崩した潮の膝を
枕に眠っている真之。寝間着浴衣姿。
肩には女物(潮)の半纏がかけられて
いる。そっと真之の頭を撫でる潮の手。
♪二本ざしでも やわらこう
真之を見ていた潮。優しい視線のまま、
ゆっくり見上げていく。と、
夜空に月。座敷Aに母子三人(後ろ姿)。
潮の傍に信之。寝間着浴衣姿で正座し
ている。三人分の晩酌の盆。
62)同・一階座敷C(夜)
♪祇園豆腐の 二軒茶屋……
消えている室内照明。前庭を頭に向け
──────────────────────
て、うつ伏せの将之。脇に二つ折りの
座布団。寝間着浴衣姿。
潮の『京の四季』が聞こえている。が、
それをかき消す二人分の大いびき。
将之の背中を枕にして、気持ちよくい
びきをかいている仁之。浴衣寝間着姿。
仁之の腹を枕にして、気持ちよくいび
きをかいている慶之。寝間着浴衣姿。
仁之と慶之、共に仰向け。
夜空に月。座敷Cに父子三代。三人分
の晩酌の盆。
T『親子三代 春のよひ
す 高いびき』
T『藤原将之』
将之のM「親子三代 春のよい(宵・酔い)
仁之、前庭側に寝返りをうつ。と、仁
之の腹から頭が落ちる慶之。ふと仁之
を見る将之。ふっと笑う。
♪よいよい よいよい よいやさ……
画面右下に、T『つづく』。
63)用語解説画面
藤之宮神社境内。正面に拝殿。下手一
番手前に神職姿の慶之。
慶之の上に、T『
藤之宮神社 宮司』。
慶之「(にこにこして)さて、『弥栄!』第
三回はいかがじゃったかの。今回紹介する
専門用語は、
イメージBG、用語解説画面になって、
ルビつき縦書きで大きく、
T『
『
T『神社で、
職』
T『大辞泉(小学館)より抜粋』
慶之、セリフに合わせて指示棒でTを
示し乍ら、
慶之「禰宜とは、神社で宮司、ワシの事じゃ。
──────────────────────
や、権宮司、うちにはおらんがな。を補佐
して、現場の取りまとめを行なう。うちで
は壽生さんの事じゃ。壽生さん」
壽生「はい」
上手からFr.inする壽生。神職姿。遠慮
深く笑っている。壽生の上に、T『山
本
慶之「折角じゃから、壽生さんから説明して
はどうじゃ」
壽生「(慶之に)え? は、はい。では。
(前を向いて)前回、宮司は神社の代表取
締役、社長にあたると説明しましたが、私、
禰宜は役員や中間管理職にあたります」
イメージBG、実際の神社・禰宜の写真
(数点)になって、
壽生「神社で行なわれる年中行事では、宮司
が先頭に立って全体を引っ張っていくのに
対して、私禰宜は、
くんと真之くんですね。を、指揮して現場
を運営しています。(慶之に)指揮、偉そ
うですね(と、苦笑する)」
慶之「何を言ゆゥておる。禰宜は祭祀だけで
はなく、社務も司っておるからの。事実上、
神社のナンバー2じゃ」
壽生「いや、そんな、ナンバー2だなんて」
イメージBG、用語解説画面になって、
T『
『禰宜』のTより小さなポイントで、
T『神社に奉仕する神職の総称。『
ぐ』が名詞化したもので、神意を慰
めるという意味。神を祭り、神に
ぐことをつかさどる職業』
T『日本大百科全書(小学館)より抜
粋』
慶之、指示棒でTを示し乍ら、
慶之「また『禰宜』という言葉は古く、『
ぐ』が名詞化したもので、昔は我々神職の
総称でもあった。この『慰める』じゃがな、
『神様の心を
だく』という意味じゃ」
──────────────────────
イメージBG、実際の神前神楽の写真
(数点)になって、
慶之「解り易いのが、御神楽じゃな。神様に
元気になっていただく。いただいた恵みに
感謝して、また御神楽を行なう。この神様
と我々の『循環する共栄』という考え方が、
この日本の国風なのじゃ」
再び藤之宮神社境内。慶之の後ろに並
んでいる壽生、仁之、真之。皆、神職
姿。仁之、腕組みをしている。
慶之「ところで、前回『神主』の話をしたが、
関東では慣習として神職を『神主さん』と
呼ぶ方が多いのじゃが、こちら関西では、
我々を『禰宜さま』と呼ぶ方もおられる。
この場合はワシも『禰宜さま』で」
慶之の上に、T『
壽生の上に、T『
慶之「(仁之と真之を指して)こっちも『禰
宜さま』じゃ」
仁之と真之の上に、T『
一番手前に大きくタイトル、
T『関西では、全員『
慶之「『禰宜』という言葉が、古くから生活
の中にあったという事がよく解るの。さて
次回は(仁之と真之を指して)こっちの二
人、『
また。(元気よく)
と、手を上げる。壽生、仁之、真之、
同時に手を上げて、
壽生・仁之・真之「(元気よく)
にこやかに手を振っている慶之、壽生、
仁之、真之。
慶之「ところで真之よ」
真之「なに?」
慶之「お前が酔いどれた話が全部無くなって
おったが、どうなっておる」
真之「(苦笑して)僕は無くなってよかった
ンだけど……」
仁之「(渋い顔で)今回あれで、
いいっぱいなンだよ」
──────────────────────
画面右下に、T『次回は『
第三回『祈年祭、そして酒(連作)』終
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