目覚める将生
その日、将生はふと思った。
推理してみよう―― と。
将生が猫町3番地を訪れると、そこに琳の姿はなかった。
喜三郎も相変わらずおらず。
常連のおばちゃんたちは窓際の席を陣取り、猫町4番地の缶コーヒーを飲んでいる。
テーブルには空いたカップがあるので、二杯目を頼もうかというときに、琳がいなくなったのだろう。
おお。
どうしたことだ。
俺が推理している。
まるで、雨宮のように。
別に、雨宮がいないから――
何処に行ったのだろう?
いつ出ていったのだろう?
もう帰ってくるのかな? と推理しはじめた、というわけではない。
まあ、急に推理したくなってもおかしくはない。
俺は警察関係者だしな。
……監察医だが。
「琳ちゃんならいないよー。
ちょっと出かけるってー」
とおばちゃんたちが教えてくれる。
すぐにおばちゃんたちに礼を言って店を出た。
缶コーヒーを飲みたい気分じゃなかったからだ。
雨宮がいなかったからではない。
雨宮は何処に行ったんだろう?
あの感じではすぐに帰ってきそうではあったが。
買い出しだろうか?
さりげなくスーパーの前を通ってみたが、ガラスの向こうに琳の姿はないようだった。
今度はコミュニティーセンターの前を通ってみる。
さりげなく花壇を見るフリをして、中を窺い見ようとしたが、その前に広い駐車場兼前庭にいる連中と目が合った。
「なにしてんの? 宝生さん」
そう龍哉に言われる。
「……いや、お前たちこそ、なにしてるんだ、龍哉とその一派。
学校はどうした?」
「課外授業だよ、宝生さん」
「コミュニティセンターの見学ー」
と周囲にいたいつものメンツが言う。
そういえば、ホールの入り口に先生らしき人物がいた。
「……そういえば、お前たち、小学生だったな」
「なんだと思ってたの? 今まで」
と手前にいた子に言われる。
いや、龍哉以外の連中は充分小学生っぽいのだが。
こいつが率いているから、なんとなく……、と龍哉を見たとき、先頭の先生がこちらに気づいて、振り返る。
「ほら、お前たち、人に会ったら?」
と先生が声を張り上げる。
「お世話になりますっ。
お邪魔しますっ」
とみんなに頭を下げられた。
いや、俺はただの通りすがりなんだが……と思ったとき、龍哉がコミュニティセンターの建物を見ながら言った。
「ああ、そういえば、わかったよ。
喜三郎さんがここに通いつめて、あんまり猫町3番地に来ないわけ」
――まだコミュニティセンターに入ってもいないのに!?
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