それは異常事態ですっ
外に出た琳は水宗にトラックの後ろを見せてもらった。
トラックのあちこちに乱雑に物が置いてある。
「……凶器がたくさんありますね」
「造園の道具です……」
と水宗が琳に言う。
「この枝を切るハサミとか」
琳は隅に投げられていた大きなハサミを見た。
「となり町の殺人事件は絞殺だぞ」
一緒に覗いていた将生が横から言ってくる。
「じゃ、この殴り殺せそうな大きなトンカチとか」
「……絞殺ですよ、雨宮さん」
今度は刹那が微笑み言った。
「犯人が凶器を投げ入れたのかと思ったのに。
困りましたね。
絞められそうなものがないじゃないですか」
と琳が呟くと、
「確か細いロープ状の物だったぞ」
と死んだ人にだけ詳しい将生が教えてくれる。
「細いロープ状の物ですか。
いつもなら乗ってるんですけどね~」
みんなの期待に応えようとしてか、水宗はそう言うが。
いや、元からこのトラックにあるものが凶器だったら、やっぱりあなたが犯人ということになってしまいますよ、と琳は思っていた。
「おっかしいな~」
と後ろから中本の声がした。
「佐久間さん、全然捕まらないんですよ。
呼び出し音は鳴ってるんですけどね~」
スマホを耳に当て、小首を傾げる中本に琳が訊いた。
「……中本さん、佐久間さんって、いつから居ないんですか?」
「え、確か、総合体育館からみんなが引き上げたあと、ひとりが、やっぱりもう一回見てくるって戻っていったあとからですよ」
「中本さん、佐久間さんのスマホ。
今、何処にあるのか探してみてくれませんか?」
どうかしたんですか? と水宗が言ってくる。
「そういえば、今日、全然佐久間さん見てないんですよ」
と琳が言うと、なにっ? と将生が驚き、刹那も、えっ? という顔をした。
「佐久間が此処に来てないっ?」
「それは異常事態ですね」
「もしや、犯人に捕まって監禁されてるとかっ?」
「……その可能性が強いですね」
真剣に語り合う将生と刹那の会話を聞きながら、水宗が、
「普段、どんだけ此処に来てるんですか、佐久間さん……」
と呟いていた。
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