第44話
ローズマリーはさくらに会うまでに色々考えていた。指輪には遅効性の毒を仕込んでいた。ナタリーがさくらに張り付いていた為にそれを仕込むことはできなかった。
だがこんな事もあろうかとある人物にもらった呪具を手に入れていた。私以外の人物がそれに触れることで成立する呪具……。
まんまとさくらはその呪具に使われたハンカチに触れた。あとはさくらが一人になるときその術式を開放すればいい。カイザーがいる時に起動しないよう必ず周りに人がいないことを条件としてあった……。
呪具にかかった魔法は転移魔法だった……。勿論そんな高度な魔法具をローズは作れるはずもない。
だが、ある時自室に突如として現れた魔術師がそれを渡してきたのだった……。
シルバーの髪をした美青年だった。どうやって自分のもとに来たのかはわからなかったが、呪具でさくらを何処かに飛ばし男たちの慰みものにすればいい…と悪魔の囁きをされそれを手渡された。
何故そいつがさくらを知っているかなどどうでもよく、微々たるものだった。
平民のさくらを抹殺したところで、何ともないだろうとローズマリーは軽く考えていた。今までどれだけ言い寄る女を苛め遠ざけてもカイザーはローズマリーに興味を示さなかったからだ。
カイザーの執務室の前まで来ると小さく扉を叩いた。
「ローズマリーでございます」
「何用だ?」
「カイザー様、お慰めに参りました。部屋へいれてくださりませんか?」
「入れ」
低い声が中から響いた。
ドアを開けて入るとそこにはナタリーがいた。
ほんの少し眉根を寄せたがすぐに笑顔に戻りカイザーに近づいた。
「あら? さくら様の侍女ではございませんこと? 先程はどうも」
ナタリーはカイザーに向き直り頭を下げると、ローズマリーの方に近づいてきて礼をした。
「先程はあまりお構いもせず申し訳ありませんでした。私はこれで失礼致します」
そう言うと別の席に座っていた宰相にも軽く礼をしてナタリーは部屋を出ていった。
「さくらのもとに行ったそうだな」
カイザーは抑揚のない冷たい声で話しかけてきた。
「えぇ……カイザーさまがお気に入りにしているとお噂を耳にし、わたくしも仲良くなりたく思いまして」
「そうか……ローズマリー。さくらに手をだすな。出した時がお前の最後だと思え」
「なっ……何かするとはどうゆうことですの? 私をお疑いで?」
「何もしていないなら、これからもしない事だ。それほどあいつは俺にとって大切なものだ」
ローズマリーの扇子を握る手に力がこもり小さく震えた。
ドロドロした嫉妬のマグマが胸の中に醜く流れ出していた。
「側妃になさるつもりですの?」
「……いや─────」
言い淀むカイザーの口にしたその言葉に雷が打たれたように全身が硬直した。カイザーが言ってた言葉の最後の方は聞き取れなかった。それは……ローズマリーの想像したことより信じられない言葉だった。
ローズマリーは踵を返し挨拶もせず執務室からはしってでた。
───ゆるさない……ゆるさない……殺してやる……わたくしの唯一を奪う憎い女…あの女が消えたあとにわたくしがカイザー様の手にかかったとしても本望よ……絶対に消してやる……。
激しい憎悪にローズマリーは包まれていた。
異世界転生 堅物騎士は妻の虜になる くたくたうさぎ @kutakutausagi
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