科学技術のある異世界に転生したら、美人学者とほのぼの勝ち組スローライフをすることになったんだが
「すまん、儂の手違いでまだ死なないはずのお主が死んでしまったようじゃ。お詫びといってはなんじゃが、別の世界に転生する権利を与えてやろう」
ある日、俺―ハルルという―は獣人の子供を助けようとして身代わりに馬車に轢かれてしまった。すると、気づいたら一面真っ白な世界にいて、古い言葉を話す幼女にこんなことを言われていた。
これはもしかして……噂に聞く異世界転生というやつなのでは?
「それじゃ足りぬか?ならおまけにチート能力もつけてやろう。言語の理解、移動先の世界で最高レベルの知識、ついでに並外れた身体能力でどうじゃ?」
どうやらそのようだ。今までいたクソみたいな世界に未練なんてないし、これからは異世界で第二の転生スローライフを送ってみよう!
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異世界で僕は、大学という研究所兼学校で研究員をしている若い女性と出会い、仲良くなった。
「今研究しているここの数式なのだけど…この部分の計算が合わないのよね。どういうことかしら…」
今日も研究室に来てみると、彼女はなにやら一人言をつぶやいていた。
「どういう数式なんだ?見せてほしい」
「あら、ハルル君来てたの?これは最新の研究だし、あなたには分からないわよ」
そう言っている彼女のパソコン(こちらでいう水晶のような、ものを写す装置だ)を見ると、その数式の解法がすぐ頭に浮かんできた。神様からチートを貰ったおかげだ。僕は近くにあった紙にさっと必要な式を書いた。
「うーん、これをここに代入すればいいんじゃないか?」
彼女はしばしそれを見て、だんだんと顔に驚きが浮かんでいった。
「本当だ…!これはすごい発見だわ!ハルル君どうやってこれを?」
しまった。僕はあくまでも異世界で平和に生きることが目的で、あまり目立ちたいわけではない。このことを周囲に伝えられては困る。
「…いや、当てずっぽうだよ。運がよかっただけだ」
その場はそう言ってごまかしておいた。
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ある日、彼女が僕の部屋に駆け込んできた。この部屋は彼女の家に空間増大魔法で作ったものだ。元の世界では一般的なこれも、彼女はひどく驚いていたな。
「ハルル君!これって君じゃない?」
そう言って彼女が見せてきたのは、パソコンの中の情報を交換するページだ。それを見てみると動画が載せられていた。それは、男が落としてしまった荷物を空中に止めて、手元に引き戻す動画だった。
しまった。このまえ手を滑らして、つい魔法を使ってしまったんだ。
そのページの会話では捏造だという意見もあったが、ほとんどの人はこいつは誰だ?魔法使いか?とコメントをしていた。
うーん、あまり目立ちたくはないんだが…
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「はぁ…」
最新型の水晶を机に置いて、僕はため息をついた。
僕は今、魔力界内に存在するデータベースである「ノベリストの近道」の中の小説を読んでいたところだ。ここは利用者が水晶を使って小説を投稿したり、それを読んだりすることができる。
しかし、最近の「ノベリストの近道」……通称「近道」はかなりレベルが下がってしまったな。ランキングで上位だった小説を読んでみたけれど、ありふれた設定とご都合主義の展開がてんこ盛りの作品だった。最近はこういった作品ばっかりだ。作者が何も考えてないからなのか、それとも読者がこれを求めているのか。
そもそも、なんでどの作品でもチートな能力が貰えるのだろうか。現実に逃げ場をなくした人たちが、こうだったらいいなという妄想を文にしているに違いない。さらに腹立たしいのは、どの作品でも同じような異世界に行くことだ。設定をいちいち書くのが面倒だから、みんなが知っている世界に転生したことにするのだろう。
まったく、これが人気だっていうんだから信じられない。
これなら、僕にだって書けるだろうな。
令和のショートショート 葉桜 @hazakura-0126
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