「矮小呪い…」

低迷アクション

第1話



「まじない?いや、呪いにも、大きい、小さいはあるんだな」


友人の“G”が整った顔を歪め、そんな事を言った。自分がホラー好きとは

伝えていたが、答えづらい。だが、そもそも、こちらの返事は期待していなさそうだ。


話のキッカケ作りを終えたと言った感じで、Gは言葉を続ける。


彼は二つの特技を持っている。それは“女癖が悪い”と“遅刻”だ。

前者は、所詮、他人事…友人達も、交友関係にヒビが入らない程度の認識で理解している。存外に何股をかけても、上手に清算していると言う噂も聞いている。


だが、後者は死活問題、一回、何処かの病院に行けと言いたいくらいの頻度で遅刻する。早くて10分、ヒドイ時は数時間と言う有り様…プライベートは当然…彼の場合は仕事でもだ。


本人に言わせると、就寝時間は関係ないらしい。一度、布団なり、ソファに寝ころべば、必ずと言っていいほど、起きれない。全く駄目だと言う事だ。


勿論、Gも対策はしている。目覚まし時計3個に、スマホのアラーム機能、四態勢で

臨んでいた。


しかし、最近では、この手段も通じなくなった。起きてみれば、起床時間より30分も遅れ、会社には当然の遅刻…そろそろ上司の評価どころか、会社自体をクビになると言う段階になって、ようやく“異変”に気付いた。


「アラームも、時計も全部作動してる。スマホに履歴もあるし、時計も止まっている。夢遊病を疑ったよ。マジで…」


だから、ビデオカメラを置いた。自分の様子を映すために…その日、当然のように

遅刻した彼は、家に戻ると、すぐにカメラを再生した。


「アラームは全部、出勤1時間前にセットしているから、辺りは薄暗いし、4つの

目覚ましも、わざと距離空けて、止めにくくしてあるんだ。そこをよ。動き回ってるんだよ。俺じゃない。真っ黒な人影みたいのが、何処からともなく急に出てきて…


ソイツは寝てる俺をまたいで、鳴ってる時計とスマホを順に止めていった。そんで、最後はカメラの前に来てな。カメラは初めてだったんだな。画面前で動き回った後、ちゃんと停止ボタンも押していったよ。


暗い中で気色わりー顔が何度もアップになってよ。ああ、嫌だ。嫌だ。」


その顔には見覚えがあった。数日後、最近、別れた女に連絡すると、アッサリ認めたと言う。


「何かネットにあったらしい。俺の寝坊癖も知ってたしな。可愛い声で言ってくれたよ


“別に、困らなかったでしょ?”ってさ。


確かに連絡した、その日から、目覚ましもキチンと鳴るようになったよ。でもな」


Gは会社をクビになった…(終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「矮小呪い…」 低迷アクション @0516001a

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る