問⑩【サヨナラの時間】

 とうとうこの時が来てしまったわけだ。

 ボクはどこかでこの時を覚悟していたような気がする。


「わたしにはわたしの幸せがある。なにが幸せなのか? それを決めるのは関川君じゃなくてわたしなの」


 思えば彼女はいつも僕に二択を迫ってきた。

 たぶん、たぶんだけど……僕はそのたびに彼女の望む答えを返していたのだと思う。

 だから僕たちは別れることなく同じ道を歩いてこれた。


 ボクはずっとそう思っていた。彼女も同じ気持ちでいると思っていた。

 だが人生はそんな単純なものじゃないらしい。

 

「勘違いしないで欲しいんだけど、嫌いになったわけじゃないの。だから今しかないの……サヨナラするのは」


 彼女はそっと右手を差し出した。


「今までありがとう関川君、とっても楽しかった」


 そう言って、彼女は穏やかに微笑んだ。

 もう彼女の答えは出ているようだった。

 最後の最後まで理由も言わないままに。


 ボクは差し出された彼女の手を見つめる。


 その手を掴めばサヨナラだ。

 掴まなければ…… 


 それが彼女の問いかけた最後の二択だった。


 ※ここまで




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「どうしても…そっちに『イ』っちゃうの……?」

 と、強い決意のこもった彼女の瞳を見つめるボク。



「そう……もう『イ』かなきゃ『イケ』ないの…。

 関川君は…何も悪くない…。

 ううん…。私…関川君に…とても感謝してる…。

 関川君が居たから…。

 関川君が…『ヘタレ』だから…。

 そんな関川君と、『そこら辺の炉端ろばたのおじさん』で、

 いくらでも…『アレ』で『ソゲ』な『ヘブン』を見れる様になった…!


 そして…もう……。

 私には…『ヘブン』を超えた『パライソ』に…。

 旅立つ時が来てしまったの…!」

 と、さらに決意を込めた眼差しで継げる彼女…。



「そう…。そうか…。

 もう…。『イ』っちゃうんだね…『アッチ』に…?」

 と、最後の質問をするボクに。



「うん…。もう…戻って来れないって分かってる…。

 でも…私…『イク』よ…!

 『腐女子』を超えた…『貴腐人きふじん』の世界へ…!


 だから…これで最後なんだ…。

 最後だから…。

 『はにゃ~ん☆』で……。

 『きゃう~ん☆』な……『パライソ』に…。

 関川君で、最後に『イカ』せて欲しい…!


 むしろ……断られても…『イ』っちゃうよ…私…ッ‼」

 強い決意を秘めた眼差しをボクに向け、

 ボタボタと、三倍の赤い奴を鼻腔びこうからす彼女…。



 もう…。

 戻って来れない…。



 彼女は…『イ』ってしまったんだ…。

 『アゲ』で『ソゲ』な『貴腐人きふじん』の『パライソ』に…!



 最後の最後まで…彼女は自分を貫いた…。



 でもね…。

 うん…。


 流石のボクも…。

 もう……『ギブアップ』です…。

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