第二夜 クエスト発生


 村に到着すると今までブツブツ呟くだけだった生田とその彼女も車から降り、ようやく動き出した。


 何となく顔色も蒼白く、白目をむきながらヨダレを垂らしている気がするが、気のせいに違いないと思う。


 二人は、車から降りると今までのぎこちない動きが嘘のように夜の闇に包まれた廃村の中に駆け出した。


 そんなに早く探索したかったのだろうか  


と思いながらも、車の中から懐中電灯を取り出した。


 今はもう製造されていない、現代風の『ライト』ではなく、『懐中電灯』という言い方がふさわしい昭和感漂う相棒だ。


 この相棒と共に数多の心霊スポットを探索したものであるがなんだか様子がおかしい。


 何時もならジジジッと死にかけたブラウン管テレビのような音を出しながらも何とか薄暗く辺りを照らし出してくれるものだが、一切明かりが灯らないのだ。


 実家の倉庫から出してもう十何年も使っている懐中電灯であるし、寿命がくるのもしょうがないのかもしれない。


 今まで苦楽を共にしてきた相棒がもう使えなくなるのは、悲しいが仕方がないので、ウエストポーチに入れておくことにした。


 予備の懐中電灯を取り出し、走り去った二人を追いかけるべく、廃村へと足を踏み入れた。


 廃村は不気味な程に静かであった。


 月もどんよりとした雲に覆われ、月明かりすら満足に届かない。


 薄らと漂う霧は何だか濃くなってるような気がする。


 打ち捨てられた子どものおもちゃ、謎の言語で書かれた御札、中年位の男の生首…いやいやいや今見てはいけない物を見てしまった気がする。


 ゴシゴシッゴシゴシッ


 目を擦ったらいなくなってるかもしれない。


 ゴシゴシッゴシゴシッ…マダイルッ!!


 やはり勘違いではなかった。


 目の前には、眼を大きく開いた男の生首があった。


 『よくぞ来た来訪者』


 不思議と重く響く威厳のある声がその生首から発せられた。


 今まで数多の心霊スポットを巡ってきたが、こんなにはっきりと幽霊の姿を見たのは初めてである。


 趣味でよく見る呪いのビデオや心霊番組なんかでよく見る本当に写っているのかすら分からない心霊写真なんか目じゃないくらいはっきりと目の前に生首がある。


 生首の衝撃に付いて行けなかったがこの生首は、何やらこの五祠堂村に祀られる神の内の一柱であるらしく、村が廃村になったため、祀る者が居なくなり、他の祀られている神が荒御霊になり、困っているらしい。


 この地を安定させるためにも、神を和御霊に戻して欲しいとの事であった。


 返事をしようと口を開きかけると目の前の神を名乗る生首が


 『よいか忘れるでないぞ今宵の内に成し遂げねばならん』


 『成し遂げた暁には、貴様と共に来た者共を返そう』


 と話し、姿を透明にさせ、消えていった。


 どうやら謎のおつかいが始まったようである。


ピロリンッ



????からクエストが発生しました。


期間内にクエストを成功させて下さい。


達成条件

五祠堂村に祀られる神の鎮魂 五柱


期間

日が昇るまで



RPGでよく聞く軽快音が廃村に鳴り響いた。

 




 

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肝試ししてたらホラー風RPGになってしまったようだ @rupan

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