元社畜はブラックな勇者よりホワイトな魔王様になります

時風 カナメ

第1話 仕事のしすぎた男それ俺

カチッと時計が部屋中を鳴り響くのが聞こえたと同時に外が騒がしくなった。

なぜなら今日は大晦日。ちょうど12時になった瞬間だ。

外を見なくてもわかるぐらい、外から若い人たちが近所迷惑を知らないのかと言えるほど騒がしかった。


―ちっ。うっせぇな。


イライラしていたがそんなこと俺にはそんなのどうでもいいことなので俺は一人社内でキーボードをひたすら叩いていた。



何故俺が仕事をしているかって、それは俺が今の仕事を好きだからなんてことではない。

俺は仕事が嫌いだ。


じゃあ、なんで大晦日の日まで仕事をしているのかって?


そんなの簡単。この会社が、

ブラックだからだ。

                ※

俺、孝嶋礼二の人生は壮大なものである。

あれは、今からだいたい7年、8年前になるのかな。

その当時は大学の卒業論文、通称卒論を書いていた。

こう見えても俺は、GMARCH以上の大学を現役で留年せずに卒業できているのだ。

しかも、就職先も決まっている。しかも大手ゲーム会社ZOON。

ここまでくればもう勝ち組とか言ってきそうだがそれは違う。

確かにここまでくればもう人生の半分はいいといっても過言ではない。俺もそう思っていたからだ。

しかし、ここからが俺の人生が崩壊していくのだ。

まず、ZOONに就職したが1年で会社が倒産した。

何故倒産したかと言うと産業スパイ。

産業スパイとは、違う会社の情報を自分たちの会社のものにすることである。

その騒動があってか一気にZOONの株が暴落、社員たちのリストラ、記者会見の嵐

周りからの誹謗中傷、そして社長解任。

社長が変わったことによりさらに周りからの批判を買って会社側も社員もたいきれなくなり、結果倒産。

当時そのことを新聞で見た瞬間、頭の中が真っ白になり考えるのをやめた。そして新聞を手からスルッと抜け落ちた感じで床に落ちた。

それから、俺はこの中小企業に雇われたのはいいがかなりのブラック企業だった。

まず、朝の通勤は7時半、そして朝礼、そして仕事始動と行く前にいったんゲームをするのがこの会社の掟だ。

ゲームっていう響きじゃちょっと緩い感じがするので言い換えると、洗脳。

どんなゲームをしているか、ルールは単純。人を褒めるだけ。

何故洗脳かと言うと、人とは褒められるとやる気が出る生き物。それをうまく使ったのかのように社員たちを仕事しかさせないと洗脳させているのだ。

そんな洗脳ゲームを毎日のごとく朝されてそれが終わったら地獄の仕事の時間だ。

仕事の量はそれほど多くない。がそれは最初だけ。

後日会社に行くと、上司たちが仕事増やしてくる。それも1日中には終わらないほどの量になる。

流石に断ろうとしたが


「いやぁ~、君だったら行けると思うよ!大丈夫!問題ないよ!」


と言ってくるのだ。しかも顔は笑っているが目が笑ってない。てか、ハイライトすら

ない。


―こっちは問題大ありだっつの!


当然のごとく残業になる。

残業になるのはいいがその残業代がたったの3000円だけなのである。

そして残業が終わって家に帰ろうとしても、終電時間が過ぎてるため帰れない。

その場合、近場のネカフェに泊まる。

それが俺の長いようでなれたら短い一日だ。

                      ※

そして今に至る。

そしてそのブラック企業に就職して早7年。家に帰る暇もない。


てか、この一か月家に帰ってねぇなぁ。


とか思ってる俺が異常に見えたらこの会社に入るのはおすすめしない。

これは普通のことだ。

風呂とかはちゃんと近場のネカフェでシャワーを借りて体を洗っている。しかも自費。


そんな俺も、もう29歳。

童貞なうえ、彼女さえいない。

そして、もうすぐ30歳。


「いやだぁああああああああああああ!」


誰もいない空間で大声を出し机の上のにある何十本あるエナジードリンク缶などを持って時計に向けて全力投球し髪をくしゃくしゃした。


スピードガンがあれば多分チャップマンより早い投球ができたのではと心の片隅に置いておいた。


「このまま独り身は嫌だぁああああああああああああああああああああああああ!!俺は結婚して子供を三人ぐらい作りたいと思っていたのに!てか、子供のころ簡単に結婚できるって親に聞いたけど簡単どころかけっこんすらできなねぇじゃねぇかぁあああああああああああああ!!」


更に髪をくしゃくしゃにし、もはや元の髪の原型を残していなかった。

元々はストレートパーマできれいな髪だったが、今じゃ何で例えても汚いものにしかならないほどの髪形になった。


そして少し落ち着いたのか再び座った。

仕事に戻ろうとしたけど手を止めた。


―俺がどれだけ頑張ったところで、俺のためにはよくならないし、逆に俺が不幸になっている。


と思っているともう仕事する気がなくなったので帰ろうとしてバックを取って会社を出ようとした。


「あれぇ?」


その瞬間、急に目眩が不意打ちされたような感じできた。

そして、俺は地面に倒れこんだ。


―あれぇ、どうしたんだ俺。なんで急に目眩がした…


とその原因と言えるものが転がってきた。

その原因は、エナジードリンクの飲みすぎ。つまりカフェイン中毒によるものだとわかった。


―はは。俺って本当に運がないんだな。


気が付けば俺の体は完全に動かなくなっていた。

ついには、走馬灯まで見えるような見えないような境界線まで来ていた。


「はぁ。俺って死ぬのかなぁ~。でもそっちの方が楽そうでよさそうだな。

だけど…」


と次の一言が俺にとって最後の言葉だった。


「ホワイトな職場でもう一度働きたかったなぁ~」


と言い目を閉じた。








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