第一夜 いざ行かん!心霊スポットへ!!

 もともと心霊スポット巡りが趣味だった。


 休日や仕事終わりの深夜にドライブがてら廃墟やトンネル等の心霊スポットに行き、幽霊が出るかもしれないという雰囲気やスリルを味わってから帰る。


 一歩踏み出せば太陽の光や文明の利器によって無造作に生み出された光が消え、自身とその先を照らす頼りない明かりを携えて人の手の届かない領域に足を踏み出していく。


 日常では、決して味わえないスリルに俺は夢中になっていた。


 そんなある日、某県某市にある心霊スポットに行こうと誘ってきた今まで連絡を取っていなかった高校時代の友人が彼女と心霊スポットに行きたいからと心霊スポットに詳しい俺を心霊スポット巡りに誘ってきたのだった。


 一人で行くのが好きな俺は気のりがしなかったが、彼女と行きたいと独り身の俺を誘ってくる度胸に免じて、何人も行方不明になっていることで有名なとびきり危険な心霊スポットへ連れて行ってやることにした。(彼女の前でちびればいいと思う)




 土曜日になり、心霊スポットに行く当日になった。


 外見は、相変わらずパリピの友人生田とその彼女を車に乗せるが、二人ともなんだか様子が可笑しい。


 具体的に言うと顔色が蒼白く、生気のない顔で、頭を左右に揺らしており、まるで幽霊に取り憑かれでもしているようである。


 まあ体調が悪いのだろうと気にせず出発することにした。


 今回行くのは、某県某市にある五祠堂村(ごしどうむら)という村である。


 かなり山奥にある村で、今住んでいる浜知市(はまじりし)からは、車で三時間程かかる携帯の電波すら届かない場所だ。


 五祠堂村は、心霊スポットであり、怪談マニアや廃墟マニアなどの間で密かに伝わる廃村である。


 明治初期には、人口60名程の住む山間部にある小さな村であったが、突然村人全員が無惨に殺害されるという事件が起こったのだった。


 大人から子供まで老若男女問わず猟銃やナタで撃ち、切り、刺され、手、足、体、頭、心臓の五つに体を解体されるという悍ましい事件であった。


 その後、五祠堂村は廃村となり、今日に至るまで、住む者はおらず、一部の物好きが時折廃村に肝試しに行くくらいの場所であり、何人もの行方不明者を出している心霊スポットである。


 という話を何だか妙に顔色が蒼白くふらふらしている友人生田とその彼女に延々と話ながらドライブをすると、五祠堂村に着く頃にはブツブツと何事か呟く二人が出来上がったのだった。


 話が怖かったのだろうか、高校時代はどちらかと言えばパリピと言われる部類に属する生田すらまるでまるで幽霊のようである。


 車に乗ってから二人とも一切喋らないのも何だか可笑しいがまあ車に酔いでもしたのだろう。


 悩みも晴れて幾分か気分もスッキリすると、鬱蒼と生い茂った木々が途切れ、拓けた場所に出て来た。


 長距離のドライブともおさらばである。


 暗がりから何かが出て来そうな薄らと出ている霧やもう人が住むことはないであろうぼろぼろになった家屋が立ち並ぶ。


   五祠堂村だ


 ようやく今回の目的地である五祠堂村に到着したのであった。




 

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