第43話
さくらは数日夜に起き窓を眺める日々が続いた。
どうやらカインは皆寝静まった夜中に現れていることがわかった。けどどうしたら連絡出来るか分からなかった。窓を叩いたり光をだしてみたけど結局どれもこれも駄目だった。
毎日来てくれるカインに逢いたい気持ちは徐々に積もって行った。
王の私室に籠もるようになって2週間くらいがたったころだった。
ナタリーが部屋の前で言い争いをしているような声が聞こえた。
「!!?───ごときがっ……わたくしは……っ……!」結構大きな声で騒いでいるので私室のドアを開いてしまった。
「さくら様! 何もございません、お戻りください」
「あら? ご機嫌よう。わたくしなにも致しませんわ。こちらに籠もりきりと伺いましたので、暇をしてらっしゃるかもと思いましてお茶にお誘いしようかと思いまして」
ゾクリとする妖艶な笑みを浮かべるのはそう、ローズマリーだった。
紫の扇子で口元を隠し目だけこちらに向けていた。
「ローズマリー様、勝手に連れ出していいとゆう陛下の許可は降りておりません」
「あら……私連れ出すなんて言ってませんわ。こちらでお茶をしましょう、さくら様だめかしら?」
「えっ……と。構いませんよ。どうぞ」
ナタリーをちらりと見たが砂を噛んだような表情だが
拒否はしなかった。
まさか王の私室でなにかするわけもないだろう…とおもったからだ。
「そこの! お茶とお菓子を用意しなさい」
ローズマリーがナタリーに指示を出した。
ナタリーは頭を下げお茶の準備を他のものに指示する。
ローズマリーは眉をひそめ
「あら、あなた……席をはずしなさい」
「ローズマリー様。さくら様の元はだれであっても離れるな。と指示を受けております。誰であっても…でございます」
「ふん……まぁいいわ。あちらに座ってよろしくて?」
さくらの前をと優雅に通り過ぎ上品に椅子に腰掛けた。
その姿をさくらは見て感嘆してしまった。
昔本で読んだお姫様そのもの。上品で綺麗で仕草は一流。私にはとても無理。
「さくら様もお座りになって?」
「あっ……はい!ありがとうございます」
そう声かけられさくらは慌てて座った。
そんな姿を目を細めてローズマリーは観察していた。なに?貴族令嬢とゆうわけではなさそうね……平民か何かよね。こんなのと同じ空間でお茶をしなければいけないなんて苦痛でしかないわね。
まだ幼さをどこか残した容貌。確かに醜いわけではないですが、とりわけ美女と言われたら私の圧勝ですわね。カイザー様こんなのの何処がよろしいのかしら。
毎晩カイザーと褥を共にしているかと思うと嫉妬でどうにかなりそうだわ。
実際はさくらの寝室にカイザーは一切近づかない清い関係なのだがローズマリーはそれを知らない。
「さくら様……?お伺いしてよろしくて?」
「あっ……へぃ」
噛みました……へぃって。緊張しすぎで口が上手く回らなかった。
「わたくしがカイザー様の妻とゆう事……ご存知ですわよね?貴方を可愛がっているとゆう事は耳にしていますわ。なので貴方も後妻になる可能性も御座いますわよね?是非仲良くして頂こうと思いまして」
そう言いながらカップに口をつけた。
「やっ! あの私がお妃さまなんて! 正妃なんてむりです!」
ローズマリーの眉がピクリと動いた。
正妃……ですって!?
さくらはすべての妻を正妃とおもっていた。前に側妃と説明されたことはスポンと頭から飛んでいたのだ。
ローズマリーの瞳に怒りの炎が静かに揺らめいた。
ゆるさない……
私を差し置いてこんな小娘が、正妃なんて…絶対にさせませんわ。
カップを握る手は小刻みに震えていた。
「あ……あら?カイザー様に打診でもされまして?」
そう尋ねられたさくらは顔を真っ赤にしてしまった。
言い淀むさくらを見つめカチャリ……とカップをソーサーに戻した。
その際わざとカップをさくらの方に倒してこぼしたため、
さくらのドレスにお茶がかかりすこしだが濡れてしまった。
「あっ……まぁすみません。さっこれでお拭きになって?」
さっとハンカチを取り出しさくらに手渡した。
ナタリーも急いで拭くものを持って近づいてきた。
「大丈夫です!すみません……ありがとうございます」
さくらはローズマリーに頭を下げた。
「ドレスを着替えなければいけませんわね。わたくしお暇させて頂きますわ。また呼んでいただけませんこと?」
すっと優雅に立ち上がり部屋をでる前にさくらに話しかけた。
「はい! ぜひ、いらしてください」
桜がそう答えるとローズマリーは部屋を出ていった。
出ていく際悪い笑みをこぼしていたが背を向けられていた為にさくらもナタリーもそれを知ることはできなかった。
ナタリーは目が皿になる程にローズマリーの行動を瞬きもせず注視していた……
───ローズマリーさまはわざと、お茶をこぼした?……なぜ?
その後の行動にも不審な点はなかった……ようにおもえる。
イタズラ?嫌がらせ?……それだけ……なのか。胸に言いようの無い不安感が漂っていた。
どちらにしよ王にこの事は報告しないといけない。
ナタリーは他の侍女にさくらの着替えを頼み王のもとにむかった。
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