10、俺にとっては歪んだ世界
飯島梨花。
彼女は本当に天才過ぎた。
だから.....他人との接触が分からず。
しかも天才の事で蔑視され仲良くなる事が出来ず。
彼女は.....心を閉じた。
そんな時に俺は手を差し伸べた。
それから.....俺と飯島は仲良くなったのだ。
それで.....飯島は俺しか慕わなくなった。
俺はそれがマズイと逆に思っていて。
人を信じる心を見失っているのに、だ。
だが今日。
結構同じ境遇の芽衣子に心を初めて開いた。
先輩だが.....芽衣子に、だ。
俺は.....その姿を微笑ましく見ていた。
そして中休みの事。
芽衣子が俺に接してきた。
「良い子だね。.....傑。飯島さん」
「.....そうだろ。.....まあ本当は根っからは良い奴なんだよ。人との接し方が分からないだけで、だ」
「.....僕も人と接するってのがよく分からないからね。まあ」
芽衣子は苦笑いを浮かべながら.....俺を見てくる。
俺は、まあな、と苦笑する。
それから.....俺は、でもお前が告白の様に言ってくれたお陰で.....何もかもが変わった気がする。有難うな、と言った。
そんな芽衣子は、うん、と頷いてから俺を見る。
「仲良くしてやってくれ」
「.....だね。分かった」
「.....有難う」
「でも僕は傑はあげる気はないけど。いくら仲良くなってもね」
「.....そ、そうか」
傑は僕のお友達だから、とフンと鼻息を吐く。
俺はその言葉に、やれやれ、と思いながら.....芽衣子を見る。
しかし.....芽衣子も成長したよな。
そう思える。
「芽衣子。お前も本当に変わったよな」
「.....僕は傑のお陰で変わっただけだよ。何も変わってない」
「.....そうか。俺と友人になって変わったと思ったが?」
「ううん。何も。気のせいだと思う」
俺は、そうか、と返事しながら.....窓から外を見る。
窓が空いているのだ。
そして.....少しだけ息を吸い込んだ。
良い空気だな、と思う。
それから良い感じだ、と思う。
「でもね。傑。.....僕は貴方の言葉を吸収して.....成長したよ。それは少しは言えるかも。.....後は咲くだけだと思うから」
「.....知恵を吸収したって事だな」
「.....うん。これは全部、傑のお陰だよ。有難う」
「.....そうか」
俺は苦笑しながら芽衣子を見る。
芽衣子は赤面しながら俺を見てくる。
俺はその芽衣子に笑みを浮かべた。
すると芽衣子は、ねえ。傑、と言ってくる。
俺は?を浮かべて、何だ、と答える。
「僕.....鏡花の墓前に.....梨花を連れて行きたい」
「.....お前マジかそれ.....?」
「.....うん。紹介してあげたい」
「.....本当に変わったな。芽衣子」
「.....そうだね。こんな事を言うのはおかしいと思ってる」
でもね。
梨花の事は信頼しているから。
だから紹介したいの、と笑顔を見せる芽衣子。
俺はその姿に、有難うな芽衣子。梨花の事.....本当に、と笑みを浮かべた。
芽衣子は、ううん、と首を振る。
そして柔和になりながら俺を見てくる。
「僕は.....友達が大切。.....でも怖いけどね」
「.....お前らしいよ。それが。でもどんなに怖い事でも.....お前は立ち向かっていく。.....その心が俺は欲しかったな.....そうすれば多少はマシだったかもな」
「.....傑.....」
「でもまあ過ぎてしまったもんは仕方が無い。だから芽衣子。頼む」
「.....うん。任せて。僕なら.....きっと」
そして笑みを浮かべる芽衣子。
すると.....山吹が寄って来た。
何の話をしているの?、と、だ。
芽衣子は山吹を見ながら.....少しだけ苦手意識を持っていたが。
こう話した。
「.....お友達になって下さい」
「.....え?そんな事言わなくても私は芽衣子君とは友達だと思ってるよ?アハハ。変な芽衣子君」
「.....だそうだ。良かったな。芽衣子」
「.....ビックリ」
女子って良いよなそんな感じで。
直ぐに誰とも友達になれる。
俺は違った。
人を嫌ってしかも人からも嫌われた。
心に病を患ったから。
絶望だったから。
そう考えながら俺は恥じらっている芽衣子とニコニコしている山吹を見てから。
「チャイム鳴るぞ。お前ら」
と声を掛ける。
すると山吹と芽衣子は、あ。そうだね、とそそくさと椅子に戻って行った。
山吹と芽衣子は、じゃあね、と言う。
俺はそれに手を振り返しながら次の授業を受けた。
☆
多少はマシなのかもしれない。
何がって言えば.....そうだな。
今現在の状況、だ。
俺は.....吐き気を催してそのままトイレに駆け込んだ。
それから便器の水を見る。
「.....全くな。何も変わってないな俺は」
友情なんて下らない。
そして絶望は終わらない。
そう考えていた頃の自分が映し出されている。
目の前の水面に、だ。
俺は.....眉を顰めながら.....顔を上げる。
そこに芽衣子が居た。
心配げな顔で、だ。
「.....大丈夫?.....傑」
「おま!?何やってんだ!ここ男子.....あ。そうかお前.....」
「男子だからね。僕は」
「.....そうだったな。忘れていた」
そして俺の腰を摩ってくる芽衣子。
そんな芽衣子に、オイオイ。ゲロってるんだから汚いぞ、と声を掛けるが。
芽衣子は、そんな事ないもん、と口を尖らせる。
傑だから大丈夫、とも、だ。
「.....昔の事?」
「.....そうだな。下らない昔の事だ」
「.....お薬は?」
「.....精神薬なら飲んでない。もう3年ぐらい。この発作は3年ぶりだと思う」
「.....そうなんだね」
じゃあ.....一旦は何か飲もう、と優しげに声を掛けてくる芽衣子。
俺はその芽衣子に、そうだな、と言葉を発した。
それから.....精一杯の笑みを浮かべる。
そして.....芽衣子の頭を撫でた。
「.....有難うな。芽衣子」
「私は励ましているだけだから。子供じゃないし止めて」
「.....そんなお前が俺は好きだ」
「.....え.....え!!!!?」
「.....?.....何でそんなに赤面する」
真っ赤になる芽衣子。
それはさぞかし可愛い様な、だ。
何でこんなに真っ赤になるんだ、と思いつつ俺は目をパチクリする。
それから.....芽衣子を見る。
芽衣子はモジモジしながら真っ赤のまま、傑のアホ、と言った。
え?何で.....?
「.....もう良いから。傑。行こう。ドリンク買いに」
「.....???.....わ、分かった」
そして俺は便器の水を流しながら。
そのまま立ち上がって.....芽衣子に手を引かれたまま。
その場を後にする。
それから.....トイレを出る際にこう聞こえた気がした。
「私も傑が好き」
と、だ。
だけど、え?、と聞き返す暇が無かった。
そのまま連れて行かれたから、だ。
早足で勢い良く、である。
夢は花咲く。彩られる世界 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
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