第1話
「なあ、黒…前から僕言ってるじゃないか。僕たちの使命を忘れたのか?規則のこともだ。」
「ッ…忘れてなんかない。それでも、俺は耐えられないんだ。」
_____生きている者自ら命を捨てるという行為を。
確かに、兄が言っていることは正しい。死神の規則は三つしかないとても簡易なもの。
死神の仕事にも幾つか仕事が別れている。魂の回収や、過去に大罪を犯しているか否かなどの調査…その他沢山の使命が、一人ひとつだけ与えられている。ちなみに、俺の使命は自殺者の魂の回収だ。
兄は、この死神界の幹部。魂回収の指揮をしている。人当たりも良く誰からも信頼される様な理想の死神。俺の理想、だった。
俺は今から死神の三規則を破りに行く。本当は兄にも言わないつもりだったが、どうせ幹部だ。すぐに俺の行いに気づくだろう。
どんなに止められたとしても、許せないものは許せない。
魂…寿命は本人が最後まで消費仕切って欲しい。例え、どんなに辛く苦しい日々でも。人間いつかきっと、それに勝る物が返ってくる事を知っているから。人は、平等でなければいけない。これは自分のエゴなのだろうか。
「黒、僕に言ったら規則を破る事、僕にバレちゃうじゃないか。せめて、成し遂げた後に言うものじゃ、ないのか?」
「あ」
「あーまあ、無理か。黒正直ものだもんね?」
……ぁぁぁああああああああああ!?!!!
やっちまった、なに俺馬鹿正直に言ってるんだ。
よし、今日の事は忘れよう。
「え〜あ、あ、兄さん?今日の話は無かったことに…」
「黒」
先程まで自分をからかってた兄が、突然真剣な顔をして俺に言う。
「大丈夫、僕を信じて。この事は誰にも言わない。だからさ」
___自分が正しいと思う道進んでみなよ。
「……え?いいの、それって」
「あぁ、僕達は共犯さ。黒、お前の事応援する。幹部だし大きく動くと気づかれる危険もある。だから黒を見過ごす事しか出来ないが…。」
いや、それでいい。それでいいんだ。嬉しい、嬉しい、嬉しい!!俺を否定しないで、最後まで聞いて、ちゃんと受け入れてくれた。
「ありがとう、兄さん。俺やってみる。」
俺は一人じゃない。兄さんと一緒だ。それだけで、心強く何より安心した。
死ノ神黒野くん みなつ @UTxTU08
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